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ちしきの金曜日
 
ダンメンを鑑賞する

■消えゆくダンメン


ここにあったんです、と吉永さん。

「これがあったはずなんですよ」

「ダンメン収集の難しさは、なくなってしまうということです」と吉永さん。今回のツアー中も何回か「あれ、なくなってる」とがっかりする場面があった。

もともと取り壊したあとにできるダンメン。そこに新しく建物が建ってしまえばもう見ることはできなくなるし、ダンメンを持った建物のほうが取り壊されることもあるだろう。ダンメンとは基本的に「消えゆくもの」なのだ。
ぼ くも団地を写真にとって集めているけれど、建築物を写真に収めて回るというのは、いわゆるコレクションとはちょっと違う。写真というのはそれ自体コレク ションするに足るものになりうるが、本当はダンメンそのものを持ち帰りたいんじゃないだろうか。吉永さんのやっていることは「記録」とも「コレクション」 ともちがうなにかもっと別なもののような気がした。


(吉永さん撮影)かつてここにあったダンメン。メタリックな仕上げが素晴らしい。惜しい人を亡くした。

「あれ、ここも変わってる」

これはこれでなかなかすてきなダンメンだが
「まえはもっと素敵だったんですよ。左半分が建て替えられちゃってる」
(吉永さん撮影)かつてのダンメン。おお、たしかに前のほうがかっこいい。なんともったいない。なんで建て替えちゃったんだよまったく。

■ダンメン方丈記


「今日みたいな雨模様の日には匂いで分かるんですよ。どこかで取り壊し工事やってる、って」すげえ。

「でも、一方でまだまだダンメンは増えてる。町屋が取り壊されればそこにいままで見れなかったダンメンが現れるわけですから」

生まれては消えていくダンメン。それは言うなれば「よどみに浮かぶうたかた」のようなものか。京都だけにダンメン方丈記だ。

すっかりダンメンに魅せられたぼくは吉永さんのその言葉になにか深遠なものを感じかけたが、よく考えてみればダンメンのはなしだ。人は年をとるとどうでもいいものに人生訓のようなものを見いだしがちなので気をつけたいと思う。


 

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