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特集


チャレンジの日曜日
 
お墓の「名刺受け」を鑑賞する
こういうやつ。知ってますか?
お墓に「名刺受け」というものがあるのをご存知だろうか。

墓石のそばにじっとたたずみ、お参りに来た方の名詞をお預かりするハードウェアである。

おそらく、ご家族がお参りに来ていただいた方を把握するためのものであろう、この「名刺受け」。よく見てみると墓地という空間のなかで実に思い思いの造形で活き活きと存在している。遺族と墓参者の心の架け橋「名刺受け」。今回は、名刺受け鑑賞の第一人者とともに、その造形美を味わっていこうと思う。

(text by 大山 顕



■「名刺受け」収集鑑賞の第一人者

ぼくが言うのもなんだが、世の中には思いもよらないものを収集鑑賞してしまう人がいる。ぼくにとってそういうコレクターと会う楽しみは「それがあったか!」という自らの不明をかみ締める点にある。ガスタンクのwebサイト作ってる人とかね。

そんななかでも「名刺受け収集鑑賞」は一味違う。基本的には誰でも訪れることが出来る場所にあるものとはいえ、そこは墓地である。そこで何かを収集しようとは。一言で言ってバチ当たりである。

今回はそんなバチ当たりな名刺受け収集鑑賞の第一人者、山田浩市さんとともに東京の谷中墓地を訪れ、その見所解説をお願いした。

ぼくはこれまでこの「デイリーポータルZ」の取材のためにさまざまな場所を訪れ写真に収めてきたが、今回はいよいよタブーな領域へ進出である。これまでの取材がまったく問題ないものかどうかといわれるとアレですが、今回は特に。

■早春、墓地へ

山田浩市さんの本職はエディトリアルデザイン。名刺受け収集の実績はwebサイト「山田屋意匠堂」で見ることが出来る。実に200以上の名刺受けをその造形タイプで分類している。すごい。バチ当たり。


待ち合わせて墓地へ。はやる心、高まる期待。(左が山田さん、右が筆者)


ようやく春めいてきた頃、初対面の男二人が縁もゆかりもない墓地へと向かう。初めて会った二人が最初に行た場所が墓地。これが通常の男女の最初のデートだったなら大問題だ。ラブホテルに連れ込むよりタチが悪いと言えるだろう。ま、男二人でも問題ありそうですが。

今回鑑賞フィールドとしたのは山田さんの「庭」とも言える谷中墓地。駅前の階段を昇ると、そこはもうすぐ墓地。埋葬されている人たちにとってはもちろん、名刺受け収集鑑賞家にとってもパラダイスである。みなさんもぜひ気軽にお立ち寄りください。


階段を登るとすぐに墓地。墓地だというのに花見客でにぎわっている




墓石の隣で花見。楽しそう。われわれの不謹慎さも相対化されるか。




精通した谷中墓地の解説をする山田さん




大きく都が運営するエリアと寛永寺が運営する墓地とに分かれる谷中霊園



■名刺受け鑑賞スタート

いよいよ、お墓にお邪魔し、名刺受けの鑑賞を始める。失礼します。


お墓エリアへと足を踏み入れる。おじゃまします。




広大な谷中墓地のほとんどの「名刺受け」を把握している山田さん。見落としやすい作品を親切に案内。心強い。しかしこういう心強さって、どうなんだろうか。


おそらくほとんどの方がこの「名刺受け」という存在に気がついていないと思う。メインの墓石の手前に慎ましやかに立っている場合が多い。尾はカセットの中では見落としやすいハードウェアだろう。時にはお墓スペースを囲む柱が名刺受けを兼ねていたりしており、名刺受け素人には探しい。しかし、ぼくには山田さんという心強い味方がいる。


見落としがちな門柱タイプ。よく見ると名刺を入れるスリットがあるのが分かる。




ほほう、これですか。(バチ当たり)




こちらはかわいらしい屋根がついたタイプ。山田さんのサイトでは「屋形タイプ」として分類されている。


「そもそもどうして名刺受けを収集鑑賞してみようと思ったんですか?」
「わたしはこのすぐそばに住んでいまして。この谷中墓地は飼っている犬の散歩コースなんですよ」
「犬の散歩を墓地で、ですか」
「けっこういますよ、そういう人。この谷中墓地は有名人のお墓も多くて、観光に来る人も多いし」
「カジュアルな墓地ですね」
「犬の散歩してたら気がついたんですよ。あれ?って。それ以来」

墓地を訪れることが日常であったからこそのの発見だが、だからといって誰もがそれに気づいて関心を持つわけではない。日常だからこそ見えにくいことの方が多いし。しかもそれを集めて分類するというのは誰にもできることじゃない。

ま、しなくていいと思いますけど。

■いろいろなタイプの名刺受けたち

山田さんのサイトでは名刺受けをその造形によって次のように分類し、紹介している。

●墓石タイプ
 その名の通り墓石をそのまま縮小したような石柱で、最も多く見られるタイプ
●屋形タイプ
 上部に屋根のついた装飾的なタイプ。 灯籠のような形をしたものも
●門柱タイプ
 区画を囲む外柵と一体になっていて、郵便受けのようなつくり
●その他
 上記のタイプにあてはまらないもの

今回も、この分類に沿っていくつか見ていこう。

●墓石タイプ

「お墓にあるものに対して『墓石タイプ』っていうのはどうなんでしょう」
「そうなんですけどね。ほかに言いようがなくて」


これが墓石タイプ。たしかに。他に言いようがない。




これも墓石タイプ。年季が入っていい感じだ。




これも。ちっちゃくって可愛い。ていうか、だからあんまり触るな。




だから。




上方向にセットバックした造形のもの。うれしそうだ。




十字架を戴いたクリスチャンの名刺受け。レアもの。





 

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