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ひらめきの月曜日
 
食らえ!いわきパワフルフード

カオスなパワフル回転寿司

いわきと言えば港町。ならば、おいしい海の幸を食べたくなるというもの。そういうわけでやってきたのはお寿司屋さんだ。


親しみやすい店構え
寿司のことに触れない看板

ザ・寿司屋という店も手堅いのだが、独特のオーラを放つタイプの店も気になる。この「回転寿司すし八」は後者のタイプだろう。丸ゴシックで書かれた看板がポップだ。

店頭には店の自慢メニューの看板が並ぶ。ただ、気になるのはそれらが寿司ではないこと。まあかきあげは地元の名物である魚、メヒカリを使っているからいいのかもしれない。

でも、とん汁めんはどうだろう。しかも「すしよりうまいといわれた」とも書いてある。寿司屋としてそれでいいのだろうか。


小規模回転寿司

店内に入ってみた。確かに回転寿司のレーンがある。ただ、チェーンの回転寿司店と比べるとそれはとても短く、回さなくてもやれるんじゃないかな…と思わされるもの。

実際、訪れた際もレーンは回っていなかった。入店時、客は私たちのみだったからかと思ったが、職人さん曰く「いやー、滅多なことじゃ回さないね。回してもみんな、取ってくれないんだよね」とのこと。みんな普通に注文して食べるらしい。回転寿司としては破綻していると言わざるを得ない。

しかし、考えてみれば回転寿司的な手頃な価格で、対面タイプの寿司屋気分を味わえるということにもなる。それはちょっとうれしいではないか。


メヒカリはかきあげではなく寿司で
店の自慢のひとつ、蒸しエビ

まず頼んだのはメヒカリ。看板にあったかきあげも気にはなったが、せっかく職人さんが前にいるのに、いきなりかきあげを頼むのも悪いような気がするではないか。脂にコクがあっておいしい。これはまたあとからも頼んだ。

そしてもう一つは蒸しエビ。生のエビからこの店で仕込んでいて、自慢の品のひとつなのだそうだ。身が厚くてうまい。で、普通の寿司はこれでおしまい。


気になるメニューいろいろ
名前に偽りなし

壁には気になるメニューがたくさん貼ってある。上の写真は試しに頼んでみた「山盛りコーン(120円)」。

確かに山盛り。食べやすさはともかく、楽しいではないか。

職人さんに話を聞くと、東京の寿司屋で35年仕事をしたあと、故郷のいわきに戻ってきたとのこと。積んでいる年季がすごい。そういう人に山盛りコーンとか作ってもらっちゃっていいんだろうかという葛藤も湧いてくる。


こちらも名前負けしないビジュアル
何が何やら…

続いては「鰺のねぎまぶし」。もうまぶすっていうレベルを超えている。

写真では確認しづらいが、中には鰺のにぎり寿司が埋まっている。発掘するような勢いで寿司をほじりだし、できるだけたくさんネギをまぶして食べる。

それでもこれだけあるから、寿司を食べてしまった後にネギはどうしても残る。ネギだけ食べるのも辛いし…でも残したくはないし…と、ちびちび食べていると、職人さんが「それ、常連さんだと始めのうちに頼んで、残ったネギを他の寿司と一緒に食べたりしてるね」と教えてくれた。

そういうテクニックを駆使する必要もある寿司屋。その技、もう少し早く知りたかったよ。


多岐に渡る品揃え
そんな中から「ゴボウの割箸揚げ」

うに、ボタンえび、スーパーとん汁ラーメン
並び方はおかしいが品は堅実

ネーミングが気になる系とした頼んでみたのが「ゴボウの割箸揚げ」。細長く切ったゴボウを割り箸に見立てて揚げたものだ。シンプルだけど素材感が前に出てきていておいしい。

そして店頭の看板にもあった、とん汁ラーメン(600円)。あれ、看板には525円と書いてあったけど、値上げしたのだろうか。よく見るとこちらは「スーパー」がついているから、パワーアップした別メニューなのか。謎が深まる。

食べてみる。湧いてきたのは「とん汁にラーメンって、意外に合うね!」という感想。「要は具だくさんの味噌ラーメンってことか」と思っていたが、そうではない。そこにあるのは、とん汁に中華麺を入れた物。

家で適当に作ったっぽいメニューなのに、ちゃんとうまいのがすごい。


いちいち工夫がある張り紙
この地味さがいい

回転寿司らしいとも言えるのが、デザートメニューも揃えていること。ただ、この店なので一筋縄でいくわけはない。張り紙には「すし屋のバナナケーキ」とある。

「すし屋」と「バナナケーキ」がつながっていることに対して、どういう感想をもてばいいのかがわからない。よく見ると下に「カーブで景気を」ともあるが、それもわかったようなわからないような気持ちに拍車をかける。

店主さんよると、店での手作りで材料にバナナを85%以上使っているとのこと。この地味な色合いにも合点がいく。

食べてみる。…おいしいかそうでないかで二分するならば、間違いなく前者に入る。お菓子作りが好きな友達のお母さんが繰り出した変化球、といったうまさ。120円と安いのもすごい。

心もおなかも満腹になったこの寿司屋。もう食べきれないので、今度はおみやげにおけるパワフルフードを探そう。


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