ニットを編むけど電子工作もやり、着ぐるみニットでイベントを徘徊する一方でヤンキーコスプレニットでコンビニにしゃがみこむ。
こういう人を何と呼んだらいいのかと言えば、「ハイパーニットクリエイター」でいいようだ。
何だかつかみどころのない書き出しだが、実はつかみどころ満載のクリエイター、力石咲さんを取材しに、アトリエにお邪魔した。力石、と書いて「ちからいし」さんです。
(乙幡 啓子)
あたたかそうなのがいる
力石さんに初めてお会いしたのは、昨年5月に開催された「Make:Tokyo Meeting 03」 でのことある。そのとき彼女はこんないでたちで会場内を歩いていたと記憶している。
そのときは声を交わすこともなかったのだが、第一印象は「なんだか妙な人がいる」であった。でもよく見ると全身ニットだ。手編みであろう、暖かそうである。ニットクリエイターさんか、いろんな人がいるなー、と軽く通り過ぎようとしたそのとき、このでかい地球が「目を開けた」のだ。
電子がクラフトを違う地平へとすっ飛ばす
「目を開けた地球」のことは後で触れるとして、その後何回か話すうちに彼女に興味を持つようになり、今日は取材させてもらうことになった。実家の庭に建てられたアトリエにお邪魔する。いいなあ、離れのアトリエ。でも「ニット作家」と聞いて想像していたようなものとは明らかに違う。
布と毛糸に囲まれた素朴でナチュラルな空間…なんてのをイメージしていたら面食らう。ニットというか、造形屋さんの要素が半分以上占めているのにはワケがある。
力石さんは多摩美術大学で情報デザインを専攻。在学中に作成した例のでかい地球「ManGlobe」で数々の賞をとっている。私が「おお!」とのけぞったのはその仕組みだ。ニットの皮に包まれた、電子的なもの。
何箇所かにセンサーがついていて、人が近づくとその部分の目を開けてジトッと見つめるのだ。その様子は、なぜか3秒しか撮れてなかった下の動画からどうぞ。
電子+クラフトで、何か面白い物を作る。自分も今挑戦中の分野だけに、こんなでかいもので実現している人がいるのかと感心する。感心するのはそればかりではない。
制作の都合上、学生時代からアキバの電子部品店に通っていたが、いっそのこともっと詳しくなろうと潜入。そこで働きながら制作活動をしているのだ。そこまでやってしまう思考回路と行動力が、いい。
ところで冒頭のコアラスーツ、以前J-wave でアーティスト支援する企画に応募し、それが採用されてオーストラリアのゴールドコーストに滞在。そのときにインスピレーションを受けて制作したという。
以来、パーティには正装としてコアラスーツを着ていくとか着ていかないとか。
と、このように。ManGlobeのギミック&クラフトぶりにおののいたりしつつ、コアラスーツで「この人は何なんだ」と思い始めた方、次のページでその疑念は確信に変わるだろう。
次は私も加わっての制作に入りますが、これも一筋縄では絶対にいかない。