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フェティッシュの火曜日
 
写真たてのデフォルト写真しらべ

 

デフォルト写真を自分で撮りたい

 デフォルト写真の傾向はわかった。わかってしまえばやるべきことはただひとつ。自分でデフォルト写真を撮るのだ。

 調査で一番多かったのは外国人の写真だったが、あいにく協力を頼めそうな外国人はいない。ここは2番目に多かった花を撮ることにしよう。

 ここまでの調査で夕方になってしまった。撮影は明日、といいたいところだが、天気予報によると明日から雨。原稿の締切を考えると、今日のうちに写真を撮っておかなければいけない。花…花…。傾き始めた太陽のようすを気にしつつ、あわてて携帯で検索する。

 

16:09の電車に乗って16:11に新橋。そこから走る!

 あった。中央区にある浜離宮恩賜庭園のお花畑だ。ネットで調べたところによると、庭園内にはお花畑があり、季節の花が咲き乱れるらしい。この時期はコスモスが満開なのだとか。

 庭園の入場は16:30まで。今は16:09。今は有楽町にいるので、新橋まで電車で2分+徒歩15分。道に迷っても4分以内なら余裕がある。考えている猶予はない。

 電車に飛び乗って、新橋で降りる。駅の地図を見て方角だけ確認して、早足で歩き出す。日が沈む!庭園も閉まる!いそげ!

コンクリートジャングル!こんなところにコスモス畑が?

 しかしこんなところに庭園があるなんて聞いたことがなかったし、行けども行けどもリクルートやら電通やら、大企業のビルが立ち並ぶばかりだ。本当に時間までにたどり着けるのだろうか。

 地図も適当にしか見てこなかったし、このへんはやたら高架が多くて道が入り組んでいる。

遠くの空が赤くなってきた。日が暮れてしまう!

 走れメロスみたいな気分で、ハアハア言いながら庭園を目指す。

 もし間に合わなかったらどうしよう。花をやめてやっぱり外国人の写真にすればいいだろうか。サングラスに短パンはいて、東京タワーあたりで記念撮影してくればいいだろうか。

 …いかん、それでいいじゃん、という気分になりつつある。それじゃまずい、企画がねじまがりすぎだ。がんばって走って花の写真を撮るんだ、メロス(俺)!

 

あと6分!
走れ!

何とか庭園内に入れてもらった。

ギリギリで到着

 庭園の入り口に着くと、管理人さんが門を閉めようとしているところだった。鬼気迫る顔で走りこんでくる僕を見て、管理人さんは思わず「あ、」と声を上げた。

 時計は16:32。閉園時刻を少し過ぎているが、急いで来たので入れてほしい旨を伝えると、「どうぞ」といって通してくれた。助かった。

 

森と、その向こうに見えるビル街。ずいぶん暗くなってきた。
お花畑発見!

これがオリジナルのデフォルト写真

 そして、なんとか日没前にお花畑にたどり着くことができた。お花畑はあまり広い畑ではなかったけれども、畑一面にコスモスが咲いている。あとは花の写真を撮るだけだ。

 

華やかに咲く、ピンクのコスモスを激写
満開だがいかんせん薄暗いお花畑。

白いコスモスも
紫のコスモスは3人一組で

気がつくとものすごい数のカラスが空を飛び回っていた。

 

 

過剰な写真たてと、ふーん、って感じの主張のない写真

 

おもしろくないのがデフォルト写真

 あれだけ苦労して撮ってきた写真だったが、家に帰って飾ってみると、案の定、面白くなかった。素人が薄暗いところであわてて撮った花の写真。面白くないのも当たり前だ。

 しかし、デフォルト写真の本質は「面白くなさ」にあると思う。お店で飾られるデフォルト写真は、あくまで写真たての引き立て役。面白くてはいけないのだ。僕の写真はなんだか生気の感じられないぼんやりとした写真だが、面白くなさの点ではなかなかいい線いっているのではないだろうか。

 ひとたび使われてしまえば、一転して主役は写真になり、写真たては引き立て役に降格されてしまう。そんな写真たてに、束の間の主役の座を与えてくれるデフォルト写真。なんだか夢のある話じゃないか。

 

 
 
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