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コネタ


コネタ839
 
DNAについて熱く語りますよ

前のページで簡単に書いたことを、もうちょっと踏み込んで説明いたします。かなりアツいので、独走してしまっています。すみません……。

佐倉 美穂

どんどん解明されつつあるDNA。その可能性は想像を超えた域に達している。
ヒトDNAの全塩基配列(DNAの最小単位。4つあり、A、C、G、Tの文字で表記される)も解析され、そのデータは医療その他の面で活かされる。

問題が取り沙汰されている遺伝子組み換え食品も、安全性を確保しつつ実りの多い植物が開発されたら、貧困にも一役買うだろう。

また確実な個人識別の手段とも成りうる。指紋や角膜以上の個人の特定。鍵の代わりになったり、身元の確認になったりもするだろう。

将来が急速的に開けてゆくDNAの世界。

前ページでは、その一端を利用した検査を行った。
その実験の原理などを、興味のある方はずずいとご覧ください。


口の中をこするだけで十分なDNAが採れるの?

綿棒の先端と一緒にチューブに入っていた細胞のタンパク質を分解し、余分なものを取り除き、DNAだけを集める。


細胞から取り出されたDNA液

そのDNAをPCRという機械で増やすのだ。


前ページでもご紹介したPCR機

DNAは塩基のAとT、CとGが結びつくようにできており、「二重らせん」と言われるように、ACGTという並びのDNAには、TGCAというDNAがくっついている。
しかし高熱にしたりするとDNAは一本鎖になり、冷やすとまた同じペアを作る。AはTを探し、CはGを探し、結局同じ二本鎖ができる。

体内での細胞分裂の時に同じDNAの鎖を複製していくのを、熱と酵素を利用して人工的に短時間で増やすのがPCRなのである。

今回増やしたのはアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)を作る遺伝子のDNAだ。
その両端に目印となるプライマーというDNAを混ぜておくと、目的のDNAだけを増やすことができる。


増えたDNAをどうするの?

そして増えたアルデヒド脱水素酵素を作り出すDNAの、たった一つの塩基の変異(=スニップ)を調べる。
たった一つの塩基の違いでも、酵素はうまく形作られず、作用しなくなるのだ。

調べる方法は、酵素での切断だ。
使うのは制限酵素といって、ある塩基配列の並びをみつけると、そこを切断する酵素なのである。
なので、アルデヒド脱水素酵素の塩基配列が解っており、かつ、変異がおこる場所が解っていれば、その配列に反応する制限酵素を使ってDNAを切断してみることによって、変異の有無がわかるようになっている。

そしてそのDNAの大きさを判断するのがアガロース電気泳動だ。


アガロース。食べても多分平気

アガロースは細かい編み目状になっている。DNAは帯電しており、電気を流すと移動するのだが、小さいDNAほど編み目を通り抜け易く、長距離移動する。反対に大きなDNAは少ししか移動しない。

適当な量の電気を流して染色し、強い紫外線を当てると、DNAが発光するのだ。
それの写真がこれ。


TVなんかでたまに見る

なので、切れなかったDNAは短距離しか移動しておらず、切れてできた二本のDNAがそれより大きく移動しているのだ。
そして写真のDNAの白さで、切れたのか切れなかったのか(=変異がなかったのかあったのか)を判断するのである。

まとめ

以上が前ページの原理だ。
地味で単純な作業だが、これで体質がわかっちゃうのである。

華々しいが難しく未知の世界のように思われるDNA。
しかし全ては地味な作業の積み重ねだ。それでも急速な勢いで発展を続けている。

長い間定説であった「人間のDNAの約97%は意味のない領域」という説も、つい最近になって「機能している領域が多い」ということがわかった。

これから先、DNAでどんなことが解るのか、どのように利用されるのか、興味の尽きないところである。

前ページで使えなかった古賀さんの写真。ご協力多謝です。


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