建物と建物の間には「隙間」がある。 それは左の建物と右の建物を明確に分ける境界線であり、逆にどちらにも属さないファジーな領域でもある。そんな曖昧な存在である「隙間」の中に入ってみたい。それが自分にピッタリとくるサイズの「隙間」だったら、尚更気持ちいいんじゃないだろうか。
そんな訳で、会社の近所、銀座、新橋、と自分サイズの「隙間」を求めて彷徨って来ました。
ああ、隙間にはまりたい。
(text by 住正徳)
お目当ての隙間は26.5センチ
東京は何かと建物が密集している。 かろうじて23区内、という閑静なロケーションにある僕の家だって、隣の家との距離はこんなに近い。
ほぼ1つ屋根の下、と言っても過言ではない。
お陰さまでご近所付き合いが苦手な僕でも、お隣りのFさんとはそれなりの関係を保つ事が出来ている。Fさんは毎週の様に食べ物をくれるのだ。先週も、お鍋にするといいわよ、というアドバイスと一緒に鴨肉とネギをもらった。
そんな我が家とF家の間でも「隙間」はちゃんと存在している。10センチにも満たない隙間ではあるが、その隙間によってかろうじて「うち」と「よそ」が分けられている。
そして町に目を向けると、家と家の間に、ビルとビルの間に、お店とお店の間に、隙間はそこら中に溢れている。
そんな隙間を見て思う。
あの中にすっぽりとはまりたい。
で、今回は自分にピッタリとはまる隙間を探す訳です。
お目当ての隙間の幅は26.5センチ。 僕の靴のサイズです。
この特製スケールを手に町に出て、片っ端から隙間に当てていく。