デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


フェティッシュの火曜日
 
予習復習めしが美味い

ポスターにする

3.の獲得性「好きになる」ためにポスターを貼る


ポスターを作って、好きになる

学生時代の友人の自室にはよく知らないグラビアアイドルのポスターが飾られていた。誰かにむりやり貼られていたものらしい。

するとどうなるか?その友人は「朝起きてすぐ目に入る生活をしてたらだんだん好きになってきた」のだ。

この方法は使えるかもしれない。部屋にチキングリル生姜醤油ソースのポスターを貼ってみよう。


コンビニでポスタープリントができる
A3四枚を貼り合わせるのだ
なーんだという感じだができた

そうか、横か

横だができた

ポスターといえば縦だろう、しかし料理写真は横だしな‥‥と違和感を感じながら作っていると、やっぱりへんなことになってしまった。

しかし横に見えようがちゃんとチキングリルである。

朝起きて「おはよう」とチキングリルに声をかけ、「こんにちは」とチキングリルに声をかける。楽しい仲間がぽぽぽぽーんと増えた感じである(使い方、合ってるのだろうか)。


定期入れと待ち受けに

好きなものを入れる場所は定期入れと待ち受けか


待ち受けに好物。この程度ならあるかもしれない。

定期入れに好物。ここまで来ると急に謎が立ち込める。

改札にメニューを叩きつけ出社!

好きな人の写真を待ち受けにする文化があるなと思ってやってみた。お、花とか空とかあるんだから、こういう「肉」があってもいいかも。

次は定期入れである。チキングリルの写真を入れてみたところ、強烈な違和感。

こんな人はいない‥‥。そんな見た目になった。

それでもICカードの上にあるチキングリルの写真を改札に叩きつけて通るのはなかなか楽しい毎日だった。

「ほらよ!」とばかりに叩きつけていたが、何が「ほらよ」なのかは未だにさっぱりわからない。


ファンページ作成

コミュニティの主催者ともなれば自然とファンになるか?


フェイスブックのファンページを作った。ミクシィで言うコミュニティである。

ファンページ設立!管理人に就任!

フェイスブックにファンページを作った。つまりインターネット上に小さなファンクラブを作った、みたいなことでいいのだろうか。わからないな。なにもかもがあんまりよくわかっていないのだ。

そうだ、僕は何もわかっていなかった。はじめてお酒を飲んだ日のこと、お客さんに大声で怒鳴り散らされた日のこと。


ああ‥‥。

ファンページ設立!管理人に就任!

‥‥あ、すいません。

ふとした瞬間に昔あった嫌なことを思い出して、ああ‥‥と声が出ることがないだろうか。それを記事に取り入れてみたがそんな試みはからっきしだった。

とにかくご覧の通り、ぼんくらな人が作ったファンクラブにはぼんくらなお仲間しか入らなかった。

それでもファンクラブ会長のような気でチキングリル情報を流していると、気はなんだか大きくなるものだ。何か大切な存在であるような気はした。


自分のコメントばかり並ぶ人気のないファンページである
いいね!と言っているのは私とお願いして入ってもらったデイリーポータルZのライター。「いいね!」なんて二人とも思ってないだろう。

よく知る

ネットや電話を駆使して情報を得て「これはおいしい」と思い込むのだ。


ネットで見てみる

知るといえばインターネットで検索。情報はけっこう出てきた。

・テレビ番組『帰れま10』デニーズ編のメニューランキング第5位(ボリュームがあるのに低カロリー、男性客に人気らしい)
・柔らかくてうまい、味は普通
・柔らかくてびっくり!これはおいしい!
・デニーズのチキンはけっこううまい!

これはなかなかいい。インターネットに書きこむ人は感動して書いてるので、ポジティブな情報がさくさく集まる。柔らかいのか。そうか、柔らかいのだ!

食べているときは全く柔らかさなど気にしてなかったが、書き込みを読んでると柔らかかった気がした。全く舌なんていいかげんなものである。

すごいぞ、検索。そしていいかげんだぞ、舌。私の口には舌なんかじゃなく検索がついていればいいのにな。


お客様センターに電話だ
後ろの色あせた部分はカビキラーによるものだ

お客様相談センターに電話だ

お店の相談センターにも電話で聞いてみた。

――このメニューはいつからあるんですか?

「グリルチキンというのは定番商品として長い間続いてますが、生姜醤油ソースになったのは二年くらい前だと思います。ビーフシチューが和風味として出されたり、そういうリニューアルがちょこちょこあるんです。」

ああ、そういうのある。あるある。と共感したが実際にあるのだから共感したところで何も変わらないな。

――中華風っぽい味つけですよね?

「う〜ん、中華っていうよりは和風ですよね。黒酢?入ってないです、それはとなりのメニュー。」

和風だったのだ。なぜか勝手に中華味と思っていたが、これも舌が悪い。やはり舌は検索になればいい。

――肉が柔らかいんですよね

「スチームで火の通したチキンをお店のグリル板で焼いています。」

――皮がパリっとしてますよね

「鳥は皮を下にして焼くとパリっとするんですよ。おうちでも試してみてください。」


ブランド化する

お店をブランド化すると出てくるものすべておいしく思えるのではないだろうか?


いい人でよかった‥‥

いい会社だと思うことでよりおいしさを煽る

聞いてみるもんだ。他にも色々と教えてくれた。

こんな平日のお昼にチキングリルについて根掘り葉掘り聞く成人男性なんて、競合店のスパイか、そうでなければ変態くらいなものなのに。

「すいません、こんなにどうでもいいこと聞いて」「おかげさまでこれからも美味しく食べられそうです」と言って電話を切ったあとも、ああ、いい人でよかった‥‥と思う。

そしてこの「思い」も作戦の一つ。

デニーズを敬うのだ。敬い、ブランドとして崇めることによって、あのデニーズさんの作る料理なんだから、とよりおいしく感じる試みである。


図書館でも勉強をする

調べるほどに気持ちが入ってきた

頂いた情報を図書館で調べて強化する。

まずはスチームチキンについて。『調理のサイエンス』(川端 晶子 柴田書店 2000/09)によると、低温スチーミング→焼く、という調理だと、短時間で処理でき、うまみ成分を閉じ込められるそうだ。

もうこの辺りになると効能ひとつひとつに、よしっ!いけっ!やれっ!と心の中で喝采を送っていた。レシピに肩入れし始めた。

そして従来の加熱法では固くなる食材をスチームにより「柔らかく保つ」ことができるそうだ。これだ!これが柔らかさの秘訣だ!

かつて「どうでもいいメニュー」と蔑んでいたものにここまで肩入れできたこと。もう、この後おいしくなくてもいい。ここまでできれば十分だと思う。


< もどる ▽この記事のトップへ つぎへ >
 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.