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コネタ988

 
登山に行かないけど、登山グッズを勉強する。
これ、何に使うか分かりますか?

はじめに謝っておきます。僕は登山に行く予定はありません! すみません。

でも、登山に行く人を見ていると、なんだかいろんな道具を持ち歩いていて、「その道具何に使うの?」 とついつい聞きたくなってしまいます。

そう、登山グッズって、自分の知らない領域だけに、なんだか面白そうだ。

だから登山グッズ専門店に行って、登山グッズのあれこれを学ぶことにしました。

日本に住んでいても外国語が話せる事が役にたつように、登山に行かなくても登山グッズを知ることが人生において何かの役にたってくれるかもしれません。

そんな気分で見学させていただきました。

梅田カズヒコ

記事制作にあたり都内最大級の登山グッズ専門店、
「さかいやスポーツ」さんにお世話になりました。

さかいやスポーツ
東京都千代田区神田神保町2-28,44,48
営業時間 11:00〜20:00
年中無休(元日をのぞく)
https://www.sakaiya.com/

 

Lesson 1 正しいバッグのえらびかた

お店に入るとまず見えてきたのが100種類はあるかと思われるバッグ。
正直言って、素人の僕では違いが分からない。

と言うわけでさっそく店員さんに正しいバッグのえらびかたをうかがってきました。


正直言って、数が多すぎてどれがどれやら……

梅田「バッグを選ぶときはどういう基準で選べばいいんですか?」
店員さん「挑戦する山によってバッグを変えるのが賢い選択でしょうね」
梅田「え? 山によって選ぶべきバッグが変わってくるんですか?」
店員さん「はい。山や用途によってバッグを変えるのがいいと思いますよ」

申し訳ないけど今までバッグなんてどれも同じじゃないか、と知ったかぶっていた。しかしそれは間違いだったのだ。どんなことでも聞いてみるものである。

バックは大きく2種類に分けることができて、細身のものとずんぐりしたものの2種類である。



ずんぐりバッグ
細身バッグ

この2種類のバッグを比べると、細身のバッグは歩くときにじゃまにならないため、草木が生い茂った狭い道を歩くときや、比較的困難な道を歩くのに最適らしい。しかし欠点は長細いので重心が崩れやすい、荷物が取り出しにくい、などの欠点があるという。

対するずんぐりバッグは当然草木が生い茂った狭い道では不都合になる。しかし、重心が取りやすく安定感があり、同じ重量の荷物を持ったとしても疲れにくいらしい。よって初心者には最適だということになる。


「安定感がありますね」と間違ったコメントを発する人。

店員さん「……という違いがあるんです。ちょっと背負ってみますか?」
梅田「ありがとうございます、ちょっと背負ってみます」

さっそく僕も背負わせていただいた。何か感想を言わねば。

梅田「あ、確かに背負いやすい、というか安定した感じがします」
店員さん「いや、それは細長いバッグですから、どちらかというと不安定なんです。ま、今は重い荷物を入れてないから背負いやすいですが」
梅田「すみません、間違えました」

最初から一生懸命話を聞いていたのにさっそく勘違いしてしまった。山登りまでの道は遠い。このままでは山登りに参加しても僕だけ置いてけぼりをくらいそうである。

 

Lesson 2 出るは出るは便利グッズの数々。

店員さん「これは登山グッズというより防災グッズなんですが、かなり売れています。電気の供給できない場所でも携帯電話の充電ができますからね」

梅田「え!! それはすごい」


手まわし充電たまご。手でレバーをまわすだけで携帯電話に蓄電できるすぐれもの

携帯用浄水器。浄水できる。
写真左、「飲む酸素」。
写真中央、「食べる酸素」。

いざというときにコンセントや電池がなくても携帯電話に充電できる「手まわし充電たまご」。いざというときのための防災グッズというよりも日々の暮らしそのものにも役立ちそうな便利グッズである。

店員さん「あとこれなんて人気ありますね、携帯用浄水器。浄水できるんですよ」
梅田「え? どんな水でも浄水できるんですか?」
店員さん「いやいや、さすがに限りがあります。目安としては、魚が生きている池の水やプールの水などは浄水できますよ。さすがに魚が生息できないような池の水は浄水しても飲めない可能性が高いです」

しかしある程度の水がこんな簡単に浄水できるとはすばらしい。災害や遭難のときには役立ちそうだ。さらにこうやって浄水させておいた水を長持ちさせるために除菌剤(別売り)を買うと飲み水を長持ちさせることができるらしい。

 

飲んだり、食べたり

梅田「この飲む酸素ってなんですか?」
店員さん「これはまあサプリメント系ドリンクの一種なんですが、疲労に効果があるようですよ。登山で疲れたときには。山は酸素も薄いですからね」
梅田「なるほど。どんな味がするんでしょう?」
店員さん「無味無臭だと聞きましたよ」

気になる。気になるぞ、飲む酸素。同じ売り場には食べる酸素なるものも置いてあった。酸素を飲んだり食べたり。酸素という普段はあたりまえのように供給しているものが、山に入るととたんにままならなくなるという事実を思い知らせてくれているようだ(大げさ)

さらにハチやムカデなど毒気のある虫に刺された傷跡を解毒してくれるもの、寝袋だけでは寒い時用の寝袋用シーツなどありとあらゆるものが所狭しと売り場に並んでいた。

 

便利そうなグッズの数々。

エクストラクター、虫さされを解毒。
寝袋用のシーツ。
山岳グルメシリーズ。乾燥食品。山の上で食べたらうまそうだ。
レス球灯。携帯電話の充電器と同じく、電池やコンセントなしで動く。

 

手まわしラジオ。くるくる回す。楽しい。

手まわしラジオ 体感

店員さん「じゃあこの手まわし充電ラジオ、体感してみます?」
梅田「やってみます」

くるくるとレバーを回すと充電が始まる。1分半の回転で20分ラジオが聴けるらしい。

梅田「(回しながら)もう1分半ですか?」
店員さん「まだ回し始めたばっかりじゃないですか」
梅田「結構筋肉使いますね。」
店員さん「まあ電気を起こすわけですからね。それなりの運動量が必要でしょう」
梅田「でもなんだか楽しくなってきました」
店員さん「もういいんじゃないですか? スイッチを入れてみてください」

チャーンチャーンと、ラジオから曲が流れる。おー、と自分で充電しておきながら驚いた。そうか、これは自分で発電した音なのか、と思うとなんだか不思議な印象だった。

 

鈴。音に反応して熊が逃げる。

もしも熊に襲われたら

店員さん「この商品なんか面白いでしょ。この鈴を鞄かズボンかどこかにつけておいて、チリンチリン〜と音を鳴らせば熊は寄りつかないようになるんです。」
梅田「何で寄りつかないんですか?」
店員さん「熊は意外に賢くて、鈴の音がすれば人間がl来たな、と分かるみたいなんですよ」
梅田「なるほど」

もし万が一熊に出くわしたら死んだふりしたほうがよいのですか? と質問したら苦笑されてしまった。熊に襲われたときの絶対的な対処法なんて存在しないようだ。大切なのは事前に熊と人間が出会ってしまう機会をなくすことだということらしい。

 

Lesson 3 山登り上級者編(ロッククライミング)

いよいよここからは上級者編。主にロッククライミングの人用のグッズを紹介させていただきます。ロッククライミングは山登りでももっとも危険なもの。命を落とさないためにも事前に勉強しましょう。(すっかり先生気分になっている)


ロープだけでも多種多様

これらのザイル(ロープ)が世界基準を満たしているもの

手に持っているものはアイスバイルと呼ばれるもの。その名の通り氷山等に突き刺して登っていく。いやはや。

そのロープ、世界基準につき。

店員さん「命を預けることになるザイル(ロープ)は強度の世界基準が決まっています」
梅田「世界基準ですか」
店員さん「世界基準のロープは2.7トンもの重力に耐えうることができます」
梅田「2.7トンというと、想像もできませんね」
店員さん「80キロの人がビルの10階から飛びおりた衝撃ぐらいですよ」
梅田「へー、じゃあロープがちぎれることなんてなさそうですね」
店員さん「それがそうでもなくて、やっぱりちぎれてしまうことも起こりうるわけです」
梅田「なんかうまく言えないですがすごいですね」

さらにザイルと呼ばれる命綱用のロープは、触っただけではわからないがすこしだけ伸び縮みできるようになっているらしい。そのほうが力が分散して急に落ちたときショックを吸収してくれるそうである。

アイスバイルと呼ばれる、氷山に突き刺してのぼっていくためのクライミンググッズも実際に使わせていただいた。

梅田「何がすごいって、こういった道具を考えた人がすごいですね。だって、どうしたら氷山を人力でのぼっていけるかどうか考えたわけでしょう? それってすごい勇気ですよ。正直、氷山をのぼることなんてあきらめろよ、とか思っちゃう。だって恐いもん。これで氷山のぼるの」
店員さん「ええ。私の知る限りでは19世紀後半になって山登りのグッズは進化、というか道具の革新が行われたようです。確かに先代の知恵のおかげでまだそれでも安全なロッククライミングがあるわけですからね。それ以前はいろいろと大変だったと思います」

何一つ分かってない僕らに丁寧にいろいろ教えてくださいました。店員さんに感謝します。

知らないことを知ることは楽しい。今日の感想はそれにつきます。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥なんていいますが、勇気をもってぐいぐい初歩的な質問をしたおかげで本当にいろいろと一から教えていただきました。おかげで登山グッズにはかなり明るくなりました。そして、さまざまな道具の数々は人類の山へのあこがれと警戒心が生んだ歴史なんだなー、とありとあらゆるグッズを眺めながら考えさせられました。

ちなみに冒頭の謎のグッズはスキー板をバッグのサイドにかけるための道具だそうです。聞いてみないと分からないですね。


 

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