親不知の夜
親不知を抜いた達成感に包まれて、僕は親不知の駅に降り立った。夜は親不知観光ホテルに部屋を予約していた。駅までホテルの人が迎えに来てくれる。
駅からホテルに向かう間、車を運転する支配人さんに向かって親不知を抜いて来た事を得意気に話した。支配人さんは「あいやー」と言って驚いた。親不知を抜くためだけにやって来た人は初めてだ、とも言っていた。抜いた親不知を見せようかと思ったが、運転の邪魔になりそうだったのでやめておいた。
海の幸が
部屋に帰ってからもずっと抜いた親不知を眺めていた。こんなに充実した気持ちになるのは本当に久しぶりだ。これを奇麗に磨いてネックレスにしたい。それくらい自分の親不知が愛おしいのだ。
しかし、夕食の時間になり、それまでの親不知に対する思いが吹き飛んだ。
海の幸でいっぱいなのにお酒を飲んではいけないのだ。化膿止めの薬を飲んでいるからだ。
こんな海の幸を前にして、ウーロン茶しか飲めないなんて。
もし、親不知で親不知を抜きたいという人がいたら、前乗りして先に海の幸を楽しんでから、翌日に抜く事をおすすめします。
親不知との戦いはまだ終わらない
わざわざ親不知までやって来て本当に良かった。ヘタレな僕は、これくらいやらないと駄目なのだ。気がかりなのは右下の親不知であるが、これは上の親不知を抜いた事でしばらくは大丈夫なはずだ。
それよりも更に気がかりなのが左下の親不知である。今回のレントゲンで明らかになったのだが、嫌な角度で生えているのだ。これを抜くのはちょっと大変らしい。ああ、困った。