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はっけんの水曜日
 
宮崎くんの、書いたもの

先週、2月9日の朝、ライターの宮崎晋平くんが、心臓発作のため亡くなりました。

近々に飲む約束をしてました。
実は前日、彼から携帯に着信履歴があったのにスルーしちゃってて、「しょーがないなーコールバックすっかなー」なんて思っていたところの、訃報でした。
……へ?
何か、悪い冗談だよねえ。
まじで。
っていうか、まじで?

彼のことは、私が「クイック・ジャパン」(大田出版刊)というカルチャー雑誌の編集部にいたころから知っていました。
当時、19歳の最年少ライターで。
猫背で、目だけ獰猛な小動物みたいで、ちょっと鋭くて、でもやっぱりケンカ弱そうで。まあ今と同じだったんですけれど。
彼がこのサイト、「デイリーポータルZ」で執筆するようになってからは、「大塚さんは先輩ですよ! 同じ道、たどってるじゃないすか!」と逢うたびに、言われてまして。
恥ずかしくて、「オメーの先輩なんかじゃないよ! そう言うの、キモいからヤメてよー!」とかこたえてたんですけど。
そんな彼が、唐突にいなくなっちゃったんです。
なんで。
っていうか、なんで?

でも、事実で。

(text by 大塚 幸代

大塚:そんなわけでですね、びっくりしちゃって、気持ちの整理がつかないなあっていうのがあって……今回はとりあえず、デイリーでの宮崎くんの記事を、webマスターの林さんと、読み返していきたいと思うんですけども。
林:はい。
大塚:うーん、妙に誉めたりして、いかにもな追悼記事を書いたら、宮崎くんは嬉しくないんじゃないかなあと思うので。
林:持ち上げず、作品を追っていきましょう。
大塚:突っ込みつつ、紹介していきましょう。ええと、最初に書いた記事って、どれですかね?
林:「
見る人を見る」ですね。


大塚:しょっぱなからコレかー。ところで宮崎くん、何でデイリーに書くことになったんですっけ?
林:普通に応募してきたんですよね。
大塚:で、最初に出してきた企画がコレ?
林:これか、「噴水ってすばらしい」という企画で。
大塚:ふ……噴水??
林:えーとですね、いま当時の企画書を読み返してみてるんですけど……「噴水は差別なく全ての人を楽しませてくれる」と書いてありますね。具体的には、管理事務所にインタビューしたいと。
大塚:へ、へえ……で、なんで噴水はボツになったんですか?
林:噴水も良かったんですが、打ち合わせしたら「見る人を見る」のほうがやりたそうだったし、それがいちばんワケが分からないなーと思ったので。
大塚:ワケ分かんないですよねえ…。
林:出来たものを見ても、やっぱり「わかんないなー」と思ったんですけど、でもいい原稿だと思いましたよ。
大塚:んで、そのあと取材したのが「酔拳deコテンパン」ですね。この写真…、全部、ほんっとーに、弱そうですね。

林:これ、取材同行してて、笑いすぎて腹筋が痛くなりました。
大塚:これほど弱そうな写真は、なかなか撮れないですよ。
林:この原稿、まとめが好きなんです。
世の中には酔拳をする人としない人の2種類が存在し、筆者はたまたま後者であったにすぎないということである
大塚:うわ、テキトーだ。
林:そう、これ超テキトーだし、超くやしまぎれ。
大塚:宮崎くんて、たまに「あれ? これって何も言ってなくない?」みたいなの、書きますよね。
林:文体が硬いからごまかされますけど、意図的ですよね。
大塚:読んでて「なんじゃこりゃ」「これは、笑っていいのかな?」とか、悩んだりして、分からないときが時々あったなあ。なんというか、きちんとやる時と、テキトーな時の差が激しいんですよね。
取材モノ、ちゃんとやるじゃないですか。デイリーのライターの中ではいちばん、きちんと取材してた印象があるんですけどね。

 

■謎の「トゥクトゥクバーン」

大塚:林さん、いちばん好きな記事って、どれすか。
林:えーと……「お守りと半吉と力石と釣り」、かな。
大塚:ああ、おみくじひいて、最後に釣りをする話。

冒頭に「トゥクトゥクバーン」という、謎のフレーズが出てくるんですよね、何なんでしたっけ、これ。
林:全体に富永一郎の文体を真似ているのですが、トゥクトゥクバーンは「で、パラダイス・ガラージというミュージシャンのイントロで、『トゥクトゥクバーン』っていうのがあるんです」って、説明されて。
大塚:……デイリー読者のみなさん、誰もわからないと思いますよ、そんな説明。
林:で、なぜ今、富永一郎なのかと訊いたら「オールドスクール風なんです」とか、テキトーなこと言ってた。
大塚:思いつきじゃないですかねえ。
林:実は、この前週の原稿も全編を富永文体で書いてきたんですよ。それはボツにして、全部書き直してもらったんですよ。
大塚:あ、それは噂でききました。
林:で、翌週またきたので、もういいやと思って載せた
大塚:林さんもテキトーだ……。
林:いやあ、だんだん僕も面白くなってきてしまって。
その時、ちょうど住さんと打ち合わせをしていたんですけど、宮崎くんのその原稿見てもらったら、住さんは大絶賛で。もう、涙流して笑ってた。
大塚:「トゥクトゥクバーン」に?
林:トゥクトゥクバーンに。
大塚:……これ、「マンガを売りに」で富永一郎だけ売れなかったから、読み返したらはまった、ってことなんですかね?

林:そこは聞いてないのでわかんないけど、そうなのかな?

 

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