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「林さん、そんな遠くからで本ちゃんと写ってますか?」 「はいはい大丈夫ですよ」 |
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●次は京都御所に!
京都タワーをほうほうの体で立ち去った我々。次に向かったのは京都御所である。
東京に遷都されるまで歴代の天皇が暮らしていたのが京都御所。現在は公園として開放されており、ぼくのような者でも自由に散策できる。
御所の魅力を余すところなくお伝えしたいと思います。
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「 これが内御所と呼ばれる建物で…はうっ! もー、写真撮るときは言ってくださいよう」 |
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一般に開放されているといっても、市民が入れるのは周辺エリアのみ。
たとえば内御所(左写真:今でも天皇家が別荘代わりに使っている)などは、当然ながら立ち入り禁止である。
…てなウンチクを喋っていたら突然、林さんが風景を撮りはじめた。はうっ!
とっさに本を構えてファインダーに入り込む。
林さん、本が写っていない写真を撮ろうとしている……。気を引き締めなければ。
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「じゃあ今から飲みますねー。うおっつ!!」 |
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水飲み場があったので喉をうるおすことに。
「ぼくが水飲みますから撮ってください」
エロ本のイメージショットみたいな感じで本を宣伝しようと思ったのだ。
…が、蛇口をひねったとたんエライ目に遭った。いきなり猛烈な勢いで噴き出してきたのだ。うおっつ!!
林さんはかたわらで笑い転げていた。畜生。
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「これ飲むんですか!?」
「ええ、よろしくお願いします」 |
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「いい写真が撮れましたよー」と妙に嬉しそうだった林さんの表情がくもりはじめた。
「あ、さっきの写真、逆光になっちゃってました。すみません」
まあいいや、掲載しなけりゃ済む話だし。…と軽く流そうとしたら、林さんはさらに続けた。
林:「もう一度撮りなおしましょう」
名倉:「えー、もういいですよー」
林:「逆光で本が黒くつぶれてますよ」
名倉:「じゃあ今度は水量に気をつけます」
林:「さっきみたいにしてください」
名倉:「いやですよー」
林:「体張らないと本、売れませんよ」
名倉:「…分かりました」
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「本のため、本のため……」 |
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当然のように蛇口を全開にする林さん。ものすごい勢いで水が噴き出し始める。
くー、これを飲むのか!?
…いや、本のためだ。本が売れるためにはがんばらないといけないんだ。
ようし、やるぞ!!
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「うげっ!!」 |
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思い切って噴水に顔を突っ込む。
うげっ!!
激しい水流が鼻腔に直撃、頭のてっぺんまで貫くような激痛に見舞われた。
ああつらい…。宣伝とはこんなにつらいものなのか。
「はーい、撮りましたからもういいですよ」と林さんが明るい声で。
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京都にお越しの際はぜひ! |
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やっとの思いで普通に水を飲む。
ここでようやく気がついた。
「なにやってんだオレ!?」
噴水を鼻に入れたからって本が売れるのか? ひょっとしてただの阿呆ですかぼくは?
ええと、京都にお越しの際はぜひ、『一億人のプチ狂気』をお買い上げくださいませ。ゲホゲホ。
さ、早いとこ次に行きましょう!
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