桜の足音がやっと身近に聞こえてきた北東北。花粉と黄砂に苦しみつつも、なんとなくおもてに出かけたい気分になります。目の前に迫るは大型連休。温泉なんてどうだろう。この季節、初夏の緑と風を感じながらの露天風呂はずいぶんと気持ちがいいにちがいない。たとえば川沿いの露天風呂なんて最高だろうな。 なんて考えていたら、連休を待たずに今すぐ行きたくなってしまった。ガイドブックをみれば、野趣あふれる露天風呂が自慢という宿はいくつもあるけれど、もっと手軽に簡単に、大自然の中で露天風呂を楽しむことはできないだろうか。そんなことを思っていたときに、物置きにしまっていた大きなタライのことを思いだし、これがあれば好きな場所で露天風呂を楽しめるじゃないかと閃いたのでした。
(櫻田 智也)
すっかり春めいてきました
東北以南の人にしてみれば、とっくに春だよという感じなわけですが、ゴールデンウィークに花見をするような場所に住んでいると、どうしたって嬉しいのです。この時期。
ウキウキして小さなプランターに野菜の種を蒔き、日々その成長を気にかけたりして。冬が終わって自分自身の生命の危機が過ぎ去った余裕からでしょうか。
暖かくなれば自然とおもてに飛びだしたくなるもの。小旅行気分で、開放的な心に似つかわしい開放的な露天風呂にでも入りにいきたい。本を読めば、野趣あふれる温泉がいくつも載っているが、もっと気楽にお手軽に、大自然の中で露天風呂を楽しむ方法はないだろうか?
そこで思いだしたのが、以前の記事で購入した大きなタライ。使い道もなく物置きにしまっていたのだが、再び陽の目をみるときがやってきた。
つまり、河原へいって川の水を汲んで温め、それをタライにためれば立派な露天風呂になるじゃないかと考えたのだ。なにが「つまり」なのかよくわからないが、とにかくそういうことなのだ。 『手づくり露天風呂で初夏の渓流ひとり占め!』 あまりにキャッチーなコピーに興奮で鼻水を垂らしながら(あるいは花粉症のせいで)、さっそく準備にとりかかった。もっとも、たいしたものは必要ない。タライと、川の水を温めるためのコンロがあれば充分だ。
とはいえ、いざ集めてみるとそこそこ大荷物なわけだが、これで自分だけの露天風呂につかれると思えば我慢できる。
美しい景色を求めて
よく耳にする、「絶景の露天風呂」という言葉。魅力的だ。ぼくの露天風呂も、もちろん景色のすばらしいところに開湯したい。そんな場所を求めて移動する。
風呂から眺めたい景色をさがして
途中、今年はじめて桜の花をみる。どうやら桜前線は、あと峠ひとつでぼくの町に届くようだ。
渓流沿いを走ることしばし。とうとうステキな場所をみつけた。
川へとおりてみると、それはもう、うんと気持ちがいい。流れの緩急を両方楽しめ、水は美しく透き通っている。湯舟を置くのに適した平らな河原もある。すっかり気に入って、この景色の中で風呂につかることを決めた。
入浴の準備
暖かい。せせらぎの音が耳に心地いい。最高だ。 もしかしてここで露天風呂を試さないほうが、今日という日を「いいお休みだったね」で過ごし終えることができるのではないだろうか。 いや、そんなはずはない。ぼくはあんなにも大自然の露天風呂を楽しみたがっていたじゃないか。
よし、やろう。浴槽とコンロをセッティングし、バケツで川の水を汲む。
あとはひたすら水が温まるのを待つのだ。