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はっけんの水曜日
 
ほたるを見に行く時に気をつけたいこと

ほたる!じゃなくて人がたくさんいる!

森へと向かう道。暗闇の中を恐る恐る歩いていくと、先のほうに思いがけない気配を感じた。

(ざわざわ……・・・・)

人がたくさんいる(気がする)のだ。

暗闇なのでほとんどわからないのだが、耳を澄ますと足音からして近くに50人とか100人とかそういう単位でいるように思う。なんだ、どうしたのだ。正直まったく人がいなかったら怖いなと思っていたのだが、予想外にたくさんいすぎても怖いものだ。


みんな静かにざわざわしている。

この人たち、みんなほたるを見に来ているのだ。

人の多さに若干引いたが、目的を持って集まっているだけあって誰もライトを点けないのはすばらしいと思った。ライトはほたるの活動に影響を与えるのだ。みんなちゃんと予習してきている。

それにしてもこの人出だ。2、3歩あるくと誰かにぶつかる。こんな祭りみたいな状況でほたるは飛んでくれるのだろうか。

そうこうしているうちに僕のすぐ目の前に緑色の光りが!


あ!ほたる!

ねえねえ、顔の前にほたるが飛んでるよ!

緑色のLEDは確実にほたる意識してるね。

あぶない。

ほたるかと思ったらひげそりのLEDだった。他にもタバコの火とかキーライトとかでいろいろ試してみたのだがこれが一番ほたるっぽく撮れたので紹介してみました(背景がいきなり変わったのは下山してから撮ったから)。


花火はだいぶ違う。
車のライトはそれっぽいかと思ったが、赤だとダメですね。

あれ、ほたるは撮れなかったの?

本題に入るまでにむやみにひっぱるとき、それは企画が失敗したとき。賢明な読者はお見通しだろう。

いや、でもちゃんとほたるの写真も撮ることは撮ったので見てください。ほら


光の軌跡がほたるの飛んだ跡です。

優雅!

ほたるではなくおっさんに叱られる

三脚が使えないのでかなりぶれてしまっているが、一応ほたるの光は捉えることができているだろう。撮れた写真を見てほっとしているところにおっさんが怒鳴ってきた。

「おい!さっきライト点けるなって言われたの聞いてなかったのかよ。」

すごい剣幕なのだ。上述のとおり僕はライト点けていない。それなりに予習してきて知っているので持ってきたけど点けなかったのだ。おっさんのいう「さっき」の話がなんなのかわからないのだが、これは濡れ衣ではないか。

「聞いてなかったのか、なあ、聞かなかったのかよ、おい。」

ぜんぜん許してくれないのだ。


ぼくはライト点けてないってば。

叱られた訳がようやくわかる

おっさんのいう「ライト」は僕がデジカメのモニタを確認していた光のことのようだった。

「いや、これ、カメラですが、すみません…」

すこし歯向かったらさらに5倍くらい叱られた。おっさんはほたる鑑賞のイベントに参加してここに来た集団の一人らしい。最初にそうやって説明があったのだろうか。イベントに参加せずに別入り口から入ってきた僕はそんな話聞いていない。

おっさんの怒りは収まらないようだったが、真っ暗闇だったので二歩くらい引いたら見えなくなった。なんだったんだろうあの怒りようは、ほたるの親戚か何かか。

でも確かに暗闇でデジカメのモニタを点けてしまった僕が悪いのは確かだ。すみません。

しかしここから先、操作系のイルミネーションもみな消しておいたのだが、カメラを持ち上げるそぶりを見せるたびに周りから子供や大人のひそひそ声が聞こえるのだ。(写真撮っちゃだめなんだよ)(撮ったらいけないんだよ)(ほたるがびっくりするよ)

暗闇にいて四方から自分を批判するささやきが聞こえてくる状況を想像してもらいたい。狂ったかと思う、本当に。

これ以上周囲に迷惑をかけては申し訳ないと思い早々に退散した。


入り口ではほたるの紙芝居が始まっていました。

帰り際、ほたるの谷の出口あたりでボランティアの方が子供向けに紙芝居をしてくれていた。そこで話していたこと

・ほたるは連れて帰らないでね
・ライトはつけないでね(カメラのフラッシュもだめだよ)
・道をはずれないでね(ロープのはってある場所にはほたるのさなぎや卵があるよ)
・くわえタバコをしないでね(仲間と思ってほたるが寄ってきちゃうからね)

これを見ると確かに「カメラだめ」って思いたくなる気持ちもわかる(写真撮っちゃだめとは言っていないわけだが)。でも、そういう人の気持ちも考えずにカメラを構えた僕に非があるのは確かなのでみなさん、本当に申し訳ありませんでした。

でも僕は心が狭いのでおっさんや子供たちに「帰り、道間違えろ」と心の中で思ったことはここにだけ書いておく。





都会のほたるは要注意

ということでほたるを見に行くには真っ暗の中、しかも人ごみを覚悟で行かなくてはならないことがよくわかった。しかもみんなぴりぴりしていてちょっとしたことでも怒られるから気をつけた方がいい。

ほたるの光は確かに淡く、人を癒してくれる。しかし都会にあるほたるポイントがこうやって人であふれ、かえってストレスを与え合うような場所になってしまうのは惜しい気がした。僕にはひげそりの光で「ほたるだ!」と騒いでいるくらいが向いているのかもしれないです。

こっち水は甘くないぞ。

 

 

 

 

 

 
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