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土曜ワイド工場
 
お茶を飲む

昔、お茶は大変貴重なものだった。
「万病を防ぐ妙薬」とか言われていた。

三国志の最初の方でも、
「一生に一度は」
という母の望みをかなえる為、劉備玄徳は貧しい生活の中から長年かけて貯めたお金を持って、お茶を買いに行っている。

それに対し、今のお茶の扱われっぷりはどうだろう? 昔の人が今のお茶を見たら、羨ましく思うだろうか?嘆くだろうか?

昔の人になったつもりでお茶を飲んでみたい。

(Text by T・斎藤

昔の人に申し訳ない感じがする


万病を防ぐ妙薬

先日、親戚からお茶が届いた。

「うほっ!!やったー!お茶だっ!! 」

などとハシャぐことは当然なく、
「あ、お茶か。」
ぐらいの気持ちで箱を開けた。
説明書きが入っていたので、なにげなく読み始めた。
「昔、お茶は万病を防ぐ妙薬だった云々…」

そうだ、お茶は昔とても貴重な品だったのである。

三国志では

貴重であるがゆえ、昔の人はとても有り難がってお茶を飲んだ。三国志の中で、お母さんの為に貯金をはたいて茶を購入してきた劉備玄徳は、こんなふうにそれを飲もうとしている。

明日の朝はうんと早起きしましょう。そしておっ母さんは裏の桃園に莚をお敷きなさい。私は驢に乗って、ここから四里ほど先の鶏村まで行くと、とてもいい清水の湧いている所がありますから、番人に頼んでひと桶清水を汲んできます。」 ―吉川英治「三国志」より

すばらしい扱いぶりだ。
お茶を飲むために、わざわざ清水を汲みに行くのである。
そして桃園にむしろを敷いて親子で茶を楽しむ。

現在のお茶の立場

それに対して、今のお茶の扱われっぷりときたら、どうだろうか?


お茶出しマシーン

お茶と言えば、無料なのが当たり前。
それも機械が入れる。お茶出しマシンで自分で勝手に入れて勝手に飲め、と。


たまにスゴイお茶が出ることも

選択するボタンによって、水も出ればお湯も出る。
時々、「これお茶?お湯?」ってくらい薄いお茶が出てきたり、「青汁?」ってくらい濁った濃いお茶が出てきたりすることもあるが、無料だからそう文句も言えない。


120円で容器ごと

自動販売機では、たった120円であたたかいお茶が容器ごと買える。それもこんな便利な機械が日本中いたるところに設置されている。

便利だが、これでいいのか?

劉備の母はお茶を飲む直前、こうコメントしている。

黄金の水、洛陽のお茶、それにお前の孝心。王侯の母に生まれてもこんないい思いめぐり会えないだろうよ。

今、お茶を飲むのにこれだけの感想を言える人がいるだろうか? 我々現代人は、ひょっとして何か間違った方向に進んでしまったんではなかろうか?

たしかめたい

昔の人が感じたお茶への思いを少しでも感じてみたいと思った。昔の人になったつもりでお茶を飲む。

精神を集中させ、私は水を汲みに行くことにした。



 

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