9月11日18時15分。街の人たちの反応は……

球場から市街地に向けて国道293号を南へ歩く。
お店が密集している様な賑やかな通りではなく、商店、学習塾、コンビニなどが点在している。

まず、クリーニング屋さんとコンビニが一緒になった商店があって、店員さんがテレビのニュースに釘付けになっていた。スト関連のニュースだった。

「明日のスト、なくなりましたね」
テレビに夢中だった店員さんに声をかけた。

「ええ。そうみたいですね」
「やっぱり明日は行くんですか？」
「いや、あまり興味がないんで」
「でも、ニュースを見てましたよね……」
「ああ。足利の事、やるかなあって思って」

スト突入でも回避でも、その事自体にはあまり興味がないらしい。先を急ぐ。

少し行くと、路上で梨を売っているおばあちゃんがいた。
梨と桃の時期（7月から10月）は毎年ここにやって来くるという。なんと今年で27年目だそうだ。

「明日、野球やりますね」
「なに？　野球？」
「ええ、あそこの球場でプロ野球を」
「そうけ？　知らんかった」

おばあちゃんは佐野市の住民なので、足利の事は良く分らないと言う。27年も通っているのに、だ。

更に南へ下ると「ヤザワスポーツ」という大きなスポーツ用品店があって、入口にポスターが貼ってあった。協会が刷った300枚のうちの1枚だ。
店長さんから話を聞いた。

「うちでは前売券も売っていたけどね。ストの問題が出てから、みんな買い控えちゃって。かなりチケットが余っちゃっいました」

それでもスト回避のニュースを見て、先程から問合せの電話が2件あったらしい。

「もう協会にチケット戻しちゃったからなあ……。どうしたらいいだろうね」

僕に聞かれても困るので、次。

釜飯の銀釜さん。昭和元年創業の老舗だ。
時間もちょうど夕飯時だったので、ここで食事を取る事にした。

釜飯のメニューは、五目、帆立貝、鳥、海鮮、うなぎ、かに、そして季節限定の松茸。僕は五目釜飯をいただいた。

料理が出来上がるまで、お店のおばさんに明日の野球について話を聞くと、3代目のご主人が大の巨人ファンだからと、厨房の奥からご主人を連れて来てくれた。

「東京ドームで応援するのが何より楽しみなんですけど、今シーズンは6回しか行けてなくて」

かなり熱烈なファンらしく、今シーズンの巨人はここが駄目だ、という話を延々と聞かされる。要約するとピッチャーが悪い、という事だった。

「で、もちろん明日は応援に？」
「いや行きません」
「えっ？」
「仕事もありますし、2軍だし」

そうか……。
僕はチケットを買ったので、代わりに応援してきます。

銀釜を出て今晩泊まるホテルを探す。
予約もなしにやって来たけど何とかなるだろう。

明日は10時30分開場で、試合開始は13時。そんなに早起きしなくてもよさそうだ。
雨さえ降らなければ、明日、30年振りのプロ野球が実現する。