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ロマンの木曜日
 
壊れたカメラで撮る、1/90秒写真

完璧な仕上がり、90分の1秒写真


うおー!撮れてる! 完璧に撮れてる! 90分の1秒写真、何の問題も無し!

びっくりするぐらいの出来栄えだ。
実はこのレンズ、けっこう高い逸品なので、成功すればかなりいいだろうとは思っていたけど、本当にいい。
何枚か、デジカメで撮った同じシーンと比べてみよう。

フィルム撮影の水辺の草。
こっちはデジタル。色淡い。

フィルム撮影の自動販売機。
デジタル。ほぼ変わらず。

フィルム撮影の矢倉&水辺。
デジタル。どっちもかっこいい写真。

フィルム。室内で実験。実物と色が違う。  
デジタル。これも少し色が違う。

室内では光量が足らないかもと思ったが、壊れたカメラのレンズはデジタルの方よりも「しぼり」を広く開けるので、全開にして撮ったら意外といけた。
すごい。これは面白い。

 

90分の1秒の写真館 〜秋の早稲田、新大久保界隈〜

僕は翌日、カメラを2つぶらさげて、都内へと写真散歩に出かけた。
そのうち8枚を、ギャラリーにしてお見せしたい。


早稲田大学正門前、90分の1秒。紅葉の発色はデジタルを圧倒。

ガスメーターたち、90分の1秒。かっこいーい。

フィルムでの撮影は、緊張感がまるで違う。厳密にきっちり水平を意識して、風景に向かう必要がある。

写真が傾いたら「あ、水平ずれた、もう一枚」なんて普段やっている自分が、いかに甘えていたかに気付かされた。

都電荒川線、面影橋駅、90分の1秒。動いててもそれなりに撮れる。

雨のち晴、90分の1秒。空も、明るさが合えば撮れる。

フィルムで写真を撮る作業は、丸ごと一匹の生魚に包丁を入れるときに似ている。
自然界から目の前に与えられた物に、強く意識を集中して、丁寧に刃物を差し込むようにシャッターを押す。
シャリンン!という音とともに、90分の1秒間だけ切り取られる世界。

古い公務員宿舎、90分の1秒。こういうのに住んでる友達いた。

戸山公園の猫、90分の1秒。目を向ける瞬間を逃さないのが大変。

昼間、普通に風景を撮る分には、しぼりの開き具合は、「F11」という値で大体それなりに撮れることに気がついた。

なら、「シャッター速度1/90、しぼりF11、フィルム感度400」の設定だけで撮れるカメラを作れば、どこでも撮れる手軽なカメラになるんじゃないだろうか?
と思って調べてみると、「写ルンです」などは、大体その設定になるように作られている、とのことだった。

僕の経験が、30年遅れぐらいで現実に追いついた。


新大久保の韓国街、90分の1秒。ここ、日本の法律通じるのかな。

銭湯前にいた若猫の兄弟、90分の1秒。おじさんによくなつく。

取材で撮っている、と言ったら、おじさんが猫に「お前ら週刊誌に載るぞー」と言って喜んでいた。
すいません、週刊誌じゃないのです。デイリーポータルなのです。残念に思わずにいていただけると幸いです。

さて、本当は都庁を撮りたくて、新宿を目指して歩いていたのに、その手前で日が暮れてしまった。もう暗くて、1/90秒では撮れない。
しかしそんなときのための裏技が用意してある。
夜になっても、このカメラで撮影することができるのだ。


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