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コネタ


コネタ713
 
スベスベマンジュウガニを探して
ウパーッ!

 スベスベマンジュウガニというカニがいるらしい。すべすべ饅頭蟹だ。

 声に出して言ってみるとよくわかるが、どうしてこんな名前になってしまったんだろうという響きがある。ふざけてるのか!と怒り出す人もいそうだ。

 しかし、名前こそ変わっているが、割と普通に磯にいるカニであるらしい。本当だろうか。ぜひこの手でスベスベしてみたい。

 カニが自分を海へと駆り立てる。いつもなら寝ている休日の午前中、スベスベマンジュウガニのためにむっくり起き出して探してみました。

(text by 小野 法師丸

●それでいいのかスベスベマンジュウガニ

 もう一度言う、スベスベマンジュウガニ。適当にメロディーをつけて読んでみてもいい。カニ自身がどう思っているかは知る由もないが、自分がスベスベなんとかという名前だったらかなりショックだと思う。


どこの星だ、ここは

 そんな気持ちをカニと向き合うことではっきりさせるためにも、千葉県は外房の磯にやってきた。潮が引く時間を調べて来たので、いつもは海水に覆われてる場所もすっかり岩でゴツゴツだ。

 知らない星の地表みたいにも見える磯。そういえばカニって宇宙人っぽい感じもする。あいつらちょっとおかしいって前から思ってた。

 勘違いでもテンションが高まってくるならそれでいい。いざ探索。


写真のど真ん中、岩陰にカニがいます
「なにすんだよ!」

 じっと目を凝らして潮だまりの岩陰を見てみると、割とたやすくカニを発見。おお、いるぞいるぞ。

 横歩きするカニを両手ではさみうちして手に取ってみる。その感じからしてとりあえずスベスベマンジュウガニではないようだが、カニ独特の宇宙人っぽさはかなり高い。

 この調子ならいるだろうか、スベスベマンジュウガニ。


「撮らないでー!」
探索5分でもうこんな感じ

 少し探してみただけでどんどん捕まえられる。思っていたより早いペースでカニを捕獲。それもおんなじ種類というわけではなく、それぞれ違う感じがする。

 すごい。かなりカニカニだ。


わかりづらいけどカニ
ちっこくてもばっちりカニ

 次々といろいろなカニが見つかる。海草を身につけてカモフラージュしてるやつ、ちゃっちゃいけどしっかりとカニしてるやつ。ギラギラした眼で磯にやってきた私だが、いつの間にかカニをいとしく思う気持ちが芽生え始めてくる。


狭いとこ好きだなー

 それと同時に、カニを見つけるスキルが自分の中でどんどん高まっていくのがわかる。狭い岩の隙間にいるカニも見逃さない感じになってきた。カニ名人化していく自分がそこにいる。

 

●主役不在のままどんどんカニカニ

 しかし、今回の目的であるスベスベマンジュウガニとおぼしきカニは見つからない。どうしたことだろう。


なんかやばいよ

 気がついたらカニ観察用に持ってきたミニ水槽は大変なことになっていた。夢中になってカニを放り込んでいた私だが、改めて確かめてみて驚いた。

 大変だ、カニフィーバーだ。湧いてきたのは「これはやばいだろう」という気持ち。

 なぜだかわからない不安が止まらない。スベスベマンジュウガニを発見する前にカニ博士になってしまいそうな勢い。さっきまでカニ蔵、カニ江と名前をつけていたカニも、もう何がなんだかわからない。


「カニ!でけえカニ!」とずっと叫んでた子供
最初からカニをあきらめている人も

 それでも一向に見つからないスベスベマンジュウガニ。腰も痛くなってきた。

 私がずっとライバル視していたのは黄色い浮き輪の少年。カニを見つけては大きな声をあげている。何気なく近寄って様子をうかがってみたが、スベスベマンジュウガニは見つけていない模様。

 カニに興奮する気持ちはよくわかる。持ってる水槽を見せ付けてやりたいが、あまりの量に喜びを超えて引かれてしまいそうな気もする。

 それにしても疲れた。水槽の中からカニを一匹取り出して、岩に置いてみる。しばらくそのまま動かないカニを観察してみた。


「カニカニ…」

「…カニ?カニカニ?」

「カニッ!」

「カニ、カニカニ」

「カニー!」

「カニカニー」

 ああ、普通にかわいい。逆さまの状態から起き上がって、横歩きで岩陰に逃げていくカニ。いつの間にか軽く「どうぶつ奇想天外」みたいになってきてしまった。


探したわけではないがナマコがいた
潮が満ちてきたよ

 やはりスベスベマンジュウガニは見つけられない。気がついたら潮が満ちてきた。カニへの愛情は深まったが、腰も限界だ。仕方がないのでカニを放してあきらめるか。


さらばカニカニ

 潮だまりに再びカニを放す。コソコソっと動いて、自分の持ち場につくように岩陰に潜むカニたち。さようならカニカニ、スベスベマンジュウガニは見つけられなかったけれど、きみたちと会えてよかった。

 名も知らぬカニたちとの別れ。ごめん、スベスベマンジュウガニのことは少し勉強してきたんだけれど、それ以外はさっぱりわからないんだ。

 さらばカニカニ2005。西暦を勝手につけて、ドラマチックにスベスベマンジュウガニ探索を終えたい。


●いつかこの手でスベスベしたい

 探索がむなしく終わった話を磯に詳しい知人にしたところ、「スベスベマンジュウガニならつかまえたことあるよ」とのこと。写真も撮ったというので見せてもらった。

おお、スベスベしてそう

 確かにスベスベしてそうなカニだ。ずんぐりと丸まった感じは、その名にたがわず饅頭を思い起こさせる。知人に詳しい話を聞いてみた。

   「やっぱり、スベスベしてましたか!?」
   「うん、かなりスベスベ」
   「かなりスベスベ!」

 詳しい話というより、スベスベしてるかどうかに終始した感はあるが、こうして聞いてみると自分でスベスベできなかったことがくやしく思えてくる。

 いつの日か実際にスベスベしてみたい。ただ、いくらかわいいからと言って、毒があるのでゆでて食べたりはしないようにしたいとも思う。(ほんとに毒あります)


 

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