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フェティッシュの火曜日
 
父の日に、果たせなかった約束を果たしに

帰宅後、父に武勇伝を聞く

家でいきなり、父の足の指を見せられた。両方の爪が2〜3づつ、剥がれて新しい爪が生えてたり、血マメができてたり、指の皮がめちゃくちゃに破れたりしていた。


割とひどくないほうを掲載。右足はすごかったので掲載自粛。

「100kmを24時間歩く大会があって、参加したらこうなった」

そう、その大会のために、父は毎日べらぼうに歩いていた。歩く、といえば・・・。

事前に電話したとき、母から初めて聞いたことがある。
「お父さんは昔、勤め先でドロボウを追いかけて走って走って、結局自力では捕まえられなかったがドロボウも追いかけられたせいで疲れて逃げるのをあきらめ警察のご厄介に。後に感謝状をもらった」というもの。おお、武勇伝!それ聞いてみましょ。


おお!本当の話のようだが?

「ドロボウ捕まえたことがあったの?聞いたことないよ!」
「いや、捕まえたんじゃなくってさ。勤め先でドロボウが捕まって、お父さんの課で事情を聞いてたらそいつが警察来る前に逃げ出したんだ。お父さん当時喘息がひどいときで、追いかけられなかったから、警察の車に乗って『あいつです!』って指図したんだ。それが表彰された」

事前に母から聞いていた話とほぼ違い、武勇伝武勇伝デデンデンデンデデンデンとまではいかない話だったが、十分誇らしいことである。

他にも、勤務先にクレームを言ってきたヤクザ風の男の話を仕方なく聞いてやったら、後日男から勤務先に手紙が来て『あんなすばらしいお人はいないから大切にしろ』という内容だったという、どうとらえたらいいかわからない「武勇伝」も持っている。その男の人も単純ではある。

 

翌朝、父に送られ帰路につく

クロアチア戦も始まったので、その日は話はそこまでとなった。

翌朝、帰京すべく最寄り駅まで父に送ってもらった。父はそのまま職場まで出勤である。

今ハマっていることについて聞いてみた。父は昔から、書道や三味線、英会話など、いろいろ興味を持ってはいつのまにかやらなくなっていたりする。不運にも私はそこに似た。

「そういえば手話ってどうなったの?」
「ああ、手話の講座?あんまり行ってない。100km歩く大会とか、畑仕事があったからね」
「・・・。そういえば油絵は?出展するんでしょ」
「ああ、あの寺院の絵ね。それも進んでないな」
「・・・。私が買ってあげたNINTENDO DSは使ってる?脳のトレーニングしてる?」
「あれ、この前やったらさ、『1ヶ月ぶりですね』ってDSに言われちゃったよ」
「なんだ、してないじゃん!」
「100km歩く大会とか、畑仕事があったからね」


寺院の絵(出展前につき秘密)。アトリエは元私の部屋。
放って置かれるDS。

歩くことも、畑仕事も、そのうちどうなるか心配になってくる。
それに、記事になるのかちょっと不安になってきた。いや、今回はいいんだ。父の日なんだ。

そう思っていると、「畑見せようか」と父が言う。最近の父の興味の対象である。

職場の近くに、共同で借りているという畑があった。
父は実は、心の病を経た方々のリハビリ用作業所の所長を今はしている。そこに通う方々のためということもあって、畑を始めたそうだ。


「ほら、あれ」
フェンスの中がブルーベリー畑。

作業所なので、通う方々にはいくばくかの作業賃が出るが、その足しにと、ブルーベリーを皆で育てているのだった。

やがて駅に着き、「じゃまた帰省するよ」と私が言うと、出るときはふつうのメガネだったのに今はすっかり日差しで茶色く変わったサングラス姿の父が、手を振った。


誰ですか。

なんでも「父」に見える(実家のトイレのタンク裏に、未だに書いてある「タンク位置を指示する業務連絡」)。

もっとしんみりさせようとか、感動してもらおうとか、ちょっとはイヤラシイ考えも持っていたけど、いろいろ話せてよかったです。

ネタのため、といいつつ、そういう機会があってよかったです。

お互い元気でがんばろう。今回は取材につきあわせてすいませんでした、父よ。

 


 

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