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はっけんの水曜日
 
なりきりアーティスト写真!?

わりと長いことライターをやっているので、いろんな人にインタビューしたことがあるのだけれど、芸能人やミュージシャンと個人的な知り合いになることなんて、全くなかった。
絶世の美女ライターや、死ぬほど面白いキャラクターのライターなら、可愛がってもらったりすんのかなあ、なんて想像はした。でも私はインタビューがあまり上手でもない、地味なライターだ。
アーティストたちとの接点は、短く限られた取材時間だけ。だから、取材される側って本当はどんな気持ちなのかなあ、と長年ナゾに思ってた。

先日、たまたま好きなミュージシャンと長くお話できる機会があり、思いきって訊いてみた。
「取材されたインタビュアーの顔なんて、覚えてないですよね?」
「うーん、すごく有名でさんざん取材される人はそうかもしれないけど、少なくとも僕は覚えてますよ」
「あ、そうですか?……あと、インタビューって……例えば30分で自分の何が喋れるんだろう、とか疑問に思っちゃわないですか?」
「会話はその場の記録だから、それはそれで仕方ないですよ」
「え? そうか、そうですね……じゃあ写真撮られるのってどんな感じですか? 例えばあなたのアーティスト写真(宣伝材料として使うプロフィール写真)って、すっごいツーンとして写ってるじゃないですか」
「ツーンとしてるねえ……写真って、撮られるの、すごく難しいんですよー、笑うほうが難しい」
「そういうものなんですか?」
「そうだねえ、あのね、大塚さんもいっぺん撮ってもらうといいですよ、アーティスト写真」
「それは……この先の人生で、そんな機会はないでしょうねえ」

その直後、また、たまたま、私が死んだふりをした「どこでもダイイン!」という企画にウケて、連絡をくれたプロカメラマンの人にお逢いする機会があった。
そのとき、
「……というわけで、私、アーティスト写真って撮られてみたいんですよねえ、素人がどれだけプロっぽく写れるかも、興味あるんですよ」とポロッとお話したら、
「面白いですねえ、やってみましょう」ということになった。

まじかよ。

ということで「アーティスト写真(通称アー写)」を撮ってみることになりました。

(text by 大塚 幸代

●作戦開始

雑誌などでご活躍中のカメラマン・柳大輔さんと、まずは喫茶店で作戦会議。
「あのー、私だけを撮影するってことじゃなくて、普通の人をアーティストっぽく撮影してみたいんですよね」
「あ、それいいですね。ついでにインタビューとかもしちゃったらどうですか?」
「あはは、それもいいですね。……うーん、私の知り合いの中で、芸能人っぽい顔の人っていたかなあ……」

考えてまず、ぱっと頭に浮かんだのは、「スープ焼そば紀行〜知らない人と温泉1泊編」で同行してくれた、キレイな顔の青年・坂本くん。20歳。あのコはいける。きっと若手の俳優兼歌手、みたいに撮影出来るに違いない。

次に浮かんだのは、堂本さんという、知人の30代男性。サラリーマンだけれど、元ハイレグジーザスの河原雅彦(ともさかりえさんの旦那さん)に似ていて、役者っぽいお顔をした人だ。ちなみに喋りもそこらへんの芸人より上手い。

二人に連絡をすると、あっさり快諾してくれた。

「で、私はバンドをやりたいんですよ」
「バンド?」
「ギャルバンドですね、そのギターかベースをやりたいですね……」
「そうですね、何人か並んで撮ると、いかにもな写真が撮れそうですねえ。僕、フェンダーのギター持ってるんで、貸しますよ」
「まじすか、やった!」

私は翌日、別件の打ち合わせで同席したデイリーライター・古賀さんの顔をみて、
「そうだ、彼女がボーカルになるといいなあ、ぱっちりとした目もボーカリストっぽいし! 日本中の古賀ファンのハートをがっちりキャッチだ!」と、スカウトしてしまった。 

「うわあ、面白そうですね! 撮影日までにダイエットしなくちゃ!」

彼女も快諾してくれた。

また、同じくデイリーライターであり、友人のタカセさんに声をかけてみると、「……じゃー私はドラム」との返事が。
モデルはそろった。

 

●撮影準備!

柳さんと写真の仕上がりの雰囲気について打ち合わせる。
新宿紀伊國屋書店2階の雑誌コーナーで、パラパラと本をながめる。
「……こういう作った写真は、かえってアマチュアっぽくなりますよね」
「プリクラ写真みたいになっちゃいますよね」
ビジュアル系バンドの雑誌の写真……は、だめだ。
「やっぱロッキング・オン社の雑誌っぽいほうがいいですかねえ」
「ですかねえ、ちょっとアート寄りで、空気感重視で」
「じゃあこっち方面で」
「撮影場所、とうしましょうか?」
「スタジオじゃなくて、っていうか予算の都合上、スタジオなんか使えないんですけど……いかにも気合い一発撮影の、ロケに使われがちな場所がいいですねえ。下北沢の、長い歩道橋のところとか、信濃町のほうの、中央線高架下のトンネルとか」
「いいですね。あ、中目黒あたりはどうですか? 目黒川ぞいとか」
「お洒落カフェの前とかでも撮れますね」
「品川の、埠頭のあたりなんかもいいですね……。僕、ロケハン(ロケーションハンティング、撮影場所の下見)しておきますよ!」

……そんなこんなで、モロモロが決まった。

以下、関係者に配付したスケジュール表だ。

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お世話になります、大塚です。
撮影日のスケジュール、決めましたのでお知らせいたします。

12時 中目黒駅集合
坂本さんの撮影
設定:アーティスト兼俳優(福山マサハルを若くしたような感じ)
*できるだけかわいく撮影します。
川沿い、服屋の店の前、公園などで撮影
撮影後、15〜20分ほどの軽いインタビュー

13時30分 中目黒駅
堂本さん合流
設定:劇団主宰者
*できるだけかしこそうに撮影します。
カフェ、ビルの階段、公園などで撮影
撮影後、15〜20分ほどの軽いインタビュー

15時 中目黒でタカセさん、古賀さんと合流。
カメラマンさんの車で移動後、信濃町のほうにある地下道で撮影、
そのあとまた移動して埠頭のほうで撮影、 夕暮れをバックに撮影。
設定:某有名ミュージシャンの愛人とその妻、その妻の前妻の連れ子が音楽的に意気投合して生まれたバンド。音はシャッグスとスリッツの間。
*できるだけカッコよく撮ってもらいます

ご自分の撮影時間のみに来ていただいてもかまいませんし、最初から撮影自体を手伝っていただけるのも嬉しい感じです。

衣装ですが、やってもらえる方がみつからなかったので、できるだけテーマにそった私服を着てきてください…。すみません。

天気は大丈夫そうなんですけど、防寒だけはしっかりしてきてください。
とくにバンドのほうは撮影が夕刻になると思いますので冷え込むこと必至……ご注意ください。

またメイク係として、デイリーライターの佐倉さんがお手伝いに来てくれることになりました。

では当日、よろしくお願いします。
何かあったら大塚の携帯までご連絡ください。
090-****-****


 

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