75メートルの長距離糸電話を作る
東京都と神奈川県の県境を越える多摩水道橋付近。ここで川を跨いだ糸電話に挑戦する。地図で調べると川幅は約75メートル。その長さに耐える事が出来る糸電話が必要だ。
糸電話について調べると、水糸という糸が丈夫で音の伝わりもいいらしい。蛍光イエローに着色されていて見やすいという利点もある。
その他に必要なものは、紙コップ、輪ゴム、クリップ、そして物干竿だ。
川を隔てた両岸に物干竿を立て糸を横にピンと張る。この時、張りを保つために竿と糸を直接結ぶのではなく、竿と糸の間に輪ゴムを括りつけクッションとする。
東京側の竿→東京側の輪ゴム→糸(75メートル)→川崎側の輪ゴム→川崎側の竿、という繋がり。こうやって糸を張る事が出来たら、紙コップに50センチ程の糸を繋いだものを両岸に張った糸から引き込む様に結んで長距離糸電話が完成する。
川の両岸で糸が緩まない様にピンと張った状態を保つ事。
これが今回の糸電話の大きなポイントとなる。
休日の午前中、川崎側の河川敷に弊社スタッフ3名が集まった。
「これから、この川を超えて糸電話で会話したいと思う」
僕の話に真剣な面持ちで頷くスタッフ。
「僕たちデザイナーに必要なもの、それはコミュニケーション能力です。なので、今日の実験は非常に大切な業務だと考えて下さい」
今回のプロジェクトの重要性を理解したスタッフたちは、手早く糸電話の準備を始めた。
「東京側の紙コップには03、川崎側に044と入れて!!」
「はいっ!」
バーベキューグループや釣り人たちでのんびりとした雰囲気だった河原に緊張感が走る。
「いきなり川を越える前に、一度近距離で練習しよう」
5メートルほどの幅で、竿→輪ゴム→糸→輪ゴム→竿、という長距離糸電話のミニ版を作り、実験してみる。
「もしもーし」
「あっ、聞こえる!」
若干エコーがかかった様な声が紙コップの中でこだましている。
これならいける。
ミニ版で手応えを掴んだ我々は、いよいよ東京・川崎間の長距離糸電話に挑戦するが、ここで最初の難関が待ち受けている。
どうやって糸を対岸まで運ぶか?
答えはボート。ボートを漕いで対岸まで糸を運ぶ。
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