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ロマンの木曜日
 
渡り廊下を渡り歩く

超高層渡り廊下。う〜ん、渡ってみたい(三船敏郎風に)

最上階の展望室から見下ろすと、ビルの中につき刺さっているように見える
渡り廊下へは、このホテルから

渡りたい渡り廊下ランキングNo.1

かねてからどうしても渡ってみたいと思っていたのが、東京築地は明石町にそびえ立つ聖路加タワーの渡り廊下だ。
地上52階建ての聖路加タワーと、38階建ての聖路加レジデンスを32階部分でつなぐ、超高層渡り廊下である。
その高さからして、日本を代表する渡り廊下と言って異論はないだろう。

ぜひとも渡りたい、渡りたいのけれども渡り廊下の高さとまるで比例するように、この渡り廊下は敷居が高い。これまで渡り歩いてきた渡り廊下たちと違い、聖路加タワーはオフィスビル、そして隣り合うのはレジデンスだ。デパートのように気軽に渡るというわけにはいかない。でも渡りたいんだ。

まずは展望フロアへ

インターネットを駆使して調査したところ、どうやらタワー最上階の展望フロアは一般に公開されているようなので(しかも無料で!)、とりあえず登ってみた。

さすが47階、東京都内を一望できる絶景である。眼下の町並みもかすんで見える。
めざすべき渡り廊下も窓から見下ろすことができたのだが、登ってくる途中のエレベーターに「3階から46階はオフィスフロアにつき一般の方は降りられません」という旨の注意書きがあった。渡り廊下は32階、状況は厳しい。

聖路加タワー側からのアプローチは無理なようなので、隣の聖路加レジデンスに入っているホテルのフロントに行って聞いてみることにした。
「すいません、この上の渡り廊下を渡ってみたいんですけど…。」
「 はい、こちらのエレベーターから32階へどうぞ。」
なんと!ずいぶん簡単に許可が下りた。いいんですか、渡っても!
渡る世間に鬼はなしだ。

 

これがあこがれの渡り廊下、地上100mのパラダイス
隅田川でお花見をする人たち。つきなみだが「小さい」
ビルだらけの東京が一望できる
伸び縮みする渡り廊下。渡り廊下は生きている
伸び縮みのつなぎ目。この下を想像するとたまらない

最高の渡り心地

案内されたとおりに32階でエレベーターを降り、渡り廊下へとつながる扉をあけた。

うん、すばらしい。
両面ガラス張りで開放感にあふれ、暖かい春の日差しが差し込んでいる。
窓から外を見下ろすと、ちょうど盛りの桜が隅田川沿いに小さく小さく咲いている。
遠くに目をやると東京タワーや品川の高層ビル群が見渡せる。この日はあいにく薄曇りだったが、晴れた日には富士山も望むことができるだろう。

視線の高さが他の渡り廊下に比べて格段に高く、渡っていると平衡感覚がゆらゆらと歪む。
この「足の下には何もない感」がたまらない。
小さくジャンプして、疑似空中浮揚体験を味わう。

タダでこれだけの眺望とスリルが楽しめる、なんとすてきな渡り廊下なのだろう。

伸び縮みするらしい

渡り廊下の入り口に、「伸び縮みするブリッジのしくみ」という説明書きがあった。
それには
「このブリッジは、大きな地震で建物が揺れる時にも、安全に通行できるしくみとなっています。
ブリッジの全体の骨組みは、片方を軸で、片方を車輪で、両側の建物につながれており、建物の揺れに合わせて動くことが可能です。
床は骨組みの中のレールに載っており、自由に伸び縮みできるよう分割された上、パンタグラフでつながれているため、建物の大きな揺れは各々の床で均等に分割され、小さな動きとなります。」
とある。

なるほど、確かに地震の際は高さも構造も異なる二つの建物、揺れ方にも差がある。それを固定式の渡り廊下でつないでしまっては、揺れを吸収できずに渡り廊下の真ん中からバキッとなってしまうだろう(考えただけでも恐ろしい)。
それを防ぐためにこんなハイテクが使用されているのだろうけれど、それじゃあなんでそこまでして渡り廊下を作るのだろうか。

それはたぶんきっと、建築家の人も渡り廊下が好きだったのではないだろうか。
もしボクがこんな二つ並んだ超高層ビルの設計を任されたなら、渡り廊下を渡さずにはいられないだろう。
その気持ちはよくわかる。人は渡り廊下を渡したがる生き物なのだ。
好きが高じて思わず渡り廊下を渡してしまった、そうに違いない。(それと、ビル火災の際の避難路の確保のためとか。)
いずれにせよ、好きこそものの上手なれ、きわめてクオリティの高い渡り廊下に仕上がっている。
やはり、日本を代表する渡り廊下であることは間違いない。

 

渡り廊下には大きく分けて2つの種類がある。
最後に紹介した聖路加タワーの渡り廊下やタカシマヤタイムズスクエアの渡り廊下のような、眺望の良い開放感を意識した渡り廊下。これらは渡るのが楽しいし、渡り廊下そのものが建物のアクセントになっている場合もある。
その一方、シブヤ西武B館とLoft館とをつなぐ渡り廊下のように、純粋に建物同士を結ぶ役割に特化した、けっして表に出ることのない渡り廊下も存在する。個人的にはこのタイプの渡り廊下が好きだ。主張せずに黙々と人を渡し続ける渡り廊下。
しかし、どちらの渡り廊下も建物と建物をつなぐということに変わりはない。
そして、すべての渡り廊下は、建物をつなぐのみならず、人と人とを、さらにはその心と心とをさえもつないでいるのではないだろうか。

いつかここに渡り廊下を渡したい

 

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