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甘栗食べくらべ
 

そっと銀紙を開くと、真っ黒な物体があらわれた。変わった匂いが鼻を突く。だまりこむ私たち。
……なんでこんなことになったんだっけ。

9月末のある夕方。私は人んちの庭先に座って、バーベキューセットの火をながめていた。都内某所、お庭のある一戸建て。古い木造日本家屋で、おばあちゃん家のような、ノスタルジックなにおいがする。庭の木には、ほんのり赤いザクロがなっていた。

見上げると、空にはねぐらに急ぐカラスが大量に飛んでいて、ギョーとかガーとかボゲーとか叫んでいた。

(text by 大塚幸代
これはなんでしょう。


バナナだったんです


イモ掘りざせつ

今月のデイリーポータルのテーマは「狩」である。

私は最初「イモを掘りたい」と考えた。思えば幼稚園以来、掘っていない。「あの、土をさわる感覚が味わいたい」「そんで落ち葉を集めて、焼きイモがつくりたい」「焼きイモだけだとつまらないので、銀紙にいろんなものを巻いて、『闇焼き』にしたい」と思ったのだ。
「じゃあ、そうしましょう」ということになり、都内でむやみに焚き火は出来ないので、ニフティ社員のIさんのご好意で、お宅の庭をお借りすることになった。

で、私は約束の日までに、イモを掘ろうと調べた。しかしイモ掘りは、どうも団体での受け付けがほとんどであった。

もっとちゃんと調べればあったのかもしれないが、焼きイモ決行日に間に合わず挫折した。つまり、ハナから目的と手段をズラしたのは私自身だ。すみません。


焼こうとしているものいちらん。調子のりすぎ。

おいしくなーれ、おいしくなーれ(たぶんむり)

▲平日の夕方、ひとんちで焼く
何を焼く?

ヤバい、せめて珍しいイモを買おうと、高級食材屋「クイーンズ・シェフ」へ行った。
でも紅イモくらいしかなかった。イモ産地、埼玉・川越で青春を過ごした私にとっては、ショックであった。
「東京ってイモ偏差値低い!!」とわけのわからない怒りにまかせて、ウインナーとか、鳥のモモとか、キノコとか、めちゃくちゃに買ってしまった。

戦後の買い出しのように、リュックに肉野菜をいっぱいつめて、ニフティの担当編集のHさんと、ほぼ初対面のIさん宅へ向かう。
落ち葉掃除のための、三角巾も持っていった。イモは掘れなかったけど、落ち葉で本格派焼きイモはできるぞ!と思いながら、待ち合わせ場所の駅前の吉野屋で待っていると………。
しとしと雨が降ってきたのだ。
落ち葉、絶望的。

バーベキューセットを地面に置いて

Iさん宅には、「知人がビンゴ大会で当たったやつを借りっぱなし、のバーベキューセット」があった。雨のかからない軒下で、炭を着火する。人の家の、勝手のわからない台所で、いろんなものを切って銀紙に巻く。
「なんか考えてたのと全然違う気がする………」と思ったが、もう既に火は燃えていた。もう何も元には戻らない。

平日夕方、縁側で焼ける火を見つめる大人3人。ビールも飲まず、もちろんシラフだ。
「なんか、新婚家庭の、新妻のムチャな料理みたいですね」
「こんな新妻いませんよ」
「お、なんか肉の焼ける匂いがしてきましたよ……」
「美味しそう。でも同僚が仕事してるときに、肉とかイモ焼いてるっていいんですかね?」
「あ、この銀紙からは甘い香りが……リンゴかな?」
「この細長いの、絶対バナナでしょ」
なんだかんだいって、焼けてくると、楽しくなってきた。多少ヤケクソであった。

次のページから私たちが焼いて食べたもの全品を紹介します。


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