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たき火入門


点火………できるか?

火、付かず。

息でフーフー。

点火!

日も完全に落ちた。さあ点火だ。
といっても、バーベキューセットのように、着火剤は使わない。ライターのみで付ける。

枯れ木の小枝を、適当に山の形に組み合わせる。
雑誌などの燃えやすい紙を下に置き、火を付ける。
枯れ木に火が付けば、たき火の始まりだ。息をのんで、石原さんの点火を見守る。

「………」

燃え上がる紙。

そして燃え尽きる紙。

「なかなか木につきませんねえ」
石原さんは、持っていた「週刊文春」のページをひきちぎって、火を付ける。
「読んじゃったんですか、それ?」
「いや、読んだページだけ燃やしてるんです」
しかしなかなか火が付かない。
「すいません、最近は点火を人にまかせてるんで、久しぶりなんです」
石原さんは真剣な目付きになり、何度もトライした。
全身で火を付けている、そんなふうに見えた。紙をひねり、燃やし、くすぶる小枝に息を吹き掛け続ける。

文春、読んでないページまで燃やしてるのではないだろうか………と不安になったころ、枯れ木が赤く、ぷすぷすとケムリを出し始めた。



点火成功!

大きくなる火。

さっそくハンバーグを用意。

点火成功!

火は小枝を燃やし、炎になって、他の枝を燃やし始めた。
小さな炎を消さないように、ゆっくり枝をくべていく。
火はだんだん大きくなる。
「あ、あたたかい………」
炎を見つめながら、しばし無言で火に手をかざす。

「冬場にたき火をやってると、路上生活者が、火に当たりに来たりもしますよ。
この前は、見知らぬ外人が寄ってきたので、国際交流しました」と石原さん。
たき火には誰もが集まる。たき火に言葉はいらない。
火はきれいだ。火はあたたかい。火は見てて飽きない。

「じゃあ、せっかくだから、たき火の会の歌のテープをきいてください。僕が作詞たんです」
石原さんはラジカセをオンにした。
しゅうごうはにちぼつ〜いちじかんまえ〜(中略)われらたきびのか〜い♪
ストーンローゼスの「ゴーイングダウン」にも似た、なかなかいい曲だった。
「実はもう1曲あるんです………たき火音頭っていうのが」
焼きイモ不可の、哲学的な団体のわりには、非常に楽しそうだ。

私はごそごそと、アルミホイルとイモを準備し始めた。
イモのほかに、フランクフルト、イシイのハンバーグ、めざし、食パンなども用意しておいた。全部、アルミホイルにくるんでいく。

火が安定したところを見計らって、イモを投入していく。果たしてうまく焼けるんだろうか。


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