でも塩がない
いや、そんな優しい気分に浸っている場合じゃない。塩だ、塩。マテ貝捕るには塩がいるのだ。
塩が欲しい。一握の塩。さすがに初対面の人に塩をもらうのは気が引ける。話しかけるだけでいっぱいいっぱいなのに。社交性か塩、どっちでもいいから今すぐ欲しい。
しかし、幸いにも目の前には海が広がっている。社交性はともかく、大鍋を用意して大量の海水を煮詰めれば、数時間後には塩を得ることが出来るはずだ。そういう記事を見た覚えもある。
一瞬、本当に本気でそんなことを考えたのだが、もちろんそんなことをしている時間はない。マテ貝、待てない。目の前の海、全然幸いじゃない。
海の塩辛さが虚しい。すでに干潮から一時間以上が過ぎており、干潟がだんだん狭くなってきている。困った。 |