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チャレンジの日曜日
 
中国の新幹線の寝台車でぐっすり

速度は微妙だった

中国時間夜10時前、中国新幹線「和階号」は、日本の新幹線の出発時に鳴る「プルプルプル…」といった発車ベルなしに静かに出発した。

いつもの中国の長距離電車なら、ひまわりの種を食べたりトランプで遊びながら大きな声で談笑する声も聞こえるのだが、さすがエリートなチャイニーズビジネスマンばかりの列車だ。誰も話さないで自分の世界に入るスレた人ばかりだった。この空間はぼくらがイメージしそうな中国の風景ではないが、でもこれもまた現実の中国の風景なのだ。

出発すると各車両に車掌がいるのか、すぐに乗客の切符をチェックしに来た。


静かに出発した和階号。乗客の声も中国にしてはかなり静かめ。

他人と干渉しない乗客。そして切符をチェックする車掌。

他の中国の鉄道と同じ車内販売のお姉さんが何度か寝台車を往復。

速度は時速164km。


北京駅を出てしばらくして、時速は150kmを超した。でも新幹線らしい速度というのか、時速200kmを超えることはなかった。新幹線にしては遅い。

でも普通の線路の上を走っているので、速いっちゃ速い。さらにこれは寝台列車だ。寝台列車で時速150km超なんて経験したこともない。だから速いような気がする。

わかりやすいほど速くもなければ、遅くもない。この微妙なバランス加減が和階号の醍醐味なのかもしれない。

22:15、ジュースはいかがですか、と車内販売のお姉さんが通る。疲れてそうなやる気のなさそうな声。彼女が通ると、外国人グループの部屋から手が出てきてあれこれ積極的に買っていた。

特別がたがた揺れるわけでもなく、この日は安眠できた。普通に寝れる。夜間はノンストップで上海へ。

 

上海到着

朝起きてしばらくしたら無錫という駅に止まった。上海までもうすぐだ。無錫は新幹線が頻繁に往復する上海と南京の間の駅。だからだろう、新幹線はスピードを増し時速200kmを超える速度で飛ばす。

でもやはり普通の線路の上を走るので、前の列車に追いつくと、追い抜くまで併走する車よりもバイクよりもゆっくり走る。私鉄のようで新幹線のようでもある。このアンバランスさこそ和階号らしいところなのだ、きっと。


無錫駅に静かに到着。そして静かに出発。

飛ばす和階号。飛ばすときの「ヒュイーン」という音も新幹線ゆずり。

時速243kmを記録!

電車が詰まって遅くなる和階号。

乗客も車掌も昨夜までは引き締まっていたのに、朝起きたらずいぶんユルくなってきた。話し声が少ないのは昨夜から変わらないが、パジャマ姿で車内をうろうろする乗客、車掌同士で世間話と、昨晩に比べて随分と人間味あふれる車内になった。

ついでに通路の自動ドアすらも脱力したのか、手動ドアになり、車掌のお姉さんらを苦しめていた。人間味あふれる新幹線だ。


パジャマ+サンダルで洗顔@新幹線

椅子席。元気そうな人たちが賑やかに談笑していた。タフだ。

上海駅にそろそろ到着で賑やかになる車内。

上海駅到着。
外にカメラを向けたら向かい側のホームに清掃員が整列していた。
清掃員の多くが顔をそらしてしまった。

上海駅到着。北京とはうってかわって暖かかった。ぼくはゆっくりと写真を撮りたかったが、みな急ぐように新幹線から出て行ったので合わせて出て行った。

上海駅ホームでも長距離列車降車後の余韻もなく、みな仕事場に向かうのか、きちっとした身なりで早足でホームから歩き去っていった。新幹線乗りたさに乗ったぼくはかなりのおのぼりさんだった。「世界の車窓から」って感じじゃなかった。


ゆっくり新幹線からでて、上海駅ホームでカメラを構えたことには
ほとんどの乗客が歩き去っていた。速い。。。

中国寝台新幹線「和階号」は1粒でかなりおいしい

北京駅のまるで数十年前の上野駅のような雰囲気、現代的なチャイニーズビジネスマン、新幹線的速度からバイク的速度まで幅の広い駆け抜ける景色、朝の気の抜け具合が素敵な乗客、様々なものがごっちゃになっていた。夜通しのたった10時間強の列車移動に今の中国のエッセンスが凝縮されていた。

チャンスがあれば、日本から北京か上海に入り、新幹線で移動して、上海か北京から日本に帰国するなんて旅行なんてお勧めですよ。

記念となった新しくそれでいて古い切符

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