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特集


フェティッシュの火曜日
 
だんだん干物になってゆく


干物を作ることにした。アジの開きだ。

干物は干される前は生魚、つまり刺身であり、焼いても普通の焼き魚だ。干すことで、時間をかけてだんだんに干物になるわけである。では、干し上がる前、焼き魚と干物の間の物体ってどんな味がするんだろう。

ワインが寝かせれば美味しくなるように、干物も干し続ければ美味しくなるのだろうか。

今回は10匹のアジを購入、1時間づつ干し時間をずらして1時間ものから10時間もののアジの開きを制作しました。

焼き魚と干物のあいだで揺れる、空白の味エックスとは。

(text by 古賀 及子


万能ほしかご、千一夜

豆アジ17匹で420円をゲット

こんなふうに作れたらいいなー

10時間分、10匹

開き作業完了

干物グッズを求めて

干物作りは初めてだ。どうやって干せばいいんだろう。海辺にずらーっと開いたアジが斜めに立てかけられた網の上で干されている風景をNHKのナレーションだけの旅番組なんかで見たことがある。うちでやるとしたら、網戸を外して代用するればいいか? うーん。

調べてみると家庭で干す場合はほしかごを使うと良いらしいことが分かった。ほしかご。始めて聞く単語だ。どこで買えばいいか分からず、しかし、必ずここにならあるだろうという確信の元、東急ハンズへ。

料理グッズのコーナーはバレンタインシーズンの関係でそこらじゅうハートだらけだった。手作りチョコ用品を物色する女子の波をかき分けて探せ、干物を干す網。

結局見あたらず、店員さんに聞くとほしあみは料理コーナーではなく、アウトドアコーナーにあるとのこと。アウトドア? 干物作りってアウトドア行為なのか!

そうして見つけたほしかご、商品名「千一夜」である。手作りチョコと張るぐらいロマンチックな名前じゃないですか。それにしてもやっぱり売ってた東急ハンズ。さすが。


結局インドアです

アウトドアだと言われると勢い河原で釣りから始めたい気にもなるのだが、今回はあくまで干すこと、そして食べることに集中したい。

魚屋さんで新鮮なアジも仕入れた。大抵干物にするのは真アジという中位のサイズのアジらしいのだが、いかんせんたくさん作るため、使うのは豆アジという小さめのものを選んだ。

10匹分いっぺんに干し、1時間ごとに1匹取り込んで干し時間1時間〜10時間の干物を作る目論見だ。

まずは、わたを取って身を開く。焼き魚なんかだと私は苦いわたの部分が好きなのだが、干物にする場合は生臭さや腐敗の原因になるために徹底的に取り除く。

「生き物ってのはだいたい内臓から腐るのよ。ライオンだって獲物は内臓から食べるでしょ?」
と、隣で見ていた母が教えてくれた。いや、食べるでしょ? って言われてもライオンの食事のマナーには明るくないのだが、そのリアルさに納得。

買ったアジ17匹(7匹余分に買っておいた)を一気に開いたのだが、開いてみて思ったのは、アジは口の先端の部分が輪になっていて切りづらいということだった。この先誰にも披露できそうにない豆知識、せっかくなのでここに書いておきます。

さて、開いたら漬け汁に漬ける。漬け汁のレシピは本やインターネットでの情報を参考にして塩と酒とみりんとだし醤油で適当に作った。干物の作り方、調べてみるとどの作り方を見ても違う方法が書いてある。漬け時間や干し時間も本によってさまざま。基本的には、「塩水に漬けて乾くまで干す」ぐらいのゆるいテンションで大丈夫らしい。

漬けあがるとようやく本番、干しの作業へ。例のほしあみ「千一夜」いっぱいにアジを並べ、ベランダにセッティング。よーし! 干され! アジ!

いかにも実家的なバットでつけ込み
ベランダで干し作業スタート!


 

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