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はっけんの水曜日
 
多摩川、「ザ・ガーデン」


『庭』の持ち主が来ないだろうか、と、そこに20分ほど……立って待っていた。

でも、誰も来ない。

だんだん、「恐い」という感情がわいてきてしまった。
庭をぬけて、もっと川ぞいまで歩いてみることにした。

「……一体どこなんだよ、ここは」




もうほとんど森じゃないか。




さるすべりやハイビスカスも満開だった。なぜ南国の植物がよく育っているのだろうか?

川沿いというのは、日光をさえぎる建築物がないから、気温が高いんだろうか?



光量が多すぎて、ホワイトバランスがうまくいかないのか、デジカメのシャッターがなかなかおりいほどだった。あせった。

 

よく見ると、あの『庭』のほかにも、そこらじゅうに、小さな『畑』がつくられていた。

どうも、市民農園とか、そういうものではないようだ。
ここに暮らす人が、育てているんだろう。

野菜はともかく、お花も育てていることに、少し驚いた。

「大きな満開のさるすべりの木の下」に、ぴっちりと横につけて、建てられている仮設住宅もあった。
ここの住人は花が好きなんだろうな、と思った。



もちろん、ワイルドフラワーも満開だ。夏の花は、色がどぎつくて、くらくらする。




多摩川をのぞむ。川面をみると、小さな魚の影が、たくさん見えた。

水のそばなので、常に風が吹いている。
私はそこに腰をおろして、30分ほどぼーっとしていた。
12センチくらいの、牛丼のような色をしたカニが、足下を横切っていった。

ふと見ると、橋の下の、いちばん風の通る場所に、「住人」たちが座って集まっていた。

「あの中に、『庭』の持ち主がいるんだろうか……」

ヘタレの私は、それを聞きに、彼らの中に入っていく勇気がなかった。









川沿いからひき返す。ちょっとズレた地点まで行ってみると、「国土交通省」が整理した、雑草の始末された、公園のようなスペースがひろがっていた。

どこまでも、どこまでもクローバーが生えていた。白い花も、咲いている。

なんだかもう、「世界の中心で、愛をさけぶ」の表紙みたいな景色だ。

「ここって……何かに似てる、と思ったら……なんだか天国っぽいんだ……」

私の体調はさらに悪くなっていた。
身体から汗がだらだら出ているのに、腹のあたりを触ると、ひどくつめたくなっていた。
身体が他人のものみたいだった。
でも頭の中だけは「夏」でいっぱいになっていた。

 

真夏はもうすぐ。どうしよう。


 

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