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ちしきの金曜日
 
自分なりのリアル走馬灯づくり

●そもそも思い出ってなんだろう

  ほのかに灯りつつ、ゆっくりと回るリアル走馬灯。それは思い出が巡る、自分だけの灯りだ。

 そういうことで今回作ってみているわけだが、いざ「思い出ってなんだろう」と構えて考えると、どうにもよくわからない。それなりにいろいろあるが、何を描けばいいのか。

 考えながらトイレに行って思い出した。子供の頃、家のトイレに芳香剤を詰まらせて、大変なことになった覚えがある。


よみがえる悪夢


 家族総出でいろいろ試してもうまく行かず、そちら方面のプロフェッショナルを呼ぶに至ったあの日。驚きの請求額。

 家族会議の結果、翌年のお年玉がなしになった。子供と言っても中学生の頃だったはずだ。……そうだ、あの頃の自分、テレビゲームに夢中だった覚えがある。

 中でも一時熱中していたのが、『魔界村』というゲーム。さらわれた姫を助けるため、ゾンビをやっつけながら冒険するという内容のものだ。

 そんなことばかり考えていた私は、登校時に使っていた白い布カバンの帯のところに、でっかく「魔界村」と書いた。

 ばかげてる。思い出は決して美しいものばかりではない。

 それから、うちではシメジが食卓にあがると、必ず「香りマツタケ、味シメジ」という言葉を母から聞かされた。高級なマツタケは確かに香りはいいが、味で言えばシメジが最高だという警句だと思う。


疑惑のきのこ・シメジ

 それはいいのだが、シメジが出るたびにいちいちそう聞かされているうちに、その言葉はなんだか悲しい呪文のように響き始めた。マツタケが出ることはほとんどなかったからだ。

 普通にうまいのに、余計なことを聞かされることで、シメジをみじめに感じるようになった私。

 暗い話になってしまったので、明るい話もしよう。いつも食べに行く店のハンバーグがうまい。


思い出になっても光を放ち続けるハンバーグ

 トイレの悪夢・魔界村・シメジ・ハンバーグ。とりあえず、個人的な思い出リストはこんなところだろうか。

 あまりたくさんのことを盛り込もうとしても無理がおきそうだ。さあ、筆を取ってつれづれに浮かんできた思い出たちを描き連ねてみよう。


僕の中の思い出たち
セッティングOK!

 左から、ハンバーグ・シメジ・魔界村・あふれ出しそうなトイレだ。思い出として心に描いていたものたちを実際に目に見える形にすると、また違った味わいが出てくる。

 走馬灯内部にセットし、部屋を暗くして灯りを灯してみる。


おぼろげに浮かぶハンバーグとシメジ

 少々わかりづらいだろうか。上の方に浮かんでいるのがハンバーグ、下に見えるのはシメジだ。

 いずれもおぼろげな見え方だが、人生の様々な局面で浮かんでくる思い出というのも、またこんな風に見えるものかもしれない。


無茶を恐れなかったあの頃

 そして、やがて見えてきたのが魔界村。

 こんなことを申し上げるのも非常に恐縮な気がするのだが、よろしければ動画でもご覧ください。


どんな思い出も走馬灯に映れば美しい

 涙でかすんでいるからだろうか、トイレの絵はほとんど読み取ることができない。

 事故や病気で命のともしびが消えかけたときに、思い出は走馬灯のように浮かんでくると聞いている。そんなときに見えてくるのがこんなものでいいのだろうか。

 死ぬ前にこんな走馬灯が回り出すかと思うと、生きているうちにもう少しましな思い出を作らなきゃまずいと思えてくる。


 

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