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土曜ワイド工場
 
ひとの住んでない町めぐり

足立区舎人町&入谷町&古千谷一丁目

そろそろ、内容の地味さに飽きてきた方も多いと思う、しかしもう一箇所取材してきた場所があるので、今しばらくお付き合い願いたい。

足立区入谷町の人口0

で、そのもう一箇所とは足立区舎人町と入谷町と古千谷一丁目だ。

何の変哲もない普通の住所
実は公園でした

実はこれらの町。全て公園の敷地内にある町なので人口が0なのだ。

舎人公園内の住居表示(マウスオーバーで表示します)

舎人公園はまだ作りかけの部分が多いため、住居表示が間に合っていないのだ。将来的には公園内にあるこれらの町は全て「舎人公園」という地名に住居表示されてしまう予定だ。

 

で、やっぱり境界に興奮してしまう……

どうしても境界が気になってしまう。 なんだかこの記事の主旨が「人口0の町を巡ってみる」というよりも、「人口0の町の境界を鑑賞する」 に変わってしまっているような気がしてならない。しかし、気になるのだからしょうがない。

三町の境界が集中するところ(マウスオーバーで境界を表示します)
ポツンと残る入谷町の飛地(マウスオーバーで境界を表示します)

こんなにキレイに整備された歩道なのに、実は複雑にいりくんだ飛地なのだ。

まるで深窓の令嬢だけど後ろ姿はびんぼっちゃま。というところだろうか? しかし、そんな飛地の上を、そのへんのおっさんはそこが飛地であることを微塵も感じさせない軽やかな足取りで歩いてゆく。 飛地であることを感じさせる歩き方というのを知らないけれども。

 

舎人公園の地下は日暮里舎人ライナーの車両基地

日暮里舎人ライナーの軌道がググーッと地下に潜り込んでいる

ところで、舎人公園の横を走る日暮里舎人ライナーだが、舎人公園駅を出て北に少しいったところからググーッと下がってきて、軌道が地下にもぐりこんでしまう。実は舎人公園の地下は一部日暮里舎人ライナーの車両基地になっているのだ。

用途不明の建築物。取手のないドアは一体なんのためにあるのだろう? 

したがって、公園を歩いていると突然こんなシュルレアリズムの秘密基地みたいな建物が目の前に現れたりする。多分、日暮里舎人ライナーの車両基地に関係する何らかの出口的なモノなんだろうとは推測できるけども、用途は不明だ。

 

急激に拡大する舎人公園

舎人公園は、もともと民家や農地だった場所を東京都が少しづつ買いあげて整備している公園だ。家にある古い地図帖を順に見て行ったらちょっと面白かった。

ニューエストS東京区分地図 74ページ /昭文社1978より

1978年の入谷周辺の地図。まだなにもない。よくみると現在日暮里舎人ライナーの足元にあるはずの道路すらない。舎人町と入谷町の飛地の錯綜ぶりはすさまじい物がある。

ニュータイプ東京区分地図 25ページ/昭文社1990 より

古千谷一丁目付近になにやら緑色の区画が発生。これが舎人公園の初期状態だ。この地図は1990年のものだが、公園自体は1981年に開園している。

ニュータイプ東京区分地図 25ページ /昭文社1993より

公園の萌芽が見えた1990年から3年後の1993年の地図がこれ。いきなりこの大きさに成長。たった3年で急に大きくなるなんて、なんだか親戚の中学生みたいだ

まちずMini東京23区 30ページ/人文社1998より

そして5年後1998年。トラックターミナルに隣接する部分が開園。あたりの土地をじわじわと侵食して公園がアメーバーのように広がっている……。

大きな字の地図Brief東京 26ページ/人文社2004より

2004年の舎人公園の様子がこちら。すでに現在の公園の形に近いけれど、古千谷二丁目付近で一部公園になってないところも存在する。日暮里舎人ライナーの開業予定が「H19開業」となっているのはご愛嬌。(実際は遅れて平成20年開業になった)

東京超詳細地図 412ページ、413ページ /成美堂出版2008 より

2008年、最初の頃に比べるとかなり巨大化した舎人公園。 10数年でここまで急激に広がる公園はちょっと珍しいのではないかと思う。

足立区舎人町、入谷町、古千谷一丁目についてわかったこと

  • もともとは農地や民家だった場所を整備して公園にしているので、今はひとが住んでいないが、町の区割りはそのまま残っている。
  • 舎人公園の地下には日暮里舎人ライナーの車両基地があるらしい。そのため公園内に謎の建築物が唐突にある。
  • ちょっと昔の地図から順を追って見てみると、公園がジワジワ拡大する様子がわかって面白い。 

ひとの住んでない理由は様々

古い地図すてずにとっておいてよかった……

一口に「人口0」と言っても、元々お濠だったとか、公園整備のために住民が立ち退きしたなど、住民がいない理由は様々なものがあるということがわかった。

途中から「ひとの住んでいない町の境界探し」にウェイトが移ってしまった気もするが、人口にしても境界にしても、実際には見えなかったり、分かりにくいものの痕跡や手がかりを、地図を頼りに現実の町の景色の中から探していくという行為は、宝探しをしているようで、かなり楽しいということが分かった。今度は地下鉄線路を地上から辿る旅でもしようかしら……。


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