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はっけんの水曜日
 
鰹出汁で割った焼酎、焼津割飲み歩き

三軒目、どんた久

三軒目にやってきたのは、観光案内所のおっちゃんがおすすめしていたお店、「どんた久」。

店に一歩入ると、なるほどあのおっちゃんが好きそうな店だなと一人で納得。入口には例の焼津割小冊子が置いてあるので、ここもまた期待ができそうである。


カウンターのショーケースっていいですよね。

ここでは人生初となるホットの焼津割を頼んでみることにした。出汁は日本料理屋らしく、カツオと昆布の出汁にさらに追いガツオを加えたという本格的なもの。焼酎はおすすめだという麦と甲類でひとつづついただいた。やはり焼津割には香りがすくないタイプの焼酎が合うという。


甲類と麦焼酎。さてどっちがどっちでしょう(自分に対する質問)。

しばらくして出てきた焼津割は、さすがに追いガツオを加えた出汁の香りが高い。飲んでみるとホットであるということもあり、さながら味付けをしていないお吸い物。でも酔っぱらうという不思議な飲み物だ。

 

お店として扱いが難しいお酒らしい

焼津割を持ってきてくれたおかみさんにちょっとお話を伺ったら、少し困ったような感じで、焼津割はあまり積極的に売り出してはいないということだった。

どうしても好き嫌いがはっきりとでる飲み物なので、お店としてはせっかく来ていただいたお客さんにすすめづらい部分があるのだろう。もし焼津割が気に入られなかったら店の評判が落ちる可能性もある。それでもお店に置いているのは、焼津の町おこしに協力してあげたいという気持ちだろうか。


つまみは白子のから揚げ。酔っ払った勢いでぜいたくなもの食べています。

しかし出汁好きの友人はこの店の焼津割が気に入ったようで、「お吸い物と焼酎の一人二役で、ある意味リーズナブル!」とかいって喜んで飲みほした。


どんた久
住所:焼津市焼津4-14-1
電話番号:054-629-2745
営業時間:11時30分〜22時(休憩時間あり)
定休日:月曜日

四件目、楠の木

次の店は小冊子から適当に選んだ「楠の木」という居酒屋。しかし残念ながら焼津割は予約制とのこと。日本料理屋のように出汁を常備している店以外では、出汁を準備する必要があるので、予約制になっている店がけっこうあるようだ。

しかしせっかく入ったのだからとビールを一杯いただいたのだが、焼津割を飲み続けている口に生ビールはすこぶるうまい。シュワシュワと喉が洗われていくようである。

やっぱり焼津割は続けて何杯も飲むものではなく、ほかの酒の合間に飲むのがいいかなと思った。


ビールのうまさを再確認しました。 常連さんは当然のように緑茶割(静岡割)。

トンボの刺身。何かと思ったらビンチョウマグロのことでした。

バター風味のスープがうまいアサリの酒蒸し。


帰り際、常連のお客さんに焼津割を飲んだことがあるのか聞いてみたら、「みんなでおいしく飲めば、なんでも焼津割なんだよ!」という適当な返事が返ってきてうれしかった。

どうも焼津はいい飲み屋が多い気がする。


楠の木
住所:焼津市西小川2-4-19
電話番号:054-620-3212
営業時間:17時30分〜24時
定休日:年中無休
※焼津割は要予約。

五軒目、旬魚や魚いち

ヘロヘロになりながら夜の焼津市を歩き回り、最後にやってきたのが「旬魚や魚いち」。せっかく焼津まで来たので、地魚のお刺身が食べたい。


のぼりってやっぱりこういうのだよな。

ヘラヘラしながら店に入ると、色紙に焼津割、静岡割、わさび割という焼酎三兄弟が書かれている。せっかくなので全種類を試して静岡征服だぜとちょっと思ったが、さすがにもう酔いが回っているので、焼津割をホットとアイスで注文。


静岡割っていうのは、県知事がネーミングしたらしいですよ。 一片の鰹節が入った焼津割。おしゃれなカクテルみたいですね。いや違いますね。

ここの出汁は、生臭さを極力抑えるために、沸騰させないようにとったカツオと昆布の出汁。店で出しているお味噌汁などと共通の出汁で、ここのようにお店で常備している出汁を使った焼津割というのが、本来はスタンダードなんだろうなと思う。

 

ホットとアイスの飲み比べ

初めてホットとアイスを飲み比べてみたのだが、やはりホットの方が出汁っぽさが断然強く、アイスの方がすっきりしている。お酒の一種として楽しむのならばアイス、お吸い物で酔っ払いたいという人にはホットがお勧めだろう。どんな人だそれは。


地方に来ると名前も知らない魚が食べられてうれしい。 ケーシー高峰と中尾彬に似ているとかいってはだめだ。最初にいったほり川さんとは同級生だそうです。

この店もやはり青年会議所に協力する形で、焼津割を11月から出し始めたばかりとのこと。まだまだ試行錯誤の段階だというが、今まで聞いたこともなかった飲み方だったため、誰も正解がわかっていないクイズみたいな状態でのレシピ作りなのだという。

注文する人もまだ一日に数人程度で、「おかわりを頼んだ人は一人もいない!」という店主の言葉が、焼津割の現状を一番表わしていると思った。

でも10年経ったら、「とりあえずビール!」じゃなくて、「とりあえず焼津!」っていうのが当たり前になっているかもしれない。それがどれくらいの確率なのかは置いておいて。

 

焼津割の魅力について

本日5軒のお店を回って、そのうちの4軒で焼津割を飲んだわけだが、一番の見どころは「カツオ出汁で割った焼酎を出してくれ」という青年会議所の無茶ぶりに対して、お店が戸惑いながらも独自の答えを出そうとしている、料理マンガみたいな展開の構図なのだと思う。

出汁から研究してみたり、ロックにしてみたり、焼酎の組みあわせを考えてみたり。それぞれの店が迷いながらも出したオリジナルの回答を、一杯づつ確かめながら飲み歩くのはとても楽しかった。焼津割を本気でおいしいと思っている人には出会えなかったけど、そういう名物料理って世の中に実はけっこうあると思う。

もうそろそろ終電なので帰ります。


旬魚や魚いち
住所:焼津市栄町4-3-3
電話番号:054-628-3662
営業時間:11時〜21時30分(休憩時間あり)
定休日:月曜日

とりあえず一杯飲んでみるといいよ

焼津割という飲み物は、店にもよるけれど飲む前にイメージしていたものよりは全然すっきりとしていて、生臭さを感じるようなものではなかった。とはいってもやっぱり万人に受けるような味ではないというのも確か。

うまいまずいの問題以前に、「酢豚にパイナップルは認めない」とか、「甘いかぼちゃはおかずにならない」みたいな、飲む側が持っている基準に合うか合わないかという話だと思う。とりあえず焼津にいく機会があったら一杯飲んでみて、やっぱり合わないやと思ったら別のお酒を飲めばいいだけだ。焼津はおでんとか魚もうまいらー。

まぐろしぐれドッグもあるよ。

私はこの焼津割を通して、おいしい居酒屋を知ることができたし、地元の人たちと話すきっかけができたので、それで充分だと思う。


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