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コネタ


ウイルスの恐怖展 連動企画
 
鏡餅メタモルフォーゼ
湯島「つる瀬」にて

暮れも押し迫った12月のある日のこと。和菓子屋の店先で、鏡餅が売られているのを見た。

「そうか、鏡餅って和菓子屋で扱う商品でもあるんだ」となぜか感心して、そのあまりの可愛いフォルムに思わず購入してしまった。
一人暮らしを始めて16年。実は餅と名の付くものを買うのは初めてだ。正直、餅に興味がなかった。

…買ったはいいが、やはりカビてしまうんだろうか。それはそれで惜しい話だが、ここはカビを消極的に捉えず、積極的に受け入れようではないか。そうだ、カビ観察日記を付けよう。

高瀬 克子

サイズが「寸」だもの

そういえば、実家が和菓子屋だったという作家が書いたエッセイに「昔は、暮れともなると餅を売るので忙しかった」という記述があったのを思い出した。

今はみんな、スーパーで買うんだろうか。あとは餅って、どこで売ってるんだ?(興味なくてすみません)


なんて可愛らしいんでしょう
5寸はかなり、いいお値段

ちなみに1寸は約3センチ。私が購入したのは2寸のもので、計ってみたら上の段が6センチほどあった。餅の寸法は、上の段の幅で計ることを学習した冬。へえ。

 

飾りつけてみた。または1日目

なにぶん一人暮らしゆえ、鏡餅を乗せるようなお盆もなければ半紙もない。仕方なく、ここは丸い皿とキッチンペーパーを代用することにした。

そして、買ってから2日ほど放置しておいた鏡餅を袋から取り出してみたのだが…。密閉したままだとカビるかと思い、袋の口を開けておいたのがマズかったのか、なんとすでに餅にはひびが入っておりました。ショック。


ひび割れからスタートか

飾り付けるより先にカビていた! なんてことになるよりはマシだったが、それにしてもひどい。餅に関する知識がゼロということだろうか。餅は年に一回、雑煮でしか食べないから仕方ないのかもしれないが、それにしても管理が出来てなさすぎだ。

ちなみに飾り付けは全く適当。なんとなく縁起の良さげな物を乗せてみました。まぁ、気分だけでも満たされればいいんです。ええ。

 

2日目

1日経っただけなのに、ひび割れが相当進んでいる。こんな鏡餅、見たことない。特に裏側がひどいことになっている。


まるで岩肌だもの

実家の鏡餅も表面はカサカサだったが、こんな派手な亀裂は出来ていなかった。
これはあれか? 湿度の問題か?

そういえば実家では、常時ストーブの上に乗せられたヤカンが、シュンシュン湯気を吹き出していた。それに家の周りは一面の雪景色だったし、ある程度の湿度は保たれていたのだろう。

それに比べてこの部屋は、暖房がガスファンヒーターだし加湿器もないし、押入れに「水取りぞうさん」を入れたまま5年経ってもサラッサラ、という有り様だ。ある意味、乾燥地獄である。

柱に貼りつけたまま、滅多に見ることのない湿度計を見てみた。


納得の湿度40%

いまネットで調べてみた驚いた。湿度40%で乾燥注意報が出される地域もあるようですよ。
…鏡餅の敵は、カビよりも乾燥だったのかもしれない。

 

3日目

ひび割れが、さらに進んだ。


一段目、隆起
裏側なんてこの通り

これではまるで「皮をむきかけたミカン」ではないか。この状態で鎮座し続けているミカンの根性を褒めたい。

 

4〜7日目(放置)

部屋の鏡餅を放置して、実家に帰ることにした。

当初、鏡餅を観察しようと決めた時は「実家から戻ってみたら、放置していた鏡餅がモフモフするくらいカビてたりして!」なんていう想像をしていたのであるが、今では「ミカンが滑落していないか」だけが心配だ。

心配してみても始まらない。ここは秋田。雪んこの国だ。


実家の鏡餅 on テレビ

多少表面がカサついてはいるものの、派手なひび割れは見られない。
実家では、居間のほかに、台所と床の間にも鏡餅が置かれている。湯気がシュンシュン出ている環境ではないが、どこも餅が崩落する心配はないようだ。

やはり、私の部屋が異常なのだろうか。

 

8日目(帰京)

東京砂漠に戻ってまいりました。
心配していたミカンの滑落はなかったものの、シルエットがだいぶおかしなことになっている。


鏡餅版、ピサの斜塔

ひび割れが表面だけに留まらず、内部にまで浸透しているようで、一段目の餅が持ち上げられている。それに吸い付くようにへばり付くミカン。がんばれ、ミカン。

…当初の目的から、だいぶ遠くに来てしまった感が否めない。

 

9日目

そして、ついに山が崩れた。


岩盤崩落現場

これは一体なんだ。鏡餅界において、こんなことってあるのか? あっていいのか?

これは東京の御家庭なら、どこでも体験していることなのでしょうか。本当にわからない。ウチが特別なのか、よそも同じなのか。

そもそも東京の餅に、カビが生えるなんてことがあるのか?
心の中に「東京という街は、餅にカビさえ生えることを許さない、乾いた砂漠だった…」なんていう文句が浮かび始めた頃だった。
ふいに「二段目の上の方は、どういう変化をしているかな?」と気になり、一段目を持ち上げてみたところ…


うわー!

ここ数カ月で一番驚いたといってもいい。とにかくビックリした。
…すみません。しっかりカビてました。カビててくれました。

カビが生えたら生えたで、鏡開きまでこのままカビと共生するのかと、一気に気分が暗くなった。なんて勝手なんだろう。
それにしてもこのカビ、一体いつから生えていたのやら。

とりあえず、自分の顔が餅のように崩れ落ちる前に、加湿器を買いに行こう。

 

編集部から

餅に生えるカビは湿度に弱いみたいですが、コンピューターウイルスは湿度に関係ありません。あたりまえですね。部屋が湿気で大変なことになっている人もそうでないひともウイルスの恐怖展でチェックしてください。


さあ、クリック!

この連携企画は毎週水曜日に更新されます。


 

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