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コネタ649
 
「気」を映像化する〜「オーラ写真」体験レポート

オーラ写真なるものをご存知だろうか?

オーラというのは、人体の周りを覆っている「気」のようなものである。で、特殊なカメラを用いると、オーラの映像を写真に焼き付けることが可能だというのだ。

ぼくは「科学教」の信仰者なので(要するにUFO擁護派ではなく大槻教授派)、気やらオーラやら言われても、今までただ曖昧な作り笑いをするばかりだった。

しかし、実際に写真として見ることができるなら話は別である。コトによっては信じるかもしれない。ここはひとつ、どんなものなのか拝見させてもらおうじゃないか。

…てなわけでオーラ写真の撮影サービスをネットで調べてみたところ、大阪にて「フジ工業」さんがヒットした。さっそく連絡してみたら撮影OKとの返答。ようし、撮ってもらいますで!

オーラ写真は、果たしてぼくを納得させてくれるのか!?

(text by ステッグマイヤー名倉

これが撮影スタジオですか!?
オーラ写真の撮影スタジオに到着

大阪は近鉄・長瀬駅で下車。

あらかじめ入手していた地図を頼りに歩くこと数分、無事に「フジ工業」にたどりついたわけですが。

スタジオの外観はこんなのでした。まるっきり町工場ではないですか!?

唖然としていたら、オヤジさんがすぐに出迎えに来てくださった。口あんぐりになっていた表情をあわてて取り繕う。

ちなみにこのスタジオ、一階が金属成型の工場、二階がオーラ写真スタジオになっているそうで。

とりあえず二階の応接室に通され、取材スタートとなった。
 

2階の応接間にてオーラ写真家と歓談。
スタジオ室内で記念撮影。

 

なにやら仰々しい撮影機材ですが。
オーラ写真の撮影機器

まずは撮影機材を見せていただくことに。

一見すると単なるポラロイドカメラだが、外側のハコに秘密があるのだという。

  1. 両手から発せられる電磁波をセンサーでキャッチする。
  2. それをオーラ映像に変換してガラス面に映し出す。
  3. 背景の人物とオーラ映像とを重ね合わせてポラロイドで撮影する。

カメラの解説に続いて、「オーラとは何か?」「宇宙エネルギーとチャクラのつながり」「波動と我心の関係」などなど一時間近くのレクチャーを受けた。

詳細については、いろいろ面倒なので割愛しますけれど。

聞いてしまえば何のことはない。人体からの電磁波信号をバイオフィードバックしているだけの話である。

ただ、電磁波信号を色変換して、それによって精神状態や性格を言い当てるところが「ミソ」なのだろう。

ちなみに、このカメラ一台で160万円だそうで。ひゃあー。

中身は見たところ、単なるポラロイド。でも、これ一台で160万円!!
前のガラス面に現れるオーラを、背景の人物と一緒に写しこむ仕組みらしい。

 

がんばって真摯な表情を作り続ける。
いよいよ撮影開始!

両手をセンサーに押し当てて、オーラ写真の撮影開始である。

オーラ撮影のメカニズムを聞いた端から、やや白けてしまった感があったのだけれど、こんな態度を悟られて、手抜きされてしまっては元も子もない。

がんばって真摯な表情を作り続ける。こういうのは割と得意である。

撮影が終わると、自動解釈のプロフィールがパソコンから印刷される。あとは、ポラロイドを現像すれば完了だ。
 

手の平の電磁波をキャッチするセンサー。
撮影終了後、自動解釈のプロフィールがプリントアウトされる。

 

「こすると早く仕上がるのよー」
ポラロイドをこすりながら仕上がりを待つ

ポラロイドは撮影から現像まで数分間待たねばならない。

その間、「こすると早く仕上がるのよー」と言っては手でこすり、「こうして温めるのもいいのよー」と言っては蛍光灯にフィルムをかざすという奮闘ぶり。

ああ、なんて素朴でいい人たちなんだ。心が和むじゃねえか畜生!!

オーラ写真に対してはどうも素直になれないけれど、ポラロイドをこするお二人の姿は正に「ヒーリング」であります。

こうして温めるのもいいのよー」
オヤジさんも仕上げに写真をこする。

 

ぼくのオーラ写真(1枚目)
1枚めのオーラ写真は失敗気味

さて、いよいよオーラ写真の出来上がり!!

…とフィルムを剥がしたところ、現れたのはこんな写真でした。確かにオーラは焼き付いているけれど、オヤジさんの表情がどうも冴えない。

「うーん、ちょっとボンヤリしとるねえ」

本当はもっとクッキリしたオーラが写るんだそうで、今回の写真はどうも不本意な出来ばえなのだそうだ。

「フムフム…」 真摯な表情すぎて逆におかしいですか。
「いやもちろん、この写真でもいろいろ分かるんだよ」

…とオヤジさんは前置きした後、オーラの解説をしてくださったのでした。

  • 赤色と橙色が優勢だから
  • アンタは「行動の人」だ
  • だからどんどん行動しなさい
  • 全てがよくなりたい人である
  • 性欲も強いやろうね

今までぼくは、どちらかというと「インドア派」として鳴らしてきたほうだが、実はこういう性格だったのか。

「性欲が強い」というのは…。外れてるとは言わないけれど、だ、誰だってそうじゃないのかよっ!? きーっ。

 

テイク2。そろそろ真摯な表情も限界に達してニヤニヤしてしまい。
2枚目のオーラ写真は大失敗

「念のため、もう一枚撮ってみよう」

オヤジさんのこの一声で、もう一度撮影することになったのでした。サービスだからまァいいか。

「今度は指をちゃんとセンサーに密着させてよ!」

言われるがまま撮影コーナーに座って、ハイチーズ。って、記念写真じゃないんだから。

テイク2は、こんなことになってました。

そうして、フィルムをこすりすりしながら待つこと数分。

出来上がった写真を見たオヤジさん、そのままフィルムを折ってゴミ箱に捨ててしまったのでした。

「ええっ? どうしたんですか!?」
「いや、ちょっと…。もう一度撮ろう!」
「見せてくださいよぉー」

渋々見せてくださった写真は、左半分が剥がれ落ちてブザマなことになっていた。

「こんなことは滅多にないんやで。ホンマに!」

 

テイク3。オヤジさん直々の指導が入る。
3枚目の正直…なのだけど

というわけで、テイク3。

三度目ともなると、オヤジさん直々の指導も入って重々しい雰囲気に。

「そこ、ちゃんと密着させるのやでっ!」

ちゃんとしたオーラ写真が写らないのが、なんだか自分のせいであるような気になってくる。

テイク3の写真は、クッキリとオーラが。オヤキャベツも塊のままだと食指が動かないけれど。

そして撮影終了。ドキドキしながらフィルムをめくってみると…。

おお、今度こそクッキリとオーラが映っているじゃありませんか!! やったやったー。

しかし、ぼくの喜びとは裏腹に、オヤジさんの表情はますます曇り始めていた。

オヤジさんよ、一体どうしたというのだ! しっかりしてくださいよ!! ひょっとして、ぼくが悪かったですか!? 

 

テイク1(左下)、テイク2(右下)、テイク3(右上)ろ並べてみる。
オヤジさんの表情は曇ったまま

ぼくが心配していると、オヤジさんがボソッとつぶやいたのでした。

「3枚目、撮らなんだらよかった。全然違うオーラになっとる……」

言われてみてば確かにその通りである1枚目と2枚目はいずれも赤色と橙色が優勢なのに対して、3枚目は黄色と緑色が優勢になっている。

しかしオヤジさん、再び表情をキリッとさせると、毅然たる論調でこう指摘されたのでした。

「3枚目を撮る前に精神状態が変容したのや。そうに違いない」
「最初の写真に関するワシの解説を聞いたおかげで、その知識がオーラに影響を及ぼしてしもたんやろな」

はァ…。そうでしたか。

その後、解説として、ぼくに向いている職業についてレクチャーしてくださいました。

1枚目と2枚目のときは、レーサやスカイダイヴァー、ハングライダー、未開地ガイドなどが向いているそうです。

3枚目のときは、ミュージシャンやアーティスト、コメディアンなどが向いているそうです。

ええと、あの。小生にどないせえと仰るのですか!?

「これは恐らく…」
「ワシの解説がオーラに影響を及ぼしてしもたんやろな」。どっひゃー。
撮影の前半はこういう仕事が向いてたそうです。
後半になると、こういう仕事が向いてきたそうです。

 

突然、化粧水のセールスが始まった。
唐突に化粧水の宣伝が始まった

「ちゅうわけで、ま、とりあえずアンタは行動派。どんどん行動しなさいってことですわ」

オヤジさんのこのような言葉でオーラ写真解説は終了し、お代の4000円を支払うことになったのでした。

4000円でこれだけ素敵な経験をできたのだから文句はない。気取ったフランス料理とか食ってるよりずっといい。

…と自分に言い聞かせていたら突然、「これもよかったら見ていく?」と妙な化粧水を見せられて。

この模様が宇宙のエネルギーを集めるんだそうで。蚊のかゆみにも効く!!

「この化粧水、ものすごくいいのよ」

何がいいかといえば、これ。ボトルに印刷されている特殊な模様が、宇宙エネルギーを集めて、水にパワーを与えているんだそうで。

「蚊に刺されたときも効くのよ。これ塗れば、すぐに痒くなくなるから」

蚊のかゆみさえも止めてしまう宇宙エネルギーの力。いやはや感服ですな。

ぽいーん、ぽいーん。

 

一階の金属成型ライン。丁寧に解説してくださるオヤジさん。
一階の工場もついでに見学

こんな素晴らしいオーラ写真を撮っておられるオヤジさん。

ついでに一階の金属成型の工場も見学させてもらいました。

受けた注文どおりに金型を作り、先方はそれを使って、いろんな製品を大量生産するんだとか。

へえー。オーラ写真より、こっちのほうがなんだかおもしろそ…、あ、いえ何でもありません。

これはビニール樹脂用の成型。
成型にビニールを流し込むと、このようなカレンダー立てが出来上がります。

満面の笑顔で見送ってくださったオヤジさん

というわけで、オーラ写真。いかがだったでしょうか?

取材の当初は、ぼくなりにいろんな疑問ばかりが頭に渦巻いておりました。

全身のオーラ写真なのに、どうして両手だけなのか? そもそも、個々人の電磁波特性が性格と関連しているなんて疫学データが存在するのか? と。

でも、なんとも素朴に、楽しそうにオーラ写真を語るオヤジさんの姿を見ていると、ああ、こういうのっていい塩梅だなァ、彼にとっては盆栽のようなマイワールドなんだろうなァ、と素直に思えるようになってきたわけでありまして。

何を信じるかなんて個人の自由なんでありまして。周囲がとやかく言うもよし、言わぬもよし。

盆栽を愛でるもよし、盆栽なんてウソっぱちだと咆えるもよし、独自にマン盆栽などの新境地を切り開くもよし。

…こういう多様性が許される世の中である限り、社会もまあまあ大丈夫なのかなと思ったり。


 

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