二人で、ベンチに座って、お弁当を食べた。

「誰もいないね」
「さっき、親子連れを見かけたくらいだね」
「……あのさ、さっきから『どうも何か足りない』と思ってたんだけど……」
「何？」
「エロ本が落ちてない！！」
「あー」
「下着も落ちてない。……今年アタマ、うちの実家の近所の雑木林を歩いてみたら、すっげーたくさん、ゴミとか落ちてたもん！！」
「そりゃあさあ、『トトロの森』なんだから、エロ本落ちてたらまずいでしょ」
「でも、そんなの本物の雑木林じゃない！！」
「……だって、トトロの設定って、昭和30年代でしょ？　時代劇なんだからさあ、日光江戸村みたいに、『子供も安心して連れてこれる里山』をつくっとかないと、まずいじゃない。
……それにさあ、なんたって何にもない埼玉の郊外に、『トトロ』なんて、すごい物語が降ってわいたんだからさあ！　大切にしなきゃ！」
「……じゃあアレだ、川越みたいに、大資本が入って、テーマパーク化すればいいのか」
「この里山のふもとで、カフェとグッズショップを合わせた店をやればいいんじゃない？」
「狭山茶を出して？」
「そうそう、いま流行りのお茶料理で、スローフードで」
「五穀米のカレーとかに、『トトロカレー』って名前付けて」
「グッズも、そこでしか買えない、限定品を作ればいいんだよ。そうすれば、全国の人が所沢に来てくれるよ！」
「来てくれるかなあ……」

歩いて、『トトロの森』をぬけた。途中、若いクリが落ちているのを見つけて、
「まっくろくろすけだ！」
「まっくろくろすけだ！」
と、騒いだ。

セミの抜け殻も見つけた。

●埼玉とトトロって…。

結局、ユネスコ村に戻って、『恐竜館』というアトラクション（結構面白かった）を見てから、ベンチに座って、反省会をした。