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特集


はっけんの水曜日
 
なまずの町で知った、なまずの秘密

「うあああああぁぁぁぁ……ウグッ」
時々ひとりで、うめいてしまうことがあります。
洗濯物をたたみながら、ヤカンでお湯を沸かしながら、ティーバッグをマグの中で上下させながら、眠る前の布団の中で天井を見ながら。
やらかしちゃったまずい記憶が、脳のアーカイブからぽろっとこぼれ落ちるとき。
あのミーティング、緊張しすぎて唇がふるえちゃったし、咳がなぜか止まらなかったし、顔がひきつって、気持ち悪い、挙動不審な人だと思われたんじゃないかなあ……とか。
あの夜中に酔っ払って出しちゃった酷いメール、返信こないし、嫌われちゃったに違いない、結構仲良しだったのに、ああ、ああ、もうだめだ……とか。
失敗のかずかずを、ぐねぐねぐねぐね考えて、泣きたくなるというよりは、もう、消えてなくなくなりたい! うわー! ぎゃー! とか、なっちゃうとき。
乗り物に乗ったり、歩いたり、したくなります。

ほんとはアルゼンチンあたりに旅に出たい。でもそういうわけにもいかないので、とにかく、ひとりの部屋からエスケープ! 

そんなわけで、当サイトでなにげなく続いている、ディスカバー埼玉シリーズ更新。
「なまずで町おこししようとしている町」へ、出かけましたよ!

(text by 大塚 幸代

吉川。
そこは、江戸川と中川にかこまれ、かつて、江戸に物資を送る拠点として栄えた町。
かつては、はたごや川魚料理屋が並んで、活気に溢れていたらしいです。
高度成長期は水質が悪化して、川魚が激減したけれども、96年の市制施行をきっかけに「なまずネタで町おこししよう!」と盛り上がって、現在に至る……のだそうです。

で、駅前のモニュメントが、これ。どーん。


金のなまず。
静かな郊外にたたずむには、あまりに豪華な、しかし住んでいる人にとっては、きっと「毎日見てるので慣れちゃった」風景。

……実は、吉川は、意外と都内からのアクセスが良い町です。
川口とか所沢とかに近い町の住民は、東京に進学・就職しても、みんな実家からあまり出ません。便利なので出る必要がないんです。そんなニートな、ベッドタウンな郊外。

だからきっと、吉川から都内に通う人も多いことでしょう。
でも、なかなか降りない町。友だちとかが住んでいない限り、あまり訪ねて行かない町。
埼玉には、そういう町がいっぱいあります(と、埼玉出身の私は思います)。


町の横に、ただ流れゆく川。

まずは、いちばん有名だというなまず料理屋「福寿家」を目指します。
ホームページには「徒歩12分、タクシーならワンメーター」とあったけれども……、テクテク、テクテク、ひとりで歩くのはちょっときつい距離でした。「チャリがあればなあ」「連れがいて、お喋りしながら歩けば楽しいかもしんないけどなあ」とか思いながら、到着。


……おあ?
小さな食堂みたいなものを勝手にイメージしていたら、店構えがまったく予想と違いました。
でかいです。ちょっとした「市民センター」くらいの大きさ。そもそも食べ物屋っぽくなくて、どっちかというと旅館風。
中をおそるおそるのぞくと……制服の店員さんがバタバタ走りまわっておりました。礼服の人々がぞろぞろ。
え? え? と思って、奥のほうをのぞくと……白無垢を着たお嫁さんが座ってました。
えー! そういう施設だったのか、ここ……。
「す、すいませんー」
忙しそうな店員さんを、無理矢理呼び止めます。
「あのう、ここ、食事とかだけって出来ないんでしょうか、予約とか、してないんですけども….…」
彼女はひどく申し訳なさそうな顔になって、
「今日は〜、ちょっと一杯で…….」
「今日は……ダメそうですね」
「本当に〜、申し訳ありません……平日とかでしたら、大丈夫なんですが……」
と言って、お店が雑誌に載った記事のコピーやらパンフレットやらを、ぱぱぱぱと束ねて、くれました。

今日大安だったのかなあ〜、とか思いながら、とぼとぼ引き返しました(ちなみに、食事可能なときは「なまず御膳1785円、なまず懐石3150円」だそうです)。
もう、なまず食べられればどこでもいいや、他にも店あるでしょ、と、なまずの看板をさがします。なまずなまず、なまずどこだ!


途中、古い玩具屋さんや、時計屋さんのショーケースをじろじろ。こういう郊外の店は「時間が止まってるー」という感じのもの多数。でも私は何が価値があるのかわからないので、眺めるだけ。

 

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