10万匹のヘビを見に行く
群馬県藪塚本町。東武りょうもう号を薮塚で降りた後、田園地帯を歩く。珍しく晴れた夏の日、紫外線が肌に突き刺さる。
門から入ってセンターへ続く坂道を登るあいだに、アパートや民家が普通に散在する。遠くに、宮崎駿氏のアニメに出てくるような丘陵が広がり、畑仕事しているおじさんの白いランニングが桑の木の間を見え隠れしている・・・あれ、私はどこに行くんだったっけか。
やがてヘビセンター到着。園内に点在するヘビの野外放飼場を縫って進むのだが・・・。
「はう!」
いきなり固まる取材班だ。放飼場の中に立つ木製の電信柱の上方に、ヘビの抜け殻がいくつもぶら下がる様は、全然関係ないが、なぜか犬神家の一族に出てくる池の死体を思い出すのだった。実体を見るより、それをほのめかすように抜け殻だけが存在するのはちょっと不気味だ。北風と太陽の話みたいだ。
そのうえ、放飼場を上から覗くと、何か茶色いものがほうぼうに干からびている。目が慣れてくるとそれは、無数の、マムシでした。
「!!!」
しかも生きていた。1匹1匹ランダムにうねうねしている。
これからの行程を不安にさせる展開。ヘビ好きでも、現実を見せられるとすくむ。個人的なお付き合いならいいが、集団となるとちょっとね。
「触ってみます?」と、学芸員の方が突然現れ、ヘビを一匹捕まえてきた。
うわうわ言う私たちに、詳しく解説してくれる。
「ヘビと人間、どっちがでかいですか?そう、人間ですよね。ヘビも人間をこわいのです。人間がヘビを怖がる以上にヘビは人間を怖いんですよ。またそこでヘビが人間と一緒の方向に逃げたりするから、パニックになるんです。」
いつでも一番怖いのは人間というわけさ。
見た目の印象では冷たくてぬめぬめしているのかと思ったが、触ってみたら冷たくもぬめぬめもしていない。うろこの一つ一つが規則的に組み合わさっていて、気持ちがいい。
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