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ひらめきの月曜日
 
興奮の、本場さつま揚げ工場見学

いよいよ核心へ

非常に大きく、そしてとてつもなく長い機械がモーター音を静かに響かせながら、リズミカルに動いている。

「これはちくわを焼く機械です」と加治木さんが教えてくれるのだが、まだこの段階では、これがちくわとは到底思えない。なんせ真っ白で細ーいのだ。ちくわの面影は、まだない。


これがスタート時のちくわ。「え?」と思います。でもドキドキします。
下から熱せられながらクルクルと自転、どんどん移動。
ちくわの行列は、先へ先へと進みます
膨れても表面が破裂しないように、途中で細い針の上を通過して穴を開けているところ。

工場を外から見たとき「なぜこうも横に長いんだろう」と疑問に思ったが、なるほどこういうことだったのか。とにかく機械の全長がべらぼうに長いのだ。

ちくわと一緒になって歩いているうちに、ちくわは徐々に膨張し、こんがりとキレイな焼き色が付いていく。次第に馴染みの姿へと変身するのを目の当たりに出来て、いよいよ感慨もひとしおだ。


ここまで来ると、もういつもの君だ。
そして急速に冷やされ、最初に見た袋詰めの作業へ。

 

細かな気配り

次に、すり身に混ぜ込む豆腐を見せてもらったのだが、1日に使う豆腐の量が800丁と聞いて驚いた。

──あのぅ、そんなに大量に使うなら、パックから出すの大変ですよね? パックに入れない物を卸してもらえないんですか?

素朴な疑問をぶつけたところ、実に意外な答えが返ってきた。


いちいち面倒でしょうに。
これがふわふわのさつま揚げの秘訣か。

「その方がいいと思いますよね? でも、パックされた物を使った方が、雑菌が入りにくいんですよ」

──えっ、 そうなんですか!

まさか、こんな細かい所にまで気を配っているとは思わなかった。こういう手間を惜しまない姿勢って、地味だけどスゴイ。


数種類の魚のすり身、豆腐、地酒、砂糖などなどを混ぜているところ。当然のごとく、配合は企業秘密。
これが上棒天になります。…と言われても、まだピンと来ませんよね。
5本まとめてニュウと出る。見ていて飽きない。ニュウ。
この段階では、まるでお菓子のよう。エクレアとか。
熱せられた油の中にずんずん入っていきます。
使っているのは100%キャノーラ油(菜種油)

始めは低温でじっくりと揚げ、次に高温で二度揚げするのだそうだ。この油が満ちている機械も、ちくわと同様非常に長い。

しばらくすると、揚がった上棒天がコロコロと出てきた。


おお、来た来た!
急速に冷やされて、パッケージ部門まで運ばれます。

いやもう興奮しすぎてフラフラだ。大量のちくわ、大量の上棒天。しかも出来るまでの工程のほとんどを見た。

さすがにもう、工場に足を踏み入れた時を上回る興奮はないだろうと思っていたが…、あった。


なんと、加治木さんが1本取って渡してくれました。

言うまでもなく、揚げたて出来たてのアツアツだ。

嬉しすぎて、この喜びをどう表現したらいいのか分からない。心の中は感動に打ち震えているのだが、それをなかなか表に出せないのがもどかしい。こういうとき、相手に感謝の気持ちを伝えるには、言葉以外にどういう方法があるのだろう。


たぶん、さつま揚げの一番おいしい食べ方だと思われる。

とにかく、私はだらしない笑顔を浮かべるばかりだったような気がする。だが胸の内では「すげー! すげー!」を連発しまくっていた。勿論「うめー!」も。

やっぱり工場はすごいところだ。

 

串木野の次なる名物

ちょうどお昼にさしかかり、工場も大きな流れの作業はいったん休みとなる。私たちも工場を出た。

ここで加治木さんが「お昼、食べに行きませんか。串木野だけにしかないラーメンがあるんです」と言う。

え、なんですか? 串木野名物はさつま揚げだけじゃないんですか。食べます食べます。ぜひ食べさせてください。

一番の目的である工場見学を無事に終え、興奮しすぎて半分腑抜けになったような状態で、串木野の街に出た。


 

 
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