「ドロボウ捕まえたことがあったの?聞いたことないよ!」
「いや、捕まえたんじゃなくってさ。勤め先でドロボウが捕まって、お父さんの課で事情を聞いてたらそいつが警察来る前に逃げ出したんだ。お父さん当時喘息がひどいときで、追いかけられなかったから、警察の車に乗って『あいつです!』って指図したんだ。それが表彰された」
事前に母から聞いていた話とほぼ違い、武勇伝武勇伝デデンデンデンデデンデンとまではいかない話だったが、十分誇らしいことである。
他にも、勤務先にクレームを言ってきたヤクザ風の男の話を仕方なく聞いてやったら、後日男から勤務先に手紙が来て『あんなすばらしいお人はいないから大切にしろ』という内容だったという、どうとらえたらいいかわからない「武勇伝」も持っている。その男の人も単純ではある。
翌朝、父に送られ帰路につく
クロアチア戦も始まったので、その日は話はそこまでとなった。
翌朝、帰京すべく最寄り駅まで父に送ってもらった。父はそのまま職場まで出勤である。
今ハマっていることについて聞いてみた。父は昔から、書道や三味線、英会話など、いろいろ興味を持ってはいつのまにかやらなくなっていたりする。不運にも私はそこに似た。
「そういえば手話ってどうなったの?」
「ああ、手話の講座?あんまり行ってない。100km歩く大会とか、畑仕事があったからね」
「・・・。そういえば油絵は?出展するんでしょ」
「ああ、あの寺院の絵ね。それも進んでないな」
「・・・。私が買ってあげたNINTENDO DSは使ってる?脳のトレーニングしてる?」
「あれ、この前やったらさ、『1ヶ月ぶりですね』ってDSに言われちゃったよ」
「なんだ、してないじゃん!」
「100km歩く大会とか、畑仕事があったからね」 |