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コネタ


コネタ883

 
そうだ、チャイでも飲みに行こう。

大阪から友達がやってきた。
大阪の友達は渋谷のど真ん中で僕にこう言った。

「チャイが飲みたい」

と。僕は渋谷でチャイを出すお店がどこにあるのか思い浮かばなかった。そう言えば東京ってチャイをあまり見かけないな。
もちろん行く店に行けばあるのだろうが、少なくても生活に密着した飲み物ではない。

大阪では普通の喫茶店でも置いてあるようなメジャーな飲み物である。お好み焼きを食べ、うどんを食し、コーヒーを飲み、チャイを飲む。普通の生活の延長上にチャイはある。
しかし東京では探さなければチャイはない。

でも、チャイはうまい。
そうだ、久しぶりにチャイでも飲みに行こう。

梅田カズヒコ


チャイってなんですか? 〜試験に出ないチャイ講座〜 

チャイとは簡単に言ってしまえばインド式のミルクティ。インドでは日本で言うコーヒーや緑茶のようにメジャーな飲み物で、紅茶とミルクとシナモン等の香辛料を煮出して飲むものである。

ミルクが多くてやや甘いが、煮出しているので紅茶や香辛料の成分が濃厚に溶け出し、普通の紅茶に比べ味に独特のコクがあるのが特長だ。

実はチャイの誕生には複雑な事情がある。
植民地時代のインドは紅茶を生産していたが、立派な紅茶葉はすべてイギリスに持って行かれてしまっていた。インドの庶民に残るのは商品にならないダストティーと呼ばれる埃のように細かい紅茶の葉だけ。そこで、インド人はこの捨てるしかないと言われたダストティをどうにかおいしく飲む方法はないかと考えた。
その結果紅茶葉をミルクと一緒に煮出し香辛料を加える方法が考えられ、チャイが誕生するのだ。

またチャイの具体的な調理方法や香辛料も地域や個人によってまちまちだ。そのため本場でも特に「これぞ正式なチャイ」というチャイは存在せず、各家庭でオリジナルの調理法、スパイスによるチャイが生み出されている。
このあたりの「好きにやればええやん、何でもええやん」精神が、お好み焼き(具材は何を入れても構わない)やホルモン料理(元来は捨てる部分を調理したもの)等がもてはやされている大阪にしっくり来たのかどうかは分からないが、なぜか大阪は「日本のチャイのふるさと」と言われるほど局地的にチャイが根付いてしまったわけだ。


うまいチャイを飲みに行きます! (長い文が面倒くさい人はここから)

と、言うわけでそんな素敵な飲み物、チャイを今から飲みに行くのだが、チャイは先ほど説明した通りお店によって味付けや調理法がさまざまなので、

・隠れ家的カフェのチャイ
・チェーン店のチャイ
・家庭的な雰囲気の雑貨屋・カフェのチャイ

とチャイを出すお店を3軒ほどまわり、自分なりに飲み比べてみようと思う。


1杯目のチャイ 隠れ家的カフェのチャイ編

調べてみると昨今のカフェブームで、東京の隠れ家的カフェにはチャイが置いてあるケースが多くなったようだ。さっそく飲みに行ってみた。


隠れ家的カフェ代表  『cafe ordinair』

下北沢駅前の商店街から少し脇道に入ったところにある cafe ordinaire というお店にやってきました。

週末にもなるとやたら人が多くなる騒々しい街下北沢だが、隠れ家的なこのお店は落ち着いた雰囲気だ。


cafe ordinair のチャイ。
ポットで出てきました。

甘さ控えめ、上品なチャイでした。

さっそく飲んでみる。
優しいミルクとシナモンが口いっぱいに広がった。久しぶりの味だ。懐かしい。インドの飲み物で郷愁を感じるとは、いささか不思議だが、育った環境がそうだったんだから仕方ない。
そうそう、これがチャイなのだよ。筆者は東京に来て1年半が経つけど、はじめて東京でチャイを飲んだ気がする。おいしい。


cafe ordinair のチャイ

値段:750円
主な香辛料:クローブ、シナモン

総評:味のほうは文句なしに満点。クローブが入っているので香りが特に良い。これで値段が5〜600円ぐらいだったら頻繁に行くのにな、と思ったりもしたが東京のチャイはまだ高価なイメージがあるので仕方ないか。

お店の住所:世田谷区北沢3-25-1 下北沢MTビル3F


2杯目のチャイ チェーン店のチャイ編

調べてみるとスターバックス、フレッシュネスバーガー、アフタヌーンティなどチェーン店にもチャイは置いてあるそうだ。今回はフレッシュネスバーガーに行ってみた。


チェーン店のカフェ代表  『フレッシュネスバーガー』

フレッシュネスバーガー。まあ説明しなくてもいいっすね。ハンバーガー屋さんです。フレッシュネスは、わりとドリンクメニューが豊富で、珍しい飲み物もあります。


プラスティック製のコップに入ってきました。シンプル。
泡立っているのが特長。おそらくディスペンサーで作ったのだろう。

リーズナブルで、安心な味のチャイ。<

フレッシュネスのチャイと、先ほどのカフェの味を比べると、先ほどのカフェが100%果汁のオレンジジュースなら、こちらは30%果汁のオレンジジュースといったところか。つまり本格派と呼ぶには疑問があるが、くせがないので飲みやすい。
量も多くとてもリーズナブルだ。

インドの人はあまり香辛料にこったりしないと聞いた。という事はある意味本場のインド人が飲んでいるものに近いのかもしれない。


フレッシュネスバーガーのチャイ

値段:300円
主な香辛料:シナモン、ジンジャー?

総評:リーズナブルでまっすぐな味。チャイ普及委員会の僕としては(勝手に名乗ってます)こういったリーズナブルなチャイの登場こそ、チャイの認知度アップに必要なものかもしれない、と思った。


3杯目のチャイ 家庭的な雰囲気の雑貨屋・カフェのチャイ編

調べてみるとそれほど高価でもなく、本物志向のチャイは東京にもちょこちょこあるのだ、と知った。雑貨屋だけどチャイのうまい店として地元で評判のよいお店に行ってきました。


家庭的な雰囲気の雑貨屋・カフェ代表  『DECOYa』

新小岩駅の南口から徒歩3分程度。陸橋を渡ってナナメに入っていったところにおいしいチャイを飲ましてくれる雑貨屋『DECOYa』を発見。
アジア系の雑貨・古着を売るお店である。店内はなかなか興味深かったが、今回の目的はチャイである。さっそくカフェスペースでメニューを見ていると、『ストロベリーチャイ』という文字が目に入った。今回は最後なので少し冒険してストロベリーチャイを頼んでみます。


珍しいストロベリーチャイ。ちなみに普通のチャイも置いてあります。
ストロベリーの甘酸っぱい味がほのかにしておいしかったです。

オリジナリティあふれる優しいチャイでした。

おいしい。なんだこれは。飲んだ事のない味だ。ストロベリーというだけあって甘いチャイを想像したのだが、そんなに甘くない。それよりストロベリーのフルーティな香りがプラスされ、ほのかに甘酸っぱくなっている。

チャイはシナモンミルクティと間違われる事が多い。簡単に言えば、一度煮出すというところが肝なのだ。香辛料はあくまで紅茶の味を引き立たせるための手段であって、シナモンミルクティのようにシナモンが前面に出て主張する、なんて事はまずない。その点ここのお店のチャイは紅茶とミルクと香辛料がよく絡み合っていておいしかったです。

いやー、家庭的なチャイだなー。


DECOYa (デコヤ) のチャイ

値段:440円
主な香辛料:ジンジャー、ターメリック、シナモン

総評:帰りに店主さんに香辛料は何が入っているんですか? と聞くと簡単な作り方もあわせて丁寧に教えてくれました。素敵な店長のいるお店です。ぜひ遊びに行ってみてください。

お店の住所:葛飾区新小岩2-5-2

目を閉じて味わいたい、チャイはそんな味だ。

こんなにおいしいのに、こんなに日常的な飲み物なのに、インド料理屋やちょっとこじゃれたカフェにしか置いていないというのは少しもったいない気がする。ぜひ、皆さまにもチャイを飲んでいただき、チャイの全国的な普及に協力していただきたい。

これを読んだ会社の帰りにでも行ってみてはどうでしょう。友達や同僚や恋人と行ってもいいだろうし、一人で飲みに行っても充実した時間が過ごせると思います。

何年後か、僕の思い通りチャイがメジャーな飲み物になる時代が来たらいいのにな。ごくごく。


 

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