走り抜けるどころか最初の2秒で完全に自分を見失っている。どっちが上でどっちが下か?最初に頭をぶつけた衝撃で帽子がすっ飛んだ。両毛線で食べた焼そばパンが……。あっ、肘もぶつけた。手首をひねった。
それでもカメラだけは守ろうと左手を高く上げている自分がいる。自分の体よりもカメラを守る。本当に大切なものは何か?プライオリティがおかしくなっている。
ゾーブから出ると計算ドリルを持って駆け寄ってくる林さんが見える。
何でこんな目に遭った後に計算しなければいけないのか?
「どうでした?」
少し回復している林さんがドリルを解いた僕に聞いてくる。
「いや、あの、いや、焼そばパンが、いや」
林さんと同じリアクションになっている。
大体「チャレンジ・ザ・三半規管」って何だ?
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