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コネタ673
 
燃える酒鍋・どん平
ある意味斬新ともいえる感覚でデザインされた広告だ。

右の広告をご覧頂きたい。

ねじりはちまきのオッサンが、不思議な乗り物に乗っている、ユーモラスなイラストが眼に飛び込んでくる。
そして、大きく「燃える酒鍋」の文字。よくみると、追い打ちをかけるように「ニュータッチとんかつ ふっくら やわらか」と書かれている。よくみると、電話番号のあたまに着いている3の文字は後から付け足された形跡がある。

いったいこのお店はどういうことになっているのだろう? 確かめに行って来ました。

(text by 宮崎 晋平

都営荒川線は、都内で唯一の路面電車だ。

上記の広告を観たのは、別件で都営荒川線に乗った時だった。イラストはユニークだが、「燃える酒鍋」、「ニュータッチとんかつ」と、よく見るとなにやらおいしそうな雰囲気を醸し出している広告に惹かれ、JR大塚駅からふたたび都営荒川線に乗り込み、宮ノ前駅を目指す。

宮ノ前駅の風景。荒川線は、まるでバスのような雰囲気だった。

宮ノ前駅に着くと、そこは他の多くの街がそうであるように、そこに住んでいる人か勤めている人しか来ることがないような、そんな雰囲気があった。

「どん平」をめざし、女子医大通りというこの駅周辺の唯一の目抜き通りを進む。


宮前商店会の看板。 「どん平」のある女子医大通りの看板。駅を降りると比較的すぐに眼に入るので、行かれる方はこの看板を探すと良いだろう。
「目抜き通り」といっても、本当はこんな感じの風景である。

100mほど進むと、件のどん平が現れた。あの広告からして、実際はちょっとアレなお店なんじゃないかと想像してしまっていたのだが、そんな想像を覆す、とてもキレイで立派な店構えだ。


こぢんまりとしていながらも立派な門構えで、清潔感にも溢れている。

さて、中に入り、二階に通される。事前に電話で件の広告に載っていた酒鍋を予約しておいたため、すでに人数分の鍋の具材がセッティングされていて、とてもおいしそうだ。

お店の照明がオレンジ色のため、このような色の写 真になってしまった(以下同)。申し訳ない。

「燃える酒鍋」の準備をしてもらうことにすると、見た目は普通の鍋のような、透明の液体の入った鍋がやってきた。しかし普通 の鍋と違うのは名前から察しがつくとおり日本酒が5合入っているのだとか。
新潟では酒鍋自体は割とポピュラーな食べ物らしいが、こちらのお店ではオーナーの父でもある先代が、30年ほど前に考案したらしい。

それではさっそく食べてみよう。

一見普通の鍋だが、火をつけると物凄い火柱が!!(マウスオーバーで画像が変わります)

単なる酒鍋ではなく「燃える酒鍋」ということで、実際に火をつけてもらう。何故燃やすのかというと、鍋に入った日本酒のアルコールを飛ばすためだというが、観ていて「火事になるんじゃないか」と不安になるほど、勢いよく火柱をあげて燃える。普通 の水炊きではなく敢えて酒鍋にしているのは、豚肉のもつ臭みを消させる為だとか。

5分程で自然に鎮火したら、後は普通の鍋と同じ要領で食べるのだが、豚肉独特の匂いがほのかに漂う日本酒の香りにかき消されて、これがまたウマイのだ。

同席した一同、ウマイウマイとただそれだけをオウムのように繰り返しながら、鍋を突きあうのだった。

そうこうしているうち、広告に載っていた「ニュータッチとんかつ」が、テーブルに運ばれてきた。

見た目は普通のトンカツと変わりないのだが……。

はむ、と一切れを一気に口にほおばると、ウッ!ウメー!! なんでも豚バラ肉を10時間煮込み、さらにトンカツにしたというこのメニュー、油っぽさはほとんど抜けていて、コラーゲンのとろみが口の中でトロトロととろける。
こんな美味しいトンカツは初めて食べた。
オーナーの話だと、なんでも本職のトンカツ屋が食べに来ることもあるそうだが、みな口々に「これは邪道だ」と負け惜しみのような言葉を残していくのだそうが、 別においしければなんでもいい筆者のような人間は、邪道であろうとなかろうと、これだけおいしければ大満足なのだった。

取材は夜に行われたため、鍋ととんかつをビールと共に味わうという贅沢な取材になってしまったのだが、昼間は定食屋としても営業をしているらしい。

壁に貼られた定食のメニュー。この味でこの値段は、いってみなければ分からない安さだ!!

ちなみに冒頭に掲げたユニークなイラストは、先代の時にあの「サザエさん」で有名な長谷川町子先生(!)のアシスタントの方に、お願いして描いてもらったそうだ。

他にも、先代のアイデアマンぶりや、現オーナーと父との心温まるお話も訊いたのだが、それはここでは割愛させていただく。実際に訪れて、美味しいものを食べながら尋ねてみるといいだろう。きっと快く応じてくれるはずだ。

この一枚の広告に惹かれて行ってみた「どん平」は、想像以上に美味しいお店だった。筆者が自信を持ってお勧めする、本当に良いお店だ。この記事を読んだら、多少遠方の方でもわざわざ足を運ぶ価値はあると、ここに断言しておこう。そこであなたを迎えている美味しいものの数々に、落とすホッペがいくつあっても足りない位 だ。

都営荒川線の宮ノ前という、地元じゃなきゃまず行かないようなローカルなところに、こんな美味しいお店があるなんて、 本当に油断できない。

もしかしたら僕の家の、そしてあなたの家の近所にも、しらないだけで「どん平」に勝るとも劣らないような、そんな美味しいお店があるかもしれない(正直、どん平ほど美味しいお店は、そうそう見つからないとは思うが)。

自分の家の近所の定食屋さんにも、今度足を運んでみよう。そうすれば、どん平ほどではないにしろ、地元に住んでいて良かったと思えるくらい、美味しいお店がみつかるかもしれない。

繰り返し書いておくが、今回取材したこの「どん平」、 なんとしても一回足を運んでおく価値はある。行ってみて初めて、この記事に書かれていることがどれだけ信憑性に溢れたものか、分かろうという物だ。

3代目に当たる現オーナーの安藤正高氏。若かれし頃のやんちゃっぽさをどことなく感じさせる、好青年といった印象だ。

なんだかんだ煽ってしまったが、取材と称して本当に美味しいものを食べることができて、筆者はただただ満足なのであった。

東京都荒川区西尾久2-2-5
TEL&FAX 03-3893-8982

営業時間
昼 11:00〜14:00  夜 17:00〜20:00頃
定休日 日曜日(祝日は要電話確認)


 

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