●どんどん馴染んでいく僕たち
校門付近に到着。 大勢の卒業生たちが記念撮影をしたり、これからどこへ行くか相談しあったりしている。 これだけ人がいれば絶対に馴染める。 写真撮影を頼まれた自信を胸に、辺りを見渡す。
「あそこの2人組のそばに行って、いかにも仲間の様に立ちますから、そこを1枚」
これはいけてる。 もう明らかに仲良し3人組。これから北の家族に行く気満々だ。 ただ、あまりにも近寄り過ぎたので 「変な人が来た」 とお互いに目配せをして、2人とも僕から離れていった。 それでもいい。多少の犠牲を払わなくては、馴染んでいる所をカメラにおさめる事は出来ない。
「じゃあ、今度は僕があそこにいる学生のそばに行きます」 林さんが1人で誰かを待っている風の学生に近寄る。
「あっ、こっちこっち」 遅れて来た仲間を迎える林さんたち。もう完全に青春の一コマだ。 卒業していく君たちに 「まずは自分の個性を理解すること」 という言葉を授けたい。
●思い出の学び舎で
校門前の撮影で気を良くして、その後も色々なシチュエーションで写真を撮ってみた。
「もう、やめましょう」 どちらからともなく、リタイヤ宣言。
校舎を後にして、駅まで戻る道すがら 「ああいう連中が、4月からは新入社員ですからねえ」 「そりゃあ、仕事なんて出来ませんよ」 いつの間にか若者批判を始めている自分に気付き、切なさが込み上げる。
「次は入学式に混ざってサークルに勧誘されるか、っていうのやりましょう」 林さんはまだまだ挑む気満々だが、僕はもういいです。