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土曜ワイド工場
 
高架下の風景を鑑賞する

■高架下鑑賞における首都高出入り口造形の是非


一石橋という橋と高架。左に行くとすぐ東京駅


さらに200メートルほど行った場所にあるのが一石橋。首都高の出入り口のひとつだ。クルマの免許を持っていない自分にとって「首都高出入り口」なんてほんと縁のないもののひとつだが、こんな形でお近づきになるとは。ここから見た高架下風景はこんな感じだ。


首都高出入り口らしい複雑な空間造形。見所は曲線美か


なかなか興味深い風景だが「高架下」という点では見劣りがする。世の中には「ジャンクションマニア」の方々もいて、こういう道路が複雑に絡み合う形に惹かれるのはぼくもよく分かるが、今回の鑑賞テーマはあくまでも「高架下」。高架下鑑賞にふさわしい沈着な心構えで臨みたい。

■3つの「トキワ橋」

 
一石橋のすぐ横にあるのが常盤橋である。じつはここから連続して3つの「トキワ橋」が並ぶ。順番に「常盤橋」「常磐橋」「新常盤橋」だ。常盤橋と新常盤橋は車通りも激しい現役バリバリの橋だが、まんなかの常磐橋はほとんど渡る人もいない。


向こうに見えるのは「常盤橋」。なかなかしぶい橋だ



常盤橋から見る高架下風景。
すこし歴史の話を。

江戸時代、日本橋界隈はは人口密度がとても高くしばしば大規模な火災に遭っている。記録によれば江戸時代264年の間に100回以上の「大火」があったといい、日本橋は10回も焼け落ちたのだとか。

で、1872年の東京大火の後おもだった木造橋が次々と石造りの近代的な橋に架け替えられていく。今は利用する人も少ない常磐橋は、この頃に架け替えられた歴史的な橋。東京に残されている御影石を使った石の橋はこの常磐橋と日本橋なのだそうだ。

古い常磐橋の欄干。かわいらしい。
徳川家光のころまでは「浅草口橋」とか「大橋」とか呼ばれていたが、「もっと気の利いた名前はないか」と言われ、とある和歌にちなんで「常磐橋」としたらしい。昔の人は風流な命名をしやがる、と思ったが、ソフトドリンクのメーカー「サンガリア」の社名が「国破れて山河あり」に由来していることを思うと似たようなもんだ、とも思う。


そんな由緒のある橋も、いまは首都高の下。この台無し感がたまらない。国やぶれて高架下あり。



橋のそばには江戸城の石垣も残っている
この常磐橋はかつて江戸城大手外郭の正門だったそうで、石垣も残っていた。

なんだか高架下鑑賞ではなく、ただの「ぶらり江戸紀行」みたいになってきたが、この歴史ある橋から見える高架下風景もなかなかだ。


開放感のある高架下風景。ちょっと物足りないかな(クリックすると大きな画像が見られます)




新常盤橋から見た高架下風景。悪くない。悪くないがやっぱり物足りない。(クリックすると大きな画像が見られます)



■神田へ


JRの高架下。味のある柱が林立する、これもなかなかぐっとくる空間だ(クリックすると大きな画像が見られます)


新常盤橋のすぐ横はJRが走っていて、お堀に沿ってそれをくぐる。首都高ではないのだが、このJRの高架下もなかなかだ。有楽町から東京までの間にはこういう古い感じの高架下がしばしば見られる。

そしてその先最初の橋が鎌倉橋という橋。この橋が提供する高架下空間がすてきなのだ。

消失点へ向かって伸びる直線モティーフが活きる高架下造形。すてきだ。(クリックすると大きな画像が見られます)
やはり高架下はこうでなくては、と思わせるすばらしい作品。まっすぐに伸び行く裏側テクスチャと、規則正しくならんだ柱。堀の水面と高架の間の間隔も絶妙である。

よく見ると先のほうで首都高から降りる道路が両脇から対称に落ちていて、それがまたぐっと来る。今回の鑑賞ツアーの中でも一二を争う造形だ。人に知られぬ隠れた名所発見。うれしい。

名前の由来は、江戸城築城の時に鎌倉から運んできた石の荷揚げがここら辺で行われたため、ここ一帯を「鎌倉河岸」と呼んだことにあるらしい。なんで「鎌倉」と思ったらそういうことか。ここら辺の地名はたいてい江戸がらみだな、さすがに。

そして、この次にあるのが神田橋。

ここも首都高出入り口なので付近はごちゃごちゃしている。欄干も窮屈な感じ
この神田橋、もともと将軍が上野寛永寺に参詣に行くための御成道だったとか。で、当時は警備が最も厳重な場所であったらしいが、今は高架下鑑賞家の出入りも自由だ。

また、そういう要所であったため当時はもとより明治時代から戦後までこの一帯には建築物がほとんどなにもなかったのだという。今からは想像もつかない。


神田橋から鑑賞できる高架下空間。好き嫌いの分かれる空間造形だ(クリックすると大きな画像が見られます)




ここからはお堀が蛇行し始める。首都高もそれにあわせてワインディング。



 

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