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ロマンの木曜日
 
ダムのネーミングライツって何だ!?

特典は?

ダムが好きな一心でネーミングライツについて突っ走った質問をしてしまったけど、では一般企業がダムの命名権を買ったとして、具体的にどのような特典があるのか。簡単にまとめると以下のようなものだ。

  • ダム入口看板の書き換えが可能
  • 周辺道路のダム案内看板の書き換えが可能
  • 堤体や柵などにスポンサー看板設置が可能
  • 県や各ダム作成のパンフレットに愛称を掲載
  • 県のホームページで愛称を掲載
  • 年4回程度ダム内敷地の貸し切り使用可能

想像した通りだけど、やや地味だ。しかし野球の試合が行われるたびに数万人が来場し、全国ネットのテレビで愛称が出るスタジアムと、大雨でも来ない限り表舞台に出ることのないダムを比べれば値段相応と言えるだろう。


大倉ダムすぐ下の公園は貸し切り可能(要確認)
ほら植込みのスポンサーのところ空いてるよ!(要確認)

購入すれば「関係者」になるわけだから...(要確認)
こういう看板も書き換えてオッケー(要確認)

全て自分の絵に変えてしまうこともできる(要確認)
好きな標語に書き換えよう!(要確認)

でも、ダム名が表示されるところはほかにもある。一般的には知名度が低いけど、リアルタイムで川の流量やダムの放流状況を知ることができる国土交通省の「川の防災情報」や、ダムの細かいスペックなどを知ることができる日本ダム協会の「ダム便覧」なども書き換えてもらえるのだろうか。

「県のホームページは書き換えますが、国交省など外部のホームページは難しいかも知れません。国が管理している国道の看板も「クリネックススタジアム」とは書いてないですし。」

それなら、たとえば大雨のときなどマスコミに流す放流情報などは愛称で送ってもらえるのだろうか。そういうときこそが、地方自治体が持つダムが唯一全国区になれるときだと思うのだけど。

「台風◯号の襲来で大倉川は警戒水位を突破し、上流のデイリーポータルZ大倉ダムが洪水調節を開始しました」

なんて報道されたら、全国民が「デイリーポータルZ大倉ダム」って何だ?と気になるだろう。読み上げるアナウンサーの表情も微妙に変化するかも知れない。企業としてはしめたものである。

「そこもまだ未定です。確かに名前が出るのはいいですが、もし災害が起きたらマイナスイメージですし・・・。もどかしいところですね。」

このあたりは、実際に候補になった企業と話し合いで詰めていきたいとのことだった。しかし、せっかく治水も行っているダムの命名権を買うような企業には、万が一のことよりも、洪水を防いだときの効果を重視して「プレスリリースは必ず愛称で流す」なんて条項を追加するくらいの意気込みを持っていただきたい。


自分とこのダムがこんな状況を救うかも知れないのだ

なんて、購入を検討している企業の方は、部外者が勝手に言っているだけなので気にしないでください。


どんな名前でもOK?

ところで、ダムの愛称に制限はあるのだろうか。絵文字とか記号とか、どうなんだろう。さっきから勝手に使っている「デイリーポータルZ大倉ダム」は可能だろうか。

「『デイリーポータルZ大倉ダム』は問題ありません。」

聞きましたか編集部の皆さん!今なら史上初の「ダムを持ってるポータルサイト」になれますよ!エキスポもお台場だけじゃなく宮城のダムでも開催可能です!

と言いたいところだが予算的にライターを減らさないと無理だ、と会議で却下(正確には苦笑い)されたのだった。うーむ、自分の身を切ってDPZにダムを捧げるか・・・!

「県が定める屋外広告条例の範囲内、あと常識の範囲内で読めれば大丈夫です。ただしダムの正式名称は必ず入れてください。」

つまり「大倉ダム」の場合「デイリーポータルZダム」ではなく「デイリーポータルZ大倉ダム」にしなければならない。これは施設の性質上仕方ないだろう。売れないアイドルが心機一転で名前を変えても誰も困らないけど、公共施設はそういうわけにもいかない。

それにしてもダブルアーチの大倉ダムの命名権は魅力的である。日本にここだけしかない特徴的な形で交通量も多く、今回募集されている中でも一番人気なのではないだろうか。


真ん中部分から見て右岸側のアーチと
左岸側のアーチの両方がいま、この手に

あ、でもそういえばもうひとつ、やや特殊なダムがあった。メインのダムのほかに、一部尾根が低いところを塞ぐための鞍部(あんぶ)ダムを持っている南川ダムである。


南川ダム堤体から見た鞍部ダム
尾根が低い部分を塞いでいる

しかもこの南川鞍部ダム、アスファルト表面遮水壁型ロックフィルダムという、これもかなり珍しい形式で、ここも命名権に含まれるとのこと。形式の違う2つのダムのセットが同じ値段で売りに出されていると考えると、総合的にはこちらの方がお買い得かもしれない。ぜひこの価値観が分かる方に買っていただきたい。


普段は門が閉まっているが、スポンサーなら...
お客さんこれ逃したらもう表面遮水壁型なんて出ないよ

堤体を看板にできるか

個人的にはあまり好きではないけど、日本にも世界にも、ダム堤体のコンクリートの壁に絵を描いているダムがある。せっかく命名権を買った企業としては、あの広大なキャンバスは魅力的なスペースではないか。


ダム壁画界では有名なスイスのRaterichsbodenダム
そういえばすごく昔に自分のHPでこんなの作ってた

「契約が終わったときに現状復帰していただく必要があるので、堤体にペンキで絵を描くのは難しいです。堤体への看板の設置は、ダムの機能と周辺の景観に影響のない範囲でなら可能です。ただし費用はすべてスポンサー企業持ちなので大変だとは思いますが。」

もうひとつ大きな特典として、ダム内敷地の貸し切りが可能、というものがある。つまりは僕が主催でダム見学会が開けるのだ!

・・・あ、いや僕には権利がないんだった。

企業が貸し切りイベントを行うとすると何だろう。製品の展示販売会?社員旅行のバーベキュー大会?コンサートの主催?このあたり柔軟な発想ができたもの勝ちである。


雪まみれの七北田ダム湖畔公園や
樽水ダム湖畔公園なども命名権の対象である

「今回命名権に含まれている公園の貸し切りや、湖面を貸し切っての釣り大会やボート競技の開催は可能です。有料イベントの開催は想定外でしたが、可能性としてはゼロとは言えません。ダム見学会の開催はもちろん大歓迎です!」

調子に乗って「一日管理所長」はどうですか、と聞いたけど、それは命名権とはまったく関係なかった。しかも個人的な希望丸出しでで恥ずかしい。可能だと思います、と答えていただき嬉しかったけど。いつか就任させてください。


冬に貯水池が凍る美しい景色も自分のものだ(南川ダムほか)
下流の街は俺が守ってる感に浸るのもアリだろう(樽水ダム)

ダムのネーミングライツについての詳細は、必ず電話やメールで宮城県土木部河川課にお問い合わせください。

河川管理施設(ダム)のネーミングライツ募集

実は革命的アイデアかも

というわけで、ダムのネーミングライツ募集という驚きの企画について話を伺ってみた。

最初は物珍しさだけで興味を持ったのだけど、実はこの企画、歳入増だけでなく、今までダムに足りなかった要素を補える一石二鳥のプランかも知れないと思った。それは一般企業の力である。

電力会社の発電用ダムを除いて、ほとんどのダムは国や自治体が管理している。それ故に、今まではダムの役割や実際の活動、観光資源としての魅力をあまり積極的にPRすることができなかった。しかし、ここに一般企業が入ることで、広報面においては今までよりかなり自由度の高い活動をすることができるのではないか、と思うのだ。

県としては歳入増に加えて地域の活性化とダムのPR強化が見込める、スポンサー企業としては安価に派手な広告塔が獲得できるだけでなく、社会的な貢献度もアップする、そんなバランスの取れた関係が築けることを期待したい。

でも全国のダムが企業の看板だらけになったらそれはそれで嫌だけど。

命名権を獲得した企業にはぜひダムの啓蒙活動にも励んでもらいたい。こういう逆アーチダムを描く子供が1人でも少なくなるように...

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