見てきて欲しい場所があります。京都、清水寺への参道にある瀬戸物屋さんです。
私がそこをはじめて訪れたのは、今から20年ほど前、高校の修学旅行の時でした。
清水寺に向かう参道(幅のせまい上り坂でお土産やさんなどが軒をつらねる道です)をクラスの友人たちとワイワイと歩いていたときのこと、ふと目に入った「そいつ」に猛烈に目を奪われたのです。
それは大きさ2〜30センチくらいの焼き物の人形?でした。宇宙人? 怪獣? なんかの動物? なんともえたいのしれない風体の「そいつ」は、岡本太郎とかピカソとか、そんな作風を思わせるピュアなまなざしをしておりました。
しかも「そいつ」があった場所は、ごくごくフツーの瀬戸物屋さんの店先なのです。たくさんの茶碗や皿などが並ぶ中で、あきらかに「そいつ」は異彩を放っていました。周囲に流されずに自分の道を見つけているかのように…。
「なんなんだ、アレは!」
「ブレイクなき思春期ぶり」に懊悩真っ盛りだった17歳の私は、もしかすると「そいつ」にある種の憧れとジェラシーを感じていたのかもしれません。
私は思い切って店のおばあちゃんにたずねてみました。
「すいません。この人形は……」
「ああ、それねー……。
それはー、売ることできません…」
「あの、これ、なんなんですか?」
「さてねー、なんなんでしょうねぇ……」
おばあちゃんのいわくありげなはんなり応対に、ドギマギと二の矢の言葉を探す私。しかし時は修学旅行のグループ行動中。結局タイムアウトで「そいつ」の正体はわからずじまいになってしまったのです。
時はそれから20年も流れております。東京在住の私は、以来京都を訪れることもなく、当時の倍以上もの年齢になってしまいました。
ずっと気になっています。
「そいつ」が今でもあの瀬戸物屋の店先で、自分の信じる道をピュアなまなざしで見つめているのか……。
ちょっと見てきていただければ幸いです。 |