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コネタ


コネタ895

 
前衛? 画期的? 面倒くさい? な期間限定本屋を体験。
本をキーワードに面白い事を考え続ける
book pick orchestra の内沼さん。

以前、当サイトで
古本に自由に書き込みができる本屋
というイベントを取材させていただいた時から
このイベントの主催者、book pick orchestraの代表内沼さん(写真右)とはなぜかたまたま共通の友人が居たり仕事の現場で一緒になったりと不思議な縁ですっかり取材相手という枠を飛び越え仲良しになってしまった。

そんな内沼さんが横浜・馬車道に1年間の期間限定でまた変な本屋を出したと伺い、さっそくどんな本屋なのか偵察しに行く事にした。

本や雑誌をどれだけ大量に流通させるか? そんな数値的な事しか考えられないすべての書店と取り次ぎ会社の大人たちへ捧ぐ。

book room 〔encounter.〕(エンカウンター)
  横浜市中区北仲通5-57 北仲WHITE114
  TEL/FAX:045−212−1350
  ※予約制(入店の際には必ず事前にご予約ください)

梅田カズヒコ

みなとみらい線 馬車道駅2番出口徒歩30秒の場所にあります

横浜らしい古い洋館や赤レンガの建物を眺めながら歩く事僅か。
『北仲WHITE』という建物が見えてくる。この取り壊しの決まった古い建物に期間限定で、ギャラリーとかデザイン事務所とか面白そうなテナントが入居している。
さっそく1階にある内沼さんのお店『エンカウンター』へ。



ちょっと前衛的な雰囲気を意識した看板が目印。
郵便ポストを見ただけでも、面白そうな入居者が集っているのが分かる。

 

店内はテーブル3つ、椅子6つ。そして本棚。それだけだった。




店内。ここだけ見るとカフェみたいだ。そして、



本棚。特に変わったところはない。と思いきや……



よく見ると本のいくつかが茶色いクラフト袋に包まれている。はて?

 

この本屋の面白いルール。

実はこの本屋には独特の面白いルールがあるのだ。以下
順を追って説明します。

1.入店、椅子に座ると同時にクラフト袋と説明書、紅茶がでてくる。クラフト袋の中には鉛筆・消しゴム・したじき、以上。

2.本棚を見回し、直感でこれだと思うクラフト袋を選択。場所が分かるように先ほどのしたじきをはさみ、クラフト袋に入った本を自分の席に持って行く。


2-a
2-b

3.自分の選んだ袋を開けほほーと眺める。それが自分の興味の範囲内の本であってもそうでなくてとも覚悟を決め、読み始める。

4.この本がもし気に入ったら購入する事ができる。もし気にいらなかった場合、あらかじめ本の中に入っている用紙を取り出し、次にこれを手にする人に向けて本文から印象に残った一文を引用し、メッセージを残す。そして今度は袋に入れずに元の場所に戻す。

5.時間の許す限り、以上を繰り返す。すでにクラフト袋から取り出されている本についてはメッセージも含め閲覧自由。


4-a (ふむふむ。おもろいなー、この本買おうっと。)
4-b (よかったけど買うまでじゃないな。次の人へのメッセージを残そう)

 

とまあこんな感じのややこしい面白いルールがあるわけだ。

インタビュー開始!

なぜこんなお店をオープンさせたのか、その意図について内沼さんと、同じくエンカウンター中心的なスタッフの一人、川上さんをにお話をうかがう事にした。


内沼さん(写真右)と川上さん(写真左)

 

徹底討論! 本屋の未来について

Q お客さんの反応はいかがですか?

内沼(以下、内):来てくれた人の反応はすごく良いです。普段は手に取らない本を読むのが新鮮だと。意図しない本に出会う事になりますからね。
川上(以下、川):本が読みやすい空間だ、と言われる事が多いです。空間プロデュースを36.7℃という若手のデザイングループ、音楽を ontonson というオンラインのCD shopに担当してもらっています。僕らも含めてそれぞれが本を読むのに最適な空間作りを考えましたので、読書に適した空間になっていると思います。


Q 面白い反応はありましたか?

内:占いみたいだって言われるんですよ。中に何が入っているのか分からないまま本を選ぶので、その時の感情や気分や深層心理を象徴するような本に出会った、って言われる事が多くて。ゲーム性があって見守るスタッフの僕らも楽しいですね。




Q なぜこんな本屋を作ろうと考えたのですか?

内:現代は便利な世の中で、探している本を見つけるのは非常に簡単になったと思います。Amazonに行けばそれこそクリックひとつで自宅に居ながら目当ての本が買えるわけです。本屋の大型化も進み、探す本を見つけるのには十分な環境が整っています。

しかし一方で本を読む人の全体数は減っているわけです。近所にある小さな本屋の経営は非常に厳しい状況です。
では今、小さな本屋は必要ないのでしょうか? そもそも本屋とはいったい何を提供すべきなのでしょう。

そもそも本屋は『本との出会い』を提供すべきなのだと思うのです。


 ▲ 例えばそれは音楽の世界に例えるならば、大手CDショップがあって、コアで専門的なレコードやCDを取り扱う店舗を作る事に似ていますか?

川:ちょっと違うかもしれません。専門的で面白い古書店は神保町に行けばあるわけですから。僕らが願うのはこういう本屋があったら行きたいな、という新しい本屋のシステムを考えようかと。

内:音楽だったら例えばCMとか、いい感じのカフェに行けば、自分の知らない(意図しない)音楽に出会えるわけですよね。つまり僕らが目指すのはそういった雰囲気に近いかもしれません。
あくまで無意識に、偶発的に本と出会えるきっかけ作りができればな、と思うわけです。




Q オープンして3ヶ月だそうですが、オープン当初と今とで、何か変化はありましたか?

内:横浜のアートイベント「トリエンナーレ」とかぶった事が良かったですね(笑)。お客さんは少し増えてきています。狙ったところの客層と言いますか、そういった事に興味がありそうな一部のお客さんがやってきます。この調子でお客さんが増えてくると面白い事になりそうですね。
とりあえずイベントなどを行って、徐々に来てくれる人を増やそうとは考えております。

 

ちかいうちでは、こんなイベントを企画しているそうです。

美描室エンカウンター

日時:11月15・17・24日 19:00〜21:00

「トリエンナーレ」にも出展されている似顔絵作家黒田晃弘さんに似顔絵を描いてもらえる3日間。

入場料:500円

※予約が必要です。先着順なので早めにご予約を。

内沼コメント:一日3名まで×3日間なので、体験できるのは9名だけんなんです。お客様はたった3名なので、濃密な時間になるんじゃないでしょうか。

except books

日時:11月26日
13:00〜14:00、15:00〜16:00、17:00〜18:00、
19:00〜20:00

劇的フォークユニット(演劇+フォーク)カズとアマンダの2人によるショータイム。

入場料:1200円

※予約が必要です。先着順なのでお早めに。

内沼コメント:これは面白いイベントですよ。笑えます。複雑な気分になります。各時間6名×4回公演なので予約の際に時間帯を指定してください。

 

最後に、お集まりのスタッフ全員に集まってもらい、一言づつコメントいただきました



岡村和佳菜さん(写真左) 土曜日担当
『昼は昼でいい感じで、夜は夜でいいので両方来てください』

川上洋平さん(写真真ん中左) 火・金・日・(土)曜日担当
『本との出会いを楽しみに』

内沼晋太郎さん(写真真ん中右) 月・木・日・(土)曜日担当
……(コメントはあとでこっそり梅田さんにだけ教えます、との事)

松尾藍子さん(写真右) 月曜日担当
『月曜日は挽きたてコーヒーも出しますよ』

たまたま遊びに来ていたお客さん。
ちょっと面食らいながらもお店を楽しんでいるようでした。

 book room [encounter.] (エンカウンター)
(すべてのインフォメーションは > こちら < から。)

帰り際に店主の内沼さんに
「そう言えば最後のコメント頂いてないのでください」
とお願いしたところ

「僕らが出版業界を変えます!」

と照れながら僕に耳打ちしてくれました。
内沼さんの熱くてお茶目な人となりがよく表れているエピソードだ。

そんな内沼さんの本屋に皆さまも足を運んでみてはいかがでしょうか。横浜は意外と都内からでもすんなり行けちゃいます。


 

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