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コネタ652
 
パスネット回収箱の自由度を見る

先週、「後から貼らなくてはいけなくなってしまった苦渋の貼り紙」についてレポートしたが、そのときひとつの備品が大いに心に残った。「使用済みパスネット入れ」である(パスネットとは、東京近郊の私鉄で乗車券として使えるプリペイドカードのこと)。「パスネット入れ」とぞんざいに呼びならわされることの多いこの箱、ときに黙って通り過ぎることのできないDEATHなオーラを放っていることもあり、以前からその有り様が気になって仕方なかった。

そこだけ時空が戦前につながっているような。手を入れると空間のねじれに吸い込まれ、老婆の手をつかんでしまいそうな。
この箱は、都市における闇か。この存在自体が、パンドラの函なのか。

とワーワー言ってますが、要は都会にもこんな手作り感を見つけて喜んでみよう、ということです。

乙幡 啓子

まず、東京メトロの標準タイプをご覧いただこう。南京錠もついて、壁に固定されている立派なものだ。「入っている使用済みのカードは持っていかないように!」という雰囲気が無言のうちに感じられ、社会性は十分。


「きっちり回収いたします。よろしくお願い申し上げます。」

ちなみに東急のパスネット入れも、メトロほどは品行方正ではないものの、ちゃんと規格があるようで、どの駅も(といっても全てを見たわけではないが)下のような備品がいき渡っていた


「違うものを入れないでクダサーイ。」

小田急では、これまた壁に沿って薄型タイプの鍵付き箱が設置され、しかも横に「監視カメラで録画中」と貼ってある。わわっ。

最初、鍵穴が監視カメラかと思った。
上に旧型がまだ貼ってある。

ここまでは駅の什器として十分 通用するタイプのものだ。
以下、そこから少しづつずれていきます。少しづつ、何かが崩されていく様を、瞠目してご覧じろ。

前回の特集でも出ました、日用品流用タイプ。都営大江戸線汐留駅。
番外編。名古屋地下鉄は回収済みカードのリサイクルながら堅牢な造り。要らん重厚さが漂っていなくもない。
ここはちょっと前までは段ボールにガムテのカオス状態箱だったが、反省したのか凝り始めたのか白木造りのような味わいに。都営新宿線新宿駅。
左上と同じ都営大江戸線でも、新宿駅ではぐっと文房具っぽく。入れ物に初めて「ありがとうございました」の感謝の言葉を見る。
メトロ赤坂見附駅。きれいなプラスチックなので近づいて出自を確認すると・・・
箱の裏側に「化粧ブラシ」「歯ブラシ」のイラストが。日用品流用タイプでした。
京王線では使用済みパスネットをリサイクル。なんですけども・・・
汚れのつきやすい材質なんだな。
京王新線新宿駅ではちょっと変わった回収法だ。このような受付が数箇所口を開いている。
「○○さーん、おくすり3日分出しときました」か。日々ここに「コトッ」と入っていくわけだ。中で駅員さんがびくびくしてはいないか。
メトロ池袋駅では目の高さに口が開いている。
一見、製作を発注したプロダクトかと思ったら、「KOKUYO」の文字が浮いている。文房具流用モノでした。

でもなんだかんだ言いつつ、ここまで見てきたものは手作り感を消した(ように見える)プロダクト。駅の周囲を体裁よく保とうという意志が、実を結んでいる(ように見える)。破綻はあまり起きていない(ように見え・・・)。見るほうも安心だ。

しかしここからですよあなた。

パスネット入れのリアリズムは今も昔も変わらずそこにあり、ダイナミズムは底知れない。
つまり「自由度高けぇ!」ってことだ。


携帯キャリア大手の本社ビルの建つ溜池山王駅でこれ。夏休みの工作っぽい。
でもきれいにトリミングしてイラストを貼り合わせているのがけなげだ。

余談ですが、同駅のご意見箱。薄い!ご意見箱薄い!食パン8枚切りくらいの薄さ。

メトロ丸の内線新宿駅の精算機には、青いガムテで意匠を凝らしたものが。青が目にしみます。

東武池袋駅のは、ワードかパワーポイントで作成した意匠が。インクジェットが雨で滲む。
都営新宿線五反田駅。こういう紙細工がぽっと貼ってあるって、実はすごいことなんじゃないか。

昭和何年ごろの製作だろうか。これも都営新宿線新宿駅。新宿はバリエーション多すぎる。

西武池袋線。やたらでかい。ので構造が弱い。のでどれもつぶれていた。

けなしているわけではなく、むしろこういう自由な創作は増えて欲しいと思っている。1箇所くらい、駅のこんな個性を見てみたいではないか。人間の手が加わったところを見たいではないか。

ときれいにまとめてますが、
「 面白いから残そうよ!」
という気持ちでもあります。

ちなみに東京メトロさんに聞いたところによると、やはりトップの錠付きの箱が正規のものだが、どの改札口・精算機にもいきわたっているわけではないそうで、よってあとは駅々に任せているとのことだ。


 

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