放送博物館副館長、小林さんに伺う。
Q「テレビのニュースの海外の中継はなぜ遅れるんでしょうか? 携帯電話の進歩なども考えると、遅れるのはちょっと不思議なんですが」
海外からの中継で誤差をなくすことは技術的には可能です。自社回線なら問題ないですが、ニュースの海外からの中継は、電話回線を借りて使う場合がほとんどです。
このとき日本のキャスターの声のデータは一旦圧縮されて向こうに届きます。そしてまたそこで解凍します。(ネットに詳しい方ならわかりますよね)
そして海外の特派員の受け答えが再び圧縮されて回線を通り、日本で解凍されます。
この圧縮→解凍→圧縮→解凍により誤差が生まれるわけです。ここまでは携帯電話で話すのと同じ気にならない程度の遅れです。
しかし、
日本のキャスターの声はほとんど誤差がなく相手に伝わりますが、相手の音声は「音声」+「映像」が必要です。音声に比べ映像はデータの容量が大変重くなります。このため、圧縮・解凍に時間がかかり、向こうの音声、映像だけが遅れているように感じるわけです。
Q「では国内だとなぜ遅れないんですか?」
厳密にいえば国内の中継もわずかに遅れています。おそらく日本国内は解凍・圧縮が一回ずつですが、外国からの声は何度も繰り返し解凍・圧縮されていることが考えられます。
ちなみに今後テレビの地上波がデジタル化しますが、デジタルのテレビとアナログのテレビを同時に目の前においてテレビを見るとデジタルのほうがわずかに遅いことがわかります。このためデジタル放送では「プップップー」という時報の放送をやめようかと思っているんです。秒単位で量ると、デジタル放送には誤差が生じるためです。
Q「じゃあこれからはテレビで時計を合わせないほうがいい時代が来るわけですか?」
ええ、1秒の誤差もなく時計を合わせたいなら今後はテレビよりラジオのほうが正確だと思われます。
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