努力すれば夢は叶う
ただ小顔になりたかっただけなのに、どうしてこんな呪いの人形のようなものになってしまったのか。
どうやら妻はかわいらしくデフォルメするのではなく、できるだけリアルに作ろうと思ったらしい。それが裏目に出て、小顔がどうしたとかいうことは関係ないくらいに負のオーラに満ちたものが生まれたようだ。
よく見るとヒゲのそり跡がほんのり青っぽく、うっすらポチポチとしているのまで見える。そこら辺はスルーして、キャッチーに愛されるものを目指そうよ。この呪い人形は一旦リセットすることとしたい。
そういうわけで人形は明るい肌色でフラットに塗り直す。ここから自分の顔にしていくわけだが、今回は自分の写真から顔のパーツを切り取って貼り付ける方法でやってみることにした。
こうすればリアルな自分の顔ができるはず。大きさをいくつか変えて、目と眉毛の部分を印刷してみた。印刷シートのうち、右側のは縦方向に拡大したもの。こうすれば目をパッチリさせることもできるだろう。
まずはノーマルタイプからひとつ選んでやってみる。
ちょっと大きすぎただろうか。でもまあ顔としてはちゃんと成り立っているようで、デジカメで撮るときもばっちり顔認識されていた。
じっと見ていると、こういうタイプのハンサム顔ってあるような気がしてきた。俺って結構いけてるじゃん!という虚しい幻想が心をよぎる。その自己賞賛にはねじれがありすぎる。
少々無理があるかと思い、別のパーツを貼り直す。縦拡大バージョンの手頃な大きさのものにしてみた。いろいろ不自然なところはあるのだが、まあ全体的なバランスは先ほどよりも普通になっただろう。
改めてゲンコツと並べて大きさを確認してみる。よし、確かに同じくらいの大きさだ。パーツも自らのものを使っているのだから、自分の分身と言っていいだろう。
無理のある解釈に気付かないふりをして、次はこの分身と一体化するステップだ。今回は、人形の首の部分に幅広のゴムを通し、自分の顔に回して固定できるようにする方法でやってみた。「よし、しっくりくるぞ」と思ったのだが、写真を見ると「何がしっくりか」とも思う。
この状態からタートルネックの服を着て、本物顔の方は首部分の布地に隠すというわけだ。
「信じれば夢は叶う」という言葉を聞いたことがあるが、それは本当だろうか。言葉の額面通りに「信じる」という精神論だけでは、夢は一向に近づいてこないだろう。
夢は見るものではない。自分から行動して、叶えるものなのだ。
「ゲンコツ大の小顔」という当初目標にしっかり適ったものになっていると思う。本来の自分よりも20cmほど背が伸びて、ちょうど阿部寛と同じくらいになっただろうか。小顔でも負けてないと思う。表情もリメイクしたことで呪いが薄らいだ。いいことづくめじゃないか。
なのに、フォルムとしてはどうしてもマヨネーズ。首長族のようでもあり、やたらとなで肩なのも気になる。
まあ大局的には目指したところに来ているので、細かいところは気にしないことにしよう。さあ、生まれ変わった自分に自信をもったら、街に繰り出そう。小顔になって行ってみたいところがあったのだ。