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フェティッシュの火曜日
 
父の日に、果たせなかった約束を果たしに

うなぎが牛になる

結局なじみの焼肉屋に来た。父はうなぎだけでなく牛も好きだ。そして特に焼肉屋が好きだ。理由を聞くと、「わいわいと焼くのが楽しい」と言う。同じ牛でも、ステーキを静かに食べるより、焼くという行為で盛り上がるのが好きなようだ。

で、結局焼肉をおごることになった。

だがクロアチア戦を控えた日曜7時過ぎ。すいているかと思いきや、試合にそなえてなぜか自分らも気合を入れるためか、店内は客でものすごく混んでいる。でも父はその様を見て「焼肉屋が混んでるとうれしいね。狂牛病とかの騒ぎのときはガラガラだった。焼肉屋が混んでないとさびしいね」と、高貴な視点から発言をしている。

しかし、やっと座れたがなかなか肉が来ない。腹が減ると目に見えて不機嫌になっていく父だ。高貴な視点はどこかに行った。


炭は燃え、酒と肉は来ない。

待つ間、私が「これはうなぎの代わりでして」と説明する。母からは伝わってなかったようだ。初めて聞いたような顔をしている。

そこから、うなぎの話になった。

  • 父のひいきの店では、上(じょう)が1700円。そのうえに特上2000円があったので頼んでみた。
  • ふつう特上と聞けば、うなぎとご飯の2段重ねを想像するよな。
  • すると、違いは「冷奴がついてる」だけだった。もう特上は頼まない。
  • うちの近くの店では特上が1700円と安い。けどそこはご飯がまずい。
  • その店では上を食べたが、その店の特上はどんなんだと聞いたら、「一部分が2段重ね」。

と、ひとしきりうなぎについて語った。


焼肉を前に、うなぎに想いを馳せる。

やがてビールと日本酒は来たが、肉はまだだ。ビールを私は飲み終え、父はなんとか半分残している。肉と一緒にビールを飲みたい思いの強さを感じることができる。

一緒にやって来たカクテキを見て、「今日はあまり赤くない」とぼやいていた。赤くないと「食欲をそそられない」そうだ。焼肉にも一家言ある父だ。

やがて肉到着。無事網に乗せ終え、私も安心だ。


酒を酌み交わす父と娘。

混んでいたので、追加注文のわずらしさを避けるため、肉のあとのご飯類も一緒に頼んでいた。父は石焼ビビンバが定番だ。

「肉と一緒に来たらどうしよう」と、テーブルのそばを石焼セットの乗ったワゴンが通るたび、ビクビクしていた。父曰く、「長く置くと野菜の水気が出て、焦げが期待できない」ので、ぜひとも食後に来て欲しいそうだ。

でも肉焼きの半ばでついにビビンバが到着してしまい、私たちはあわただしく肉を胃に詰め込むようにして食べた。これでよかったんだろうか。


いつものメニューをひととおり食べ終え、父も満足だ。

 

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