●まずは1作目“LIFE”について
田辺君は車窓を流れる大パノラマにかぶりつきだ。 「こんな南新宿、初めてだ」とか「代々木八幡ってこういう駅だったのか」 とか言っている。 確かにホームを抜ける時の迫力は凄い。まさにリアル「電車でGO」だ。
タナベ「白線の内側までお下がりください。って心から思うな」
流れる景色に気を取られる田辺君から映画の話を聞く。
スミ「今回の新作は4つの短編のオムニバスだけど、まず1作目の“LIFE”。これはどういう思いで作ったの?」 タナベ「見てもらって分かったと思うけど、“LIFE”は台詞なし、編集なしのワンカットで構成されている」 スミ「うん。しかも9分という尺の中で1人の女性の人生70年分を描いている」 タナベ「そう。台詞なしで構成した事によってどこの国の人が見ても分る、普遍的な……」
スミ「あっ、対向車」 タナベ「えっ?どこ」 スミ「ほら」 タナベ「うぉー!運転手と挨拶交わしたくなる」 スミ「ここに座った人のほとんどが対向車の運転手に手振るだろうな」
興奮する僕たちを乗せてロマンスカーは代々木上原の駅を通過する。
スミ「ここで毎日乗り換えてるんだよなあ」 タナベ「見え方違うでしょ」 スミ「全然違う」